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実験結果

最後に、カシオペヤ座新星1995の写真(図 2)を用いて、この プロトタイプシステムの実験を行った例を示す。

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図 2: カシオペヤ座新星1995の画像

この画像から検出された星像だけをピックアップすると、図 3のようになる。 138個の星像が検出された。 尚、フィルムについた傷や、新星の位置を示すために描き入れた三角形のマーク も恒星と認識されて検出されてしまっている。

   figure86
図 3: 検出された星像

星表としてはTychoカタログを利用した。 この場合、カシオペヤ座新星を撮影していることは明らかなので、概略の位置と して新星の赤経赤緯を指定した。 また、経験上約1度の範囲が撮影されるため、 tex2html_wrap_inline330 度の領域にある恒星 データを抽出した(図 4)。 Tychoカタログは実質11等までの恒星を網羅している。 ところが、写真には12等程度の恒星まで写っているため、検出された画像に比べ て恒星の密度が小さくなってしまった。 尚、抽出された個数は243個である。 即ち、画像内に収まるものは4分の1の61個程度となる。 そこで、検出した星像のうち明るいものから61個を選び、その光度を星表から抽 出した恒星の光度に明るい順に4つおきに対応づけ、この61個と抽出した243個と の間でマッチングを行った。

   figure92
図 4: 星表から抽出した恒星

マッチングの結果、次のような写像関数が得られた。

displaymath328

kは拡大率、 tex2html_wrap_inline334 は回転角、 tex2html_wrap_inline336tex2html_wrap_inline338 はオフセットで ある。 概略の画角として1度を指定し、拡大率は1.15となったため、実際の画角は1.15 度であったことが分かる。 また、回転角が325度ということは、画像では方位角325度の方向が北、即ち、画 像を時計回りに325度回転させると北が真上になる、という意味である。 この写像関数を逆に作用させて、画像と同じ領域の星図を作成したものが 図 5である。 恒星の対応がきちんととれており、また、新星や三角形のマークが星図にないこ とが分かる。 先に明るい順に暫定的に光度を定めたが、この段階で画像中のピクセル値と光度 との正確な対応がとれるようになる。

   figure105
図 5: 画像と同じ領域の星図

この結果を得て、画像をクリックするとその場所の赤経赤緯を出力したり、逆に 指定した赤経赤緯が画像中のどこにあたるかを示すことができる。

この実験はうまく正しい結果が得られている。 しかし、実際にはいくつかの問題が残っており、WWWで公開するまでにはもうし ばらく時間がかかる。 そのうち、絶対に解決すべき大きな問題は次の2つである。

1つ目の問題点は、マッチングに非常に時間がかかることである。 この実験でも、PentiumPro 180MHz のPCで3時間ほど、概略の回転角を指定して 探索領域を小さくしても数十分かかった。 但し、これはJava言語でプログラムを組んだ影響が大きい。 それ以前に、C++言語で実験を行っていた時には、実画像ではなく人工的に作成 した画像を用いており、星の数も少なかったが、3分もかからずに結果が出てい た。

もう1つの大きな問題は、写像関数がうまく求まらないことがあるということだ。 この実験でも、正しい写像関数の他に、 tex2html_wrap_inline340 といったような関数の値がいくつか候補に挙がってい た。 最終的に重複の最も多い(重複度11)正解が選ばれたが、その次に重複が多いもの は重複度10、更に重複度8の候補が3つもあり、かろうじて正解になったという印 象が強い。 但し、概略の回転角を30度程度の誤差で指定できれば、まず正解を求めることが できている。

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