
English version Home Page Updated on August 3, 2004
| 2004年8月3日星についての調べ方MISAOプロジェクト・アナウンスメイル (2004年8月3日) MISAOプロジェクトの吉田誠一です。 CCDで撮影していると、「新天体を見つけたかも!?」と思う機会が、たいへん 多くあります。以前の画像には見当たらない星が写ったり、ステラナビゲータ やGUIDEに表示されない星が写ったりします。しかし、注意して下さい。新星 を見つけたと思っても、実はよくあるミラ型の変光星だった、ということもあ ります。 CCDを使って、暗い彗星を観測する人も増えています。しかし、注意して下さ い。予報位置に何か写っていても、実はたまたまそこに恒星があって、彗星は 写っていなかった、ということもあります。 CCDを使って天体観測をしていると、ちょっと気になる星に出会うことがあり ます。食変光星の観測をしている時に、近くにある別の星の明るさが、どんど ん変わっていくことに気づくこともあります。彗星の明るさを測ろうとしてい る時に、比較星の1つがどうもカタログの値とずれている、と感じることもあ ります。 現在では、インターネットを使って、手軽にいろいろな情報を得ることができ ます。新しい星を見つけた時、暗い彗星を観測した時、ちょっと気になる星に 出会った時は、その星について調べてみると良いでしょう。 ここでは、MISAOプロジェクトで新しい星を見つけたり、気になる星を見つけ た時に、その星について知るために、どのような調査を行っているかを紹介し ます。 こういった調査を行って、得られた情報を活用すれば、発見や観測でのミスを 減らせるだけでなく、いろいろな知見が得られて、捜索や観測がより楽しくな ることと思います。また、思いがけない貴重な星、珍しい星を見つけるチャン スも生まれて来ることでしょう。 下記のページでは、それぞれの使い方を図入りで説明していますので、こちら もご覧下さい。 http://www.aerith.net/misao/guide/research-j.html 1. 過去画像の調べ方 1-1. DSS (Digitized Sky Survey) 過去画像としては、昔から DSS (Digitized Sky Survey) がよく使われてきま した。Bjバンド(青)、Rバンド(赤)、Iバンド(赤外)の3種類の画像があ ります。 DSS画像が見られるサイトはいくつかあります。 下記のページは、手早く過去画像を見るのに適しています。 The STScI Digitized Sky Survey DSSには、同じ場所を何度も撮影した画像が揃っています。それらの画像を一 通り見たい時は、下記のページが適しています。 ASTRONOMICAL IMAGE ON-LINE ACCESS INTERFACE 極限等級に近い暗い星まで細かく見たい時は、下記のページが適しています。 USNO Flagstaff Station Integrated Image and Catalogue Archive Service 1-2. 2MASS (Two Micron All Sky Survey) 2MASS (Two Micron All Sky Survey) は、赤外線で撮影した画像です。下記の ページで見られます。 2MASS All Sky Quicklook Image Server 1-3. ASAS (All Sky Automated Survey) ASAS (All Sky Automated Survey) の画像は、下記のページで見られます。 The All Sky Automated Survey ASASの特徴は、常に新しい画像が追加されている、という点です。2〜4日以内 に撮影されたばかりの、最新の画像を見ることができます。 但し、赤緯が+30度より南の空に限られています。また、あまり暗い星までは 写っていません。 新星など、新しい星を見つけた時には、ASASを調べると良いでしょう。ASASの 最新画像にも写っていれば、新しい星が現われたことは、間違いありません。 直ちに発見を報告して下さい。 1-4. CCD画像に関する注意 CCDは、赤外線に強い感度を持っているため、ミラ型のような赤い星は非常に 明るく写ることに注意が必要です。CCD画像と見比べるのであれば、過去画像 は2MASSを調べるのが良いでしょう。 DSSであれば、必ずIバンドの画像を見るようにしましょう。Rバンドの画像を 見れば良い、と考えている人もいるかもしれませんが、それは誤りです。 1つ例を紹介しましょう。MISAOプロジェクトで見つけた新変光星に、 MisV0001というミラ型の星があります。 MisV0001 この星について、DSSのRバンドの画像を検索してみて下さい(サイズは5x5分 角が良いでしょう)。そして、MisV0001のページにある発見画像と見比べてみ て下さい。CCDでは明るい星が写っているのに、DSSのRバンドの画像では、そ んな明るい星は見当たりません。 一方、2MASSの画像を検索してみると、ちゃんとMisV0001が写っていることが 分かります。 もしDSSのRバンド画像しか調べなかったら、新星と間違えてしまうことになり ます。 CCDでは10等という明るさで写っても、Rバンドでは15等以下、Bjバンドでは20 等以下、ということも珍しくありませんので、注意して下さい。 1-5. 暗い彗星の確認をする 暗い彗星を撮影した時は、予報位置に淡い星像が写っていたとしても、それが 本当に彗星かどうか、確かめる必要があります。特に、しばらく観測されてい なかった彗星は、位置や明るさが予報と違っていることがあります。 彗星の予報位置に、たまたま暗い星があることがあります。もし、ぼうっとし た彗星のような姿の星が写ったとしても、微光星が集まっていたり、銀河であ ることもあります。 下記のページでは、彗星の予報位置に星が写っていても、実は彗星ではなかっ た例を、2MASSのリストから調べた結果を紹介しています。 Comets in 2MASS 彗星の動きが遅く、明らかな移動を確認できない場合には、DSS画像を調べる と良いでしょう。 1-6. 固有運動の大きい星 過去画像と見比べる時は、固有運動の大きい星に注意して下さい。特にDSS画 像には、20世紀半ばに撮影された古い写真も含まれているため、固有運動によ る位置のずれが大きくなっています。 下記のページでは、アマチュアが撮影したCCD画像と、DSS画像を見比べた時に、 固有運動の大きな星がどれほど位置がずれるか、いくつかの例が紹介されてい ます。 固有運動の大きい星 過去画像を調べる時は、いつ撮影されたものか、気にかけるようにして下さい。 また、過去画像を見る時は、調べたところに星が写っていなくても、少し離れ たところに写っていないか、周りをよく見るようにして下さい。 なお、USNO-B1.0のデータを調べると、固有運動の大きい星を知ることができ ます。 2. 小惑星の調べ方 新星や超新星を見つけた、と思っても、実は、たまたまそこに小惑星がいた、 ということがあります。 また、小惑星がたまたま星と重なった時に撮影してしまうと、星の明るさが変 わったように見えることもあります。小惑星を調べないと、誤って新しい変光 星として発表してしまうことになります。 小惑星については、下記のページで調べることができます。 MPChecker: Minor Planet Checker 但し、惑星は調べられませんので、注意して下さい。特に、広角レンズで新星 を探している時は、天王星や海王星を再発見しないようにして下さい。暗い星 を探している時には、冥王星に注意して下さい。 MPCheckerでは、彗星も調べることができます。但し、彗星については明るさ が表示されません。暗くて見えない彗星も表示されますので、注意して下さい。 彗星の明るさは、下記のページで調べられます。 彗星カタログ [認識符号順(1995年以降)] 彗星カタログ [周期彗星番号順] 3. ライトカーブの調べ方 自動サーベイで星の明るさが変化する様子を記録したライトカーブを見ること ができます。 彗星の光度観測では常に、比較星が変光星ではないか、という疑問が付きまと います。ライトカーブを調べれば、比較星が変光していないことを確認できま す。 明るさの変わる星を見つけた時にも、ライトカーブを調べると良いでしょう。 数日おきに暗くなる食変光星なのか、それとも、1〜2年ごとに増減光を繰り 返すミラ型なのか、ライトカーブを調べれば分かります。もし、ライトカーブ が普通でなければ、珍しく貴重な星を発見したのかもしれません。 3-1. ASAS (All Sky Automated Survey) ASAS (All Sky Automated Survey) は、南天を中心としたサーベイです。 下記のページでは、赤緯+30度より南にある、14等より明るい星について、ラ イトカーブを見ることができます。 The All Sky Automated Survey ASAS は現在もサーベイを続けています。新しい画像が撮影されるとすぐにデー タが追加されるので、いつでも最新のライトカーブを見られます。 3-2. NSVS (Northern Sky Variability Survey) NSVS (Northern Sky Variability Survey) は、北天を中心としたサーベイで す。 下記のページでは、赤緯-38度より北にある、15.5等より明るい星について、 ライトカーブを見ることができます。但し、見られるのは1999年から2000年に かけての、およそ1年分のデータだけです。 Northern Sky Variability Survey 4. データの調べ方 DSSや2MASSの画像を見るだけでもおおよそのことは分かりますが、位置や光度 の正確な値を知りたい時や、その他の情報を知りたい時には、恒星カタログを 検索して、データを調べる必要があります。 4-1. USNO-A2.0 / USNO-B1.0 USNO-A2.0 や USNO-B1.0 には、およそ20等までの星が載っています。DSS画像 に写っている星のデータを調べる時は、これらの恒星カタログを検索すると良 いでしょう。 USNO-B1.0 には、固有運動の値が記録されている点が特徴です。 USNO-A2.0 / USNO-B1.0 のデータは、下記のページで調べられます。 USNO Flagstaff Station Integrated Image and Catalogue Archive Service 4-2. 2MASS 2MASSの画像に写っている星のデータは、下記のページで調べられます。 GATOR 4-3. PIXYシステム2を使った調べ方 GSC (Guide Star Catalog) や USNO-A2.0 のCD-ROMを持っていれば、MISAOプ ロジェクトで開発したPIXYシステム2を使って、データを調べることができま す。 下記のページでは、PIXYシステム2を使ったデータの調べ方を紹介しています。 カタログの調査 4-4. 星の色の調べ方 恒星カタログには、いくつかのバンドごとに、星の明るさが載っています。そ れにより、星の色が分かります。 USNO-A2.0 には、R, B という、2種類の光度が載っています。USNO-B1.0 に は、B1, B2, R1, R2という、4種類の光度が載っています。2MASSには、J, H, Ksという、3種類の光度が載っています。 星の色は、2つのバンドの明るさの差で表します。標準では、Bバンド(青) の明るさと、Vバンド(眼視)の明るさとの差を取った、「B-V」という値で表 します。おおよそ、B-V が0より小さければ青い星、1より大きければ赤い星で す。 恒星カタログには、それぞれ独自のバンドで測った明るさが載っているため、 データを見ただけでは、どれくらい青い/赤いのか分かりません。そこで、光 度システムの変換式を使って、標準的な色のデータに変換する必要があります。 下記のページでは、様々な恒星カタログの明るさのデータから、標準的な色の データを求めるための変換式が紹介されています。 Color Conversion MISAOプロジェクトでは、新しい変光星を見つけた時は、USNO-A2.0 で星の色 を調べています。色が赤くなければ短周期変光星と思われますので、集中的に 観測するようにしています。こうして、星の色を基に、MisV1105のような食変 光星を発見しています。 MisV1105 5. 研究成果の調べ方 5-1. SIMBAD 下記のページでは、過去に行われた様々な研究・観測の成果を調べることがで きます。 SIMBAD Astronomical Database 5-2. 新しい変光星 明るさが変わる星を見つけた時は、誰かがすでに発見していないか、調べる必 要があります。SIMBADで検索すると、すでに変光星として発見されていれば、 変光星の名前が表示されます。 但し、論文として発表されていない変光星は表示されませんので、注意して下 さい。 5-3. 特別な星 過去の研究成果を調べると、思いがけない情報が見つかって、貴重な星、珍し い星の発見につながることがあります。 1つ例を紹介しましょう。MISAOプロジェクトで見つけた新変光星に、 MisV1147という星があります。 MisV1147 この星についてSIMBADで検索してみると、HBHA 65-53 という名前が付いてい ることが分かります。この名前について更に調べてみると、かつて、水素の輝 線が強い星の研究で取り上げられていたことが分かります。 この情報を基に、MisV1147はたくさんの観測者の注目を集めるようになりまし た。その結果、この星は生まれたばかりの星で、しかも、その中でも特別な星 であることが分かりました。 
P.S. http://www.aerith.net/misao/index-j.htmlで閲覧できます。 -- 吉田 誠一 / Seiichi Yoshida comet@aerith.net http://www.aerith.net/index-j.html |