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PIXYシステムを使った系統的捜索

PIXYシステムで1枚の画像を検査すると、新天体ではない星を確認する必 要がなくなる。 しかし、系統的に捜索活動を行う場合は、大量の画像が得られるために、1枚 ずつ検査し確認していくのは、やはり効率が悪い。 実際に、上尾サーベイでは、1時間あたり30〜60枚程度の画像が得られている ので、1枚あたり5分で確認を済ませたとしても、1時間分の画像を調べるのに 何時間もかかってしまうことになる。

更に、PIXYシステムが出力する新天体候補は、実際には以下の可能性があ る。

  1. 新天体
  2. 明るく写った変光星
  3. 星表から欠落している普通の星
  4. 誤検出

そこで、系統的に得られた大量の画像を元に、上記の4種類の中から更に真の 新天体候補だけを探し出す方法を紹介する。

撮影時には、どの領域も必ず2枚ずつ画像を撮影しておくものとする。 予め、一晩のサーベイで得られた画像を1つのフォルダにまとめて置いておき、 すべてPIXYシステムで検査して、星表に記載されていない新天体候補を抜 き出しておく。

PIXYシステムでは、-identifyオプションを使うことで、既知変光 星との同定を行うことができる。 これにより、まずは2の明るく写った変光星を除外する。

次に、PIXYシステムの-surveyオプションを使って、4の誤検出を除 外する。 ほぼ同じ時刻に撮影した2枚の画像がある場合、1または3の実在する星は、ど ちらの画像でもほぼ同じ位置にほぼ同じ光度で検出される。 一方、4の誤検出は、ほぼ同じ位置にほぼ同じ光度で検出されることはまずあ り得ない。 そこで、-surveyオプションでは、複数の画像から同じ位置に同じ光度で 検出されたものだけを実在するものとし、それ以外を誤検出として除外している。

ここまでの作業で、既知変光星やノイズを自動的に除外し、より新天体の可能 性の高いものだけに絞り込めた。

-surveyオプションでは、もし同じ領域を撮影した過去画像が存在すれば、 その画像の検出結果も調べるようになっている。 残った新天体候補のうち、1の新天体は、過去の画像からは検出されない。 しかし、2の星表から欠落している普通の星は、過去の画像からも同じ位置に 同じ光度で検出される。 そこで、もし過去画像があれば、2の星表から欠落している普通の星も、自動 的に除外される。 最終的に残ったものが、真の新天体候補となる。

2に、1月19日から2月13日にかけての上尾サーベイで得れら た画像から検出された新天体候補の総数とその内訳を紹介する。 過去画像の調査まで行えば、新天体候補は数個まで絞り込まれ、人間がそれほ どの負担なく確認できるようになることが分かる。 但し、実際にはまだ上尾サーベイでは系統的に撮影した期間が短いため、過去画 像がないという場合も多かった。 そのため、今後もサーベイ活動を続け、常に過去画像が存在するようになると、 人間が確認する必要のあるデータの数は増えると思われる。

内訳を見ると、ふつうの恒星もまだ最終的に残ってしまっているが、これも、 まだ上尾サーベイで系統的に撮影した期間が短いことによる。 過去画像がわずか1夜しかないことも多く、その時に検出されなかった星が、 次回には検出された、というケースが多かった。 これは、サーベイ活動を続け、同じ領域の数夜の画像が集まれば解決される問 題だと考えている。

   table79
表 2: 上尾サーベイでの新天体候補の数

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