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天体画像からの星像検出

天体画像からの星像検出の手法は、原理的には次の通りである。 即ち、背景に対して充分に明るい円形の小領域を1つの星とみなし、その重心座 標を星の座標、その小領域全体のピクセル値の合計を星の明るさ(光量)とする。 そこで、画像の背景のレベルと、背景に対してどの程度明るければノイズでなく 星とみなせるかを決める閾値を求める方法を考えることになる。

背景のレベルは画像全面で均一と考え、全ピクセル値の平均値を背景レベルとす るのが一番簡単な方法である。 しかし、一般に写真を撮影した時、中心が明るく、周辺が暗くなる周辺減光とい う現象が起こる。

figure50

カシオペヤ座新星1995 吉田誠一撮影
1995年12月21日 19:02 (1分)
茨城県藤代町
25cm F6.3 シュミットカセグレン 直焦点
コニカカラーGX3200

displaymath307

断面図

figure56

そこで、画像の背景レベルは、以下のような座標x,yの2次関数で表す。

displaymath308

これをフラットフィールド関数と呼ぶ。 tex2html_wrap_inline315 のパラメータは、ピクセル値 とフラットフィールド関数の値の差の絶対値が最小となるように最小2乗法で求 める。

以上を踏まえて、星像検出の手順を以下のように考えてみた。

  1. 全ピクセルを用いて初期フラットフィールド関数 tex2html_wrap_inline317 を求める。

    figure63

  2. 各ピクセル値の初期フラットフィールドに対する差の標準偏差 tex2html_wrap_inline319 を求める。
  3. 各ピクセルに対し、ピクセル値が tex2html_wrap_inline321 より も大きい場合は星像の一部、 tex2html_wrap_inline323 よりも小さい場 合はダークノイズとみなす。

    figure71

    初期フラットフィールド関数は、画像中の恒星やダークノイズの影響を多分に浮 けていると考えられる。 そこで、値が tex2html_wrap_inline325 以内であるピクセルを背景と みなし、背景のピクセルのみから新たに真のフラットフィールド関数 tex2html_wrap_inline327 を求める。 

  4. 真のフラットフィールドに対する差の標準偏差 tex2html_wrap_inline329 を求める。 
  5. ピクセル値ptex2html_wrap_inline333 よりも大きい場合を真の星像の 一部とみなし、ピクセル値を tex2html_wrap_inline335 とする gif 。小さい場合は0とする。

    figure79

  6. 値が0でないピクセルはいくつかの小領域に分かれている。各々を星像 とみなし、重心の座標と、光量として小領域の総ピクセル量を求める。

    figure82

この手順で実画像から星像検出を試みる実験を行った。 結果は次の通りである。

3枚の画像が縦に並んでいる。 一番上の画像が元の実画像である。 2番目は、上記の手順で初期フラットフィールド関数が求められた時点で、フラッ トフィールド関数+標準偏差の2倍よりも値の大きいピクセルのみを星像として 残したものである。 3番目は真のフラットフィールド関数まで求めて同様の出力をさせたものである。 尚、画像中の赤いピクセルはダークノイズを表している。 2番目の段階では暗い星が検出されていないが、明るい星は概ね検出されており、 またノイズがほぼ除去されている。 一方、3番目の段階では大量のノイズが混じってしまい、星像検出には失敗して しまっている。

以上の結果より、初期フラットフィールド関数とそれに対する標準偏差を用いた 場合の方が良好な結果であったため、プロトタイプシステムでは先の手順から 3, 4 を除いた方法で星像を検出している。 この場合、明るい恒星の影響を受けて標準偏差が大きくなってしまっており、暗 い星の検出ができていない。 しかし、このことは写像関数を求める上では実は問題にはならない。 写像関数を検出される明るい星だけから求めれば良く、逆に暗い星まで含むと計 算量だけが増えるという結果になり得るからだ。 但し、新天体の自動検出という点からは大いに問題であり、今後の課題である。

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