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CCDによる彗星発見の可能性

冷却CCDを使うと、条件の悪い環境でも、かなり暗い彗星まで撮像することが できる。 実際、門田健一と著者による上尾サーベイでは、門田が埼玉県上尾市の自宅近 くで撮像を行っている。 上尾市は都心からわずかに30kmほどの所で、首都圏にあるが、口径18cm F5.5反 射望遠鏡で60秒前後の短時間露出にも関わらず、18等程度の彗星まで撮影できて いる。 上尾サーベイチームによる、1998年8月以降に発見/検出された彗星の観測状 況を表 1にまとめた。 観測期間は1998年12月から1999年2月までの3カ月間である。 CCDを使うことで、都会という悪条件下で、かつ小口径であっても、発見され る彗星のほとんどを網羅できていることが分かる。

  

彗星名観測光度観測回数
C/1998 P1 (Williams) 19
C/1998 Q1 (LINEAR)
P/1998 QP54 (LONEOS-Tucker) 16.5 1
P/1998 S1 (LINEAR-Mueller) 14.9 2
C/1998 T1 (LINEAR) 15.0 4
C/1998 U1 (LINEAR)
P/1998 U2 (Mueller) 17.1 1
P/1998 U3 (Jager) 16
P/1998 U4 (Spahr) <17.8 1
C/1998 U5 (LINEAR) 7
P/1998 VS24 (LINEAR) <17.9 2
P/1998 W1 (Spahr) 14.8 7
P/1998 W2 (Hergenrother)
C/1998 W3 (LINEAR) 16.1 7
139P/1998 WG22 (Vaisala-Oterma) 17.6 1
P/1998 X1 (ODAS) 17.9 3
140P/1998 X2 (Bowell-Skiff) 16.1 3
D/1998 Y1 (LINEAR) 16.1 5
P/1998 Y2 (Li) 16.0 3
C/1999 A1 (Tilbrook) 11.3 2
P/1999 D1 (Hermann) 17.2 2

○は写ったが光度を測定していないもの
−は観測しなかったもの
P/1998 U4, P/1998 VS24は写らなかった。

表 1: 3カ月間の上尾サーベイチームの彗星観測状況

更に、冷却CCDを使うと、超低空の彗星の観測も行えるという利点がある。 CCDでは、たとえ薄明中であっても、充分暗い星まで撮影できることが分かっ ている。 そのため、夕方の日没直後や明け方の日の出直前に撮影することで、低空の彗 星を、より高い位置で観測できることになる。 例えば、1月に発見されたC/1999 A1 (Tilbrook)は、日本からは夕方の低空に しか見えなかったが、上尾サーベイチームでは撮像に成功した(図 1)。 また、昨年11月に明るくなったC/1998 U5 (LINEAR)は、2月中旬に明け方に再 び現れるようになってきたが、上尾サーベイチームでは、まだ低空のこの彗星 をいち早く撮像し、予報よりも2等ほど暗くなっていることを確認した(図 2)。

    

図 1: C/1999 A1 (Tilbrook)
1999年1月16日
18cm反射
高度14度、薄明終了19分前

図 2: C/1998 U5 (LINEAR)
1999年2月26日
18cm反射
高度18度、薄明開始29分後

これらの結果を逆に考えると、CCDを使って新天体の捜索を行うと、都会でも 暗い彗星を発見できる可能性があると言えるだろう。 特に、薄明中でも充分暗い星まで写せることから、夕方や明け方の低空に出現 する新彗星を捉えるにはうってつけであると考えられる。

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