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特定の目的にのみ活用されている場合

一方、既にいくつかの大天文台では組織的なスカイサーベイが動いており、 NEA(Near Earth Asteroids)や超新星の発見、または既存天体の追跡観測が行わ れている。 これらの場合、発見や観測が目的であるので、撮影された画像はすべて検査され、 また追跡体制も整っているものと考えられる。 更に、SOHO(SOlar and Heliospheric Observatory)等のいくつかのチームでは、 画像を検査するソフトウェアを開発して利用している。 そのため、前述した個人的な画像におけるような問題はない。 しかしながら、天文台で撮影されるサーベイ画像には別の問題がある。 それは、画像はある特定の目的のために撮影されるため、その目的に関する情報 のみが利用され、その他の情報が活用されないことがある、ということだ。

例えば、人工衛星に搭載したコロナグラフによって太陽の観測を行っているSOHO チームでは、当初は太陽に関すること以外としては、目で見て明らかに分かるい くつかのクロイツ群の存在をWWWで告知しているだけであった。 今年に入り、クロイツ群でない C/1997 H2 彗星の発見を契機に、それまでに検 出していたクロイツ群の彗星の発見を正式に中央局に報告するようになった。 その後、移動天体の自動検出ソフトウェアを開発して、それまでの画像を再検査 したところ、多数の彗星を発見しているのは周知の通りである。

このSOHOチームの例では太陽以外に彗星に関する観点からも検査が行われるよう になったため、彗星に関する情報も活用されるようになったが、一般には本来の 目的以外の観点で検査されることはほとんどない。 実際、SOHOチームのこの成果を見て、変光星観測者からも、SOHOの画像によって 太陽と合になっている変光星のデータが得られるのではないか、という提言もあ る。 つまり、SOHOの画像にしても、それが持っている変光星に関する情報はまだ埋も れたままである、ということだ。

どのような目的で撮影された画像にしても、様々な情報を含んでいる。 だが、それぞれの撮影チームは本来の目的の専門家であることが多く、他の目的 に関する情報はうまく引き出せないと思われる。 そのため、世界中の画像にアクセスできるような、世界規模の画像データベース を構築し、各々の専門家が独自の観点から画像を検査し、有用な情報を引き出せ るような体制を作ることが必要である。

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