吉田誠一の彗星観測日記(2006年)

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* 2006年12月22日〜23日(観測した彗星:9個)

群馬県・北軽井沢での彗星観測です。

浅間山は雪化粧しており、鬼押し出しの駐車場も完全に雪に覆われていました。二度上峠の山道も一部が凍っていましたが、観測地の周辺には雪はありませんでした。

22日は、ちょうど夕方に雲の帯が去るかどうかの瀬戸際でした。結果的には、夕方はほぼ完全に曇で、その後もしばらくは、曇ときどき晴れ、という感じでした。雲間からの観測は、たびたび中断されるので、やりづらいです。晴れ間も、そんなに透明度が良い訳ではありませんでした。

しかし、22:30頃からはほぼ快晴となり、そのまま翌朝まで快晴が続きました。透明度も良くなったようで、秋〜冬の天の川もはっきりしてきました。気温は0度からマイナス3度まで下がりました。

23日の朝、望遠鏡を片付けた後で、北の空を見ていると、こぐま座流星群の流れ星が盛んに飛んでいました。5:30頃の7〜8分間に、7個のこぐま群流星を数えました。これだと HR=60 くらいになるので、突発だったのでしょうか。

23日は、昼間の快晴が夜まで続きました。日没後は、細い三日月が見えて、地球照がたいへんきれいでした。しかし、20時頃に急にまだらな雲に覆われてしまいました。だんだん雲が多くなり、夜半前にはほぼ完全に曇り、小雪までちらついてきてしまいました。

この他に、C/2006 L1 ( Garradd ) も狙いましたが、まちがって古い軌道要素で星図を作ってしまい、捉えられませんでした。帰宅して調べてみると、彗星は40分角も離れたところにいたことが分かりました。どうりでまったく見えなかった訳です。

しかし、この彗星が予想外に急増光した彗星だったこともあり、現場では、てっきり急激に拡散・減光したものと思い込んでいました。そのため、星図の位置を拡大してばかりいて、周囲を見渡すことはしませんでした。

C/2003 WT42 ( LINEAR )

12月22日   14.2等   視直径0.7分   DC 4   (40.0cm 反射 144倍)

半年ぶりの再会です。暗くなりましたが、まだ見えていました。相変わらず集光しているようで、意外と存在ははっきりしています。

P/2006 HR30 ( Siding Spring )

12月22日   14.6等   DC 9   (40.0cm 反射 257倍)

12月23日   14.6等   DC 9   (40.0cm 反射 257倍)

40cmだとはっきり見えますが、まだ14等台半ばと暗いです。天の川の中は微光星だらけで、見分けるのがつらいです。彗星が暗いので、GSCではまったく不足です。

周囲の微光星とまったく同じ見え方をしているので、DC=9 としましたが、暗いので、完全に恒星状かどうかは判断が難しいです。

C/2006 L2 ( McNaught )

12月22日   12.1等   視直径0.9分   DC 6   (40.0cm 反射 144倍)

夕空にいた頃は見えませんでしたが、明け方の空に回って来て、ようやく見ることができました。小さく、ほどほどに集光している感じです。

C/2006 M4 ( SWAN )

12月23日   9.4等   視直径5分   DC 3   (40.0cm 反射 36倍)

2ヵ月ぶりです。さすがにかなり暗くなっていましたが、40cmではまだ明るく大きく、楽に見えます。淡くぼんやりした姿です。

4P/Faye

12月23日   10.7等   視直径2.8分   DC 6   (40.0cm 反射 75倍)

さすがに暗くなってきましたが、まだ充分に良く見えます。36倍だと暗いので、かなり拡散して感じられますが、75倍で拡大すると、中心の集光はかなり強く感じます。22日は8.5等星と重なっていて、観測できませんでした。

29P/Schwassmann-Wachmann 1

12月22日   13.1等   視直径1.2分   DC 1〜2   (40.0cm 反射 144倍)

12月23日   13.4等より暗い   視直径0.6分   (40.0cm 反射 144倍)

かなり暗く、限界に近いのですが、22日は淡い姿が見えました。

23日は見えなかったのですが、14.6等星が近くにあったので、その影響を受けたのかもしれません。

76P/West-Kohoutek-Ikemura

12月22日   14.2等より暗い   視直径0.6分   (40.0cm 反射 144倍)

当初は13等になると期待されていた彗星ですが、見えませんでした。

84P/Giclas

12月23日   14.1等   視直径0.6分   DC 4   (40.0cm 反射 144倍)

12月13日に門田さんが14.8等と報告していたので、狙ってみると、見えました。彗星は確かに明るいようです。意外と存在がはっきり感じられます。

22日は11.6等星と重なって見えませんでした。23日は雲が盛んに往来して、たびたび観測が中断されたのですが、なんとか観測できました。

181P/Shoemaker-Levy 6

12月23日   13.1等より暗い   視直径0.8分   (40.0cm 反射 144倍)

こちらも、当初は13等になると期待されていた彗星ですが、見えませんでした。

* 2006年10月31日(観測した彗星:9個)

群馬県・北軽井沢での彗星観測です。

北軽井沢は紅葉が見頃となり、きれいな眺めでした。

横浜や東京は雲が多かったのですが、関東の北部は晴れていました。しかし、夕方はもやが出ていて、透明度がかなり悪かったです。もやのため、半月の影響が甚大で、都会の光害地のような劣悪な空でした。天の川も見えず、肉眼でヘルクレス座を辿るのも難しいほどでした。

18時頃に、一時的に雲ってしまいましたが、18時半頃には再び晴れ上がりました。その後は、一晩中ずっと快晴でした。

夜半頃になると、だいぶ、もやが解消したようです。特に、月没後は、格段に暗い星まで見えるようになりました。もちろん、天の川も見えるようになりました。明け方は、冬の天の川と、黄道光が良く見えていました。

薄明が始まった後で、急に、少し雲が出て来たようでした。

C/2005 E2 ( McNaught )

14.2等   視直径0.6分   DC 3   (40.0cm 反射 144倍)

ほとんど見えないのですが、非常に暗く小さなものが見えたように思います。

C/2005 YW ( LINEAR )

13.7等   視直径0.5分   DC 3〜4   (40.0cm 反射 144倍)

これも、ほとんど見えないのですが、非常に暗く小さなものが見えたように思います。

P/2006 HR30 ( Siding Spring )

14.6等   DC 9   (40.0cm 反射 257倍)

尾が再び写り始めたとのことで、確認してみましたが、急増光はしていませんでした。いまだに14.5等より暗いです。

月明ともやのため、微光星がたいへん見づらいです。空の条件が悪いので、完全に恒星状か、わずかにコマがあるかどうかは、判断が付きませんでした。

帰宅して調べてみると、USNO-A2.0では、すぐ近くに14.5等星があるはずでした。しかし、DSS画像を見ると、その14.5等星は、実は暗い二重星の合成光度になっているようです。ですので、彗星が見えていたものと判断しました。

C/2006 L1 ( Garradd )

9.8等   視直径5分   DC 3   (40.0cm 反射 36倍)

予想以上に巨大な姿で、見た瞬間に思わず叫んでしまいました!たいへん明るく、楽に見えます。中心部が濃く、ベタっとしているので、4P/Faye より明るく感じます。

意外にも、集光は弱いです。もっと拡大しても弱いです。

C/2006 M4 ( SWAN )

5.3等   視直径13分   DC 7   (10x24 双眼鏡)

5.3等   視直径14分   DC 7   (10x70 単眼鏡)

バースト後の初観測です。ようやく見られました。一時は4等になったそうですが、すでに5等と暗くなっていました。

非常にもやっていて、月明もあり、見栄えがしません。肉眼でも見えず、尾も見えません。しかし、10月上旬と比べると、はるかに巨大になっていました。

40cmでも、集光は強く、しっかりしています。

すぐ近くに、ヘルクレス座の大球状星団M13があります。スワン彗星は、M13とかなり似たイメージです。M13より少し集光が強く、M13よりずっと明るいです。

ちょうど半年前に、73P/Schwassmann-Wachmann 3 を見たのと、まったく同じ場所で、またもや肉眼彗星を見ることになり、たいへん思い出深い観測となりました。

P/2006 T1 ( Levy )

11.6等   視直径1.1分   DC 3〜4   (40.0cm 反射 144倍)

急激に減光している、という噂があったので、もうすっかり拡散して見えなくなっていると思っていましたが、意外にもまだ明るく見えたので、驚きました。意外と集光もあるようです。

この辺り、GSCに載っている明るい星が、実は暗い銀河だった、というケースが非常に多く、位置の同定が難しかったです。現場では、星図のどれが銀河なのか分からないため、位置を間違えて、実は銀河を観測しているのでは!? という不安がありました。特に、予想よりはるかに集光が強かったので、不安が拭いきれませんでした。

4P/Faye

9.8等   視直径3.9分   DC 7   (40.0cm 反射 36倍)

明るく集光が強く、見やすいです。だいぶ頭部が大きくなってきて、ちょっと尾がはっきりしなくなってきました。

29P/Schwassmann-Wachmann 1

11.9等   視直径1.7分   DC 3   (40.0cm 反射 144倍)

こんなに明るく大きな29Pを見たのは久しぶりです! 中心は意外と良く集光していますが、周りに淡く大きく、拡散状のコマが広がっていて、とても見栄えのする姿です。

Maciej Reszelskiは、同じ日に13.2等と報告していますが、それよりもずっと明るいです。

177P/Barnard 2

12.2等   視直径1.2分   DC 1〜2   (40.0cm 反射 144倍)

月明のため、たいへん見づらいのですが、まだ見えていました。でも、だいぶ小さくなりました。淡く拡散状で、平坦な感じです。

2つの13.5等星に隣接していましたが、拡散状なので、測光に影響はないと思います。ただ、月没後に、もう一度確認してみた時には、もっと暗く感じられたので、この観測は、明るく見積り過ぎているかもしれません。

* 2006年10月9日(観測した彗星:5個)

群馬県・北軽井沢での彗星観測です。

この三連休は、関東地方は非常にすっきりとした秋晴れが続きました。あいにく満月だったのですが、新彗星・レヴィ彗星がもしバーストだとすると、すぐに暗くなってしまうかもしれない、と不安になったので、出かけることにしました。

尤も、東京はずっと晴れていましたが、北軽井沢は土日は雨だった模様です。月曜日に、ようやく晴れの予報が出たので、出かけました。

空気は秋らしく澄んでいて、山の峰々もきれいに見えます。高崎からも、噴煙たなびく浅間山や、小浅間山までもが良く見えました。しかし、上空の高いところには薄雲が広がってしまっていました。

夕方は雲に覆われているところも多く、特に東から南にかけてはまったくダメでした。しかし、好都合にも、西空は晴れていました。東の空に雲があったため、満月がしばらく雲に隠れていて、影響を受けずに済みました。

しばらくして、南から晴れて来て、19時半には東の空も晴れました。満月が姿を現した途端、空が明るくなって、星が見えなくなってしまいました。

明け方は快晴でした。きれいな夜明けを堪能しました。

この他に、4P/Faye にも望遠鏡を向けました。一応は見えますが、満月のすぐ側のため、観測にはなりませんでした。

C/2006 L2 ( McNaught )

11.3等より暗い   視直径1.0分   (40.0cm 反射 144倍)

再び狙ってみましたが、夕方の超低空で、背景が白っぽく、彗星は分かりませんでした。冬に明け方の空に昇って来るのを待つしかなさそうです。

C/2006 M4 ( SWAN )

6.1等   DC 8   (10x70 単眼鏡)

6.3等   視直径5.5分   DC 7〜8   (40.0cm 反射 36倍)

夕方と明け方の2回、観測しました。ただ、夕方は北の低空には雲があって、薄雲が往来して星が明暗を繰り返し、まともな観測になりませんでした。夕方よりも低空だったのですが、快晴だった明け方に測定しました。

彗星は、9月とあまり変わらない姿でした。

高度が高かった夕方には、10x70単眼鏡でも明らかに彗星状に見えたのですが、明け方はほとんど恒星に近くしか見えませんでした。

C/2006 P1 ( McNaught )

約12.5等   視直径1.4分   DC 2   (40.0cm 反射 144倍)

かなりの低空で、もやっていて見づらいのですが、時々、すっと空がクリアになって、微光星が見える瞬間があります。その時、淡い拡散状の彗星が見えたように思います。

意外と明るいような気もするのですが、薄雲が往来しているのか、コンスタントに見え続けることはありませんでした。

この辺り、GSCとASAS-3とで、星の配列がかなり違います。DSSで見ると、GSCが正しいようです。そのため、GSCで報告します。

P/2006 T1 ( Levy )

10.5等   視直径1.7分   DC 3   (40.0cm 反射 75倍)

満月ですが、明るく、はっきり見えました。集光は強くもなく、弱くもない感じです。75倍では DC=3 ですが、144倍では DC=4〜5くらいに見えます。

177P/Barnard 2

11.4等   視直径2.3分   DC 1〜2   (40.0cm 反射 75倍)

だいぶ暗くなってきたようですが、まだ大きく広がった姿で見えており、明るく楽しめます。

淡く大きく広がった拡散状ですが、目を凝らすと、中心には小さな集光がはっきり見えます。中心部の暗さに比べて、コマの広がりが大きいので、拡散状に感じられますが、DCは決めづらいです。

* 2006年9月27日(観測した彗星:11個)

群馬県・北軽井沢での彗星観測です。

発達した低気圧のため、昼に東京を出発する頃には、ひどい雷雨でした。しかし、上信越方面に近づくにつれ、予報どおり、晴れ上がっていきました。

夕方は、ほぼ晴れでしたが、まだ雲が所々に残っており、たびたび雲に覆われて、落ち着かない感じでした。ちょうど薄明が終わった頃に、南西の低空に雲があって、夕空の低空の彗星を見るのに、支障が出てしまいました。その後も、北から西の空は曇りがちでしたが、南の空は比較的、晴れ続けていました。

非常に湿気が多いためか、空が白っぽい感じで、透明度は悪いようです。特に、東の方向は、関東平野の光害で、まるで日の出の直前のような明るさでした。

真夜中には快晴となり、空も落ち着いて、透明度も良くなったようでした。その後は、明け方まで快晴が続きました。

はくちょう座の辺りに目をやると、肉眼で、北アメリカ星雲が見えていたように思います。単に、天の川が濃くなっているだけかもしれませんが、有名な北アメリカ大陸の形がはっきり感じられました。

9月28日、29日は、ずっと曇り一時雨でした。

C/2005 E2 ( McNaught )

13.3等より暗い   視直径0.4分   (40.0cm 反射 257倍)

Maciej Reszelski が、9月22日に12.9等と報告していますが、見えませんでした。

P/2006 HR30 ( Siding Spring )

14.9等   DC 9   (40.0cm 反射 257倍)

20時台にいったん移動まで確認していましたが、真夜中に透明度が良くなり、落ち着いて見られるようになったので、再確認しました。

いまだに完全に恒星状で、暗いままです。はくちょう座の、GSCの極限等級よりも暗い、無数の微光星の間を動いています。かなり倍率を上げないと、恒星を見間違える人もいるのでは?

吉本さんの限界等級は14.5等とのことですが、それよりは少しだけ、しかし明らかに暗いです。14等と報告している人が多いですが、明らかにもっと暗く、15等に見えます。

C/2006 L2 ( McNaught )

11.5等より暗い   視直径1.3分   (40.0cm 反射 144倍)

あいにく低空に雲があって、薄雲の影響で背景がかなり明るく、彗星は見えませんでした。

C/2006 M4 ( SWAN )

6.3等   視直径8分   DC 7〜8   (5.0cm 屈折 10倍)

6.4等   視直径6分   DC 7〜8   (40.0cm 反射 36倍)

予想以上に明るいので驚きました! 極めて集光が強いです。しかし、ファインダーでも彗星状に見えるので、意外とコマも広がっているようです。

ちょうど彗星の方向に木立があって、薄明が始まってしばらく経つまで、40cmでは見えなかったので、ちょっと明るくなってからの観測となってしまいました。

C/2006 P1 ( McNaught )

11.9等より暗い   視直径1.1分   (40.0cm 反射 144倍)

先に C/2006 L2 を見ている間に、雲に隠れてしまいました。19:35頃にようやく晴れましたが、すっかり低くなってしまいました。非常に拡散しているらしいですが、背景が白っぽく、拡散状の天体を見るのはかなりつらい条件でした。

4P/Faye

10.8等   視直径1.1分   DC 7〜8   4分(位置角250度)   (40.0cm 反射 75倍)

10.8等   視直径2.8分   DC 7   (40.0cm 反射 36倍)

かなり明るくなりました! 尾がはっきりとした、優美な姿で、Michael Jager と Gerald Rhemann の写真のような、素晴らしい見栄えです。相変わらず、極めて強く集光しており、頭部はかなり小さく感じられます。しかし、低倍率にすると、尾ははっきり分からなくなりますが、大きく広がって見えます。

29P/Schwassmann-Wachmann 1

13.4等   視直径1.0分   DC 3   (40.0cm 反射 144倍)

意外とはっきり見えました。ただ、あまり集光はしていません。

最近のバーストはいつでしょうか? 今年は、バーストに関係なく、いつも13等で見えている感じです。

71P/Clark

12.6等   視直径0.9分   DC 3   (40.0cm 反射 144倍)

最盛期の頃は、悪天候や低空のために見られませんでしたが、去ってしまう前に、久しぶりに観測できました。意外にも、まだ彗星は眼視で見えていました。

測定光度は12.6等ですが、見た目の印象はもっと暗い気がしました。ちなみに、GSCを使うと、13.7等となります。

73P-C/Schwassmann-Wachmann 3

13.9等   視直径1.2分   DC 3〜4   (40.0cm 反射 144倍)

意外にも、まだ眼視で見えました。ただ、かなり限界に近くなってきました。

117P/Helin-Roman-Alu 1

13.2等   視直径1.3分   DC 4   (40.0cm 反射 144倍)

透明度が悪いため、前回よりかなり見劣りがする感じですが、彗星は今回も確かに見えていました。小さいながらも、良く集光しているのだと思います。

177P/Barnard 2

10.5等   視直径3.0分   DC 2   (40.0cm 反射 75倍)

暗くなったようで、低倍率では良く分かりません。中心部は確かに集光していますが、周囲はかなり淡く大きく広がっているので、すっかり拡散しているような印象です。

* 2006年8月22日(観測した彗星:7個)

群馬県・北軽井沢での彗星観測です。

今年は5月以降ずっと天候が悪く、3ヵ月半ぶりの観測となってしまいました。

今回も、8月19日から滞在していましたが、雨や曇ばかりで、いっこうに星が見えません。4夜目にして、ようやく、星空に恵まれました。

4日目も、昼間からずっと曇っていたのですが、22時頃に急に雲が切れて星が見えてきました。しかし、雲量は7以上で、30分ほどですぐに雲ってしまいました。非常に湿気が多く、蒸し暑く、蚊の猛襲を受けました。南の方角では、遠くで雷が盛んに光っていました。

夜中頃になると、再び晴れてきましたが、霧に覆われている感じでした。ところが、0:30頃から急に霧が晴れ上がり、信じられないことに、透明度の良い絶好の快晴となりました!

しかし、それもたったの45分間だけで、1:15には東の一部を除いてまた雲に隠れてしまいました。やがて、濃霧に覆われて、まったく視界が効かなくなってしまいました。30分ほど経って、ようやく濃霧が移動した頃には、空は曇っていました。

しかし、薄明開始の直前に、再び晴れてきました。慌てて出動しましたが、半ば薄明中の観測となってしまい、透明度もそんなに良くはない感じでした。そのまま朝まで晴れていたようです。

結局、4夜にして、わずかに1時間あまりだけの星空でしたが、幸いにして、いくつもの初物の彗星を見ることができました。

P/2006 HR30 ( Siding Spring )

15.5等   DC 9   (40.0cm 反射 257倍)

非常に透明度が良く、はっきり見えます。微光星と区別の付かない、恒星状です。

4P/Faye

11.7等   視直径1.6分   DC 7〜8   (40.0cm 反射 144倍)

これは明るい! 非常に集光が強く、小さくまとまっていて楽に見えます。尾も分かります。

29P/Schwassmann-Wachmann 1

13.2等   視直径1.1分   DC 1   (40.0cm 反射 144倍)

非常に集光の弱い、淡い姿が見えました。彗星を観測していると、雲が迫って来てしまいました。

73P-B/Schwassmann-Wachmann 3

12.6等より暗い   視直径0.8分   (40.0cm 反射 144倍)

C核同様、3ヵ月ぶりの再会ですが、こちらはもう見えませんでした。極限等級がC核そのものよりも明るいですが、ちょっと明るすぎる星を選んでしまったみたいです。もしかしたら、薄明が始まっていたためかもしれません。

73P-C/Schwassmann-Wachmann 3

13.0等   視直径1.0分   DC 4〜5   (40.0cm 反射 144倍)

地球最接近から3ヵ月ぶりの再会です。かなり小さくなっていましたが、まだ何とか見えました。意外に集光もあるようです。

117P/Helin-Roman-Alu 1

13.7等   視直径0.9分   DC 5   (40.0cm 反射 144倍)

やや低空の難物ですが、抜群の透明度のおかげで、意外にも楽に見えました。思っていたより、かなり明るいです! 結構、集光もしています。

177P/Barnard 2

9.1等   視直径8.5分   DC 2   (40.0cm 反射 36倍)

117年ぶりに戻って来た、噂のバーナード第2彗星です。悪天候のため、ようやく見ることができました。

かなり集光が弱く、淡いです。中心部が平べったい、星雲状です。しかし、意外とそんなには大きくない印象です。55P/Tempel-Tuttle を思い出しました。

* 2006年4月29日〜5月4日(観測した彗星:13個)

群馬県・北軽井沢での彗星観測です。

※4/29の73P-Cの観測のみ、茨城県取手市(藤代)の自宅での観測です。

ゴールデンウィーク中は、73P/シュヴァスマン-ヴァハマン第3彗星の観測のために山に篭もりましたが、幸運にも天気に恵まれました。

73Pは、C核とB核がともに肉眼彗星となり、見事な眺めでした。C核は、雄大な姿が見事でした。B核は、期間中にみるみる成長していきました。ただ、その他の分裂核はいずれも期待を下回り、列を為す彗星を楽しむ、という訳にはいきませんでした。望遠鏡を向ける対象が多く、やたら忙しいのに、ほとんど見えないのでがっかりでした。しかし、C核とB核は見事で、その他にも明るい彗星が多く、楽しめました。

実は、MPCの古い軌道で星図を作っていたので、N核とR核は、ずいぶん違う位置を見ていました。特にR核は、ゴールデンウィーク中に12等台までバーストしていたそうなので、惜しいことをしました。多くの観測者が13等台と報告しているのに、星図からR核を導入しても15.0等の微光星しか見えなかったので、かなり自分の目を疑いましたが、それも当然でした。

4/29は、夜中すぎまで完全に曇っていましたが、3時に起きて外を見てみると、雲が晴れて星が見え始めていました。急いで単眼鏡を用意していると、あっという間に快晴になってしまいました。街灯のある自宅での、慌しい観測となりました。

4/30は、夕方は本降りの雨でした。22時を過ぎてもまだ止む気配がありませんでしたので、一眠りすると、0時半には一転して快晴になっていました。湿気が多いようでしたが、そのまま明け方まで快晴でした。ところが、3時半頃になって、快晴なのにぽつぽつと雨粒が降ってきました。天頂付近の73Pの分裂核に望遠鏡を向けていたので一大事で、急いで片付けました。10分ほどすると雲も出てきて、3:50頃には本格的な雨天に変わってしまいました。快晴の空で彗星観測中に雨が降ってきたというのは、初めての経験でした。

5/1は、夕方に快晴になりましたが、低空はかなり靄がでていました。薄明終了の頃から、北の方で雷が光っており、やがて雲が張り出して、22時頃には雨になりました。

5/2は、前線が通過し、午前中は雨、午後も曇でしたが、日没頃から急激に晴れ上がり、7時半には地平線すれすれまで雲1つない快晴となりました。透明度も抜群で、真冬のような絶好の条件でした。実際、かなり冷え込みました。特に、月が沈んだ後は最高で、夏の天の川の複雑な姿や、メシエ天体が肉眼で楽しめました。3〜4等星は、地平線(山の稜線)から昇った瞬間から、沈む瞬間まで見え、肉眼で恒星の出没が実感できました。この状態が明け方まで続きました。しかし、東の低空だけは、高崎や関東地方の光害がかなり目に付きました。

5/3は、前夜から引き続き、雲1つない快晴でしたが、やや透明度は劣っているようでした。夕方は月明の影響が大きく感じられました。でも、月が沈んだ真夜中以降はかなり透明度が良く感じました。しかし、3時前から急に透明度が悪化し、やがて全天を薄雲が覆ってしまいました。アイピースがすぐに雲ってしまい、なかなか観測に集中できません。ファインダーは凍り付いて、途中から良く見えなくなってしまいました。

5/4は、3日続けての快晴でしたが、さすがに透明度は悪かったです。もやのため月明の影響が大きいです。低空には薄雲がたなびいていました。特に東の低空は雲があったので、関東平野は雲が出ていたのかもしれません。しかし、天気と気流は落ち着いていて、257倍で見る土星は、縁までぴたりと停止して揺らがず、まるでハッブル宇宙望遠鏡の写真のような見事な眺めでした。月が沈んだ後の未明は、透明度もかなり良くなったようです。薄明開始の頃には、東の空の薄雲も無くなりました。

C/2003 WT42 ( LINEAR )

5月1日   12.8等   視直径1.0分   DC 6   (40.0cm 反射 144倍)

5月2日   13.1等   視直径1.1分   DC 5〜6   (40.0cm 反射 144倍)

5月3日   13.3等   視直径0.9分   DC 6   (40.0cm 反射 144倍)

5月4日   12.8等   視直径0.8分   DC 5   (40.0cm 反射 257倍)

まん丸く、それほど小さくはないような姿です。条件が良ければ、まだ充分に見えます。ただ、以前のような集光の強さがなくなり、淡い印象になってきた気がします。その代わり、以前より大きくなっていた気がします。

5/1は透明度が悪く、かなり暗く感じられましたが、測定値は他日と一致しました。5/3は、月没後に観測しました。

C/2004 B1 ( LINEAR )

4月30日   12.0等   視直径2.5分   DC 2〜3   (40.0cm 反射 144倍)

5月2日   12.2等   視直径1.0分   DC 4   (40.0cm 反射 144倍)

5月3日   12.5等   視直径1.2分   DC 3〜4   (40.0cm 反射 144倍)

5月4日   12.6等   視直径1.5分   DC 3〜4   (40.0cm 反射 144倍)

4/30には、ずいぶん拡散しており、意外と大きく広がっているように見えました。しかし、さすがに40cmだと、中心部ははっきりと見えます。天の川の星々の中に浮かんでいる姿がたいへん美しく、印象的です。この感じだと、条件が良くなければ、暗く見積もったり、見えないという報告が寄せられるのも分かる気がしました。

5/2以降は、星に接近していたためか、見積もりがかなり小さくなりました。しかし、中心部だけ見ているためか、逆に、ほどよく集光しているように思えました。

C/2005 E2 ( McNaught )

5月2日   9.7等   視直径1.6分   DC 3   (40.0cm 反射 144倍)

5月3日   9.8等   視直径1.4分   DC 3〜4   (40.0cm 反射 144倍)

北西の空の超低空で、遠方の山の稜線のすぐ上でしたが、透明度が良いために観測できました。意外にも、まだ存在がはっきり分かります。淡く、そんなに小さくありません。

C/2006 A1 ( Pojmanski )

4月30日   11.1等   視直径1.4分   DC 1   (40.0cm 反射 144倍)

5月2日   11.7等   視直径1.9分   DC 3   (40.0cm 反射 144倍)

5月3日   12.3等   視直径1.5分   DC 3   (40.0cm 反射 144倍)

5月4日   11.9等   視直径1.6分   DC 3   (40.0cm 反射 144倍)

かなり拡散していますが、中心部ははっきりと見えます。C/2004 B1と同様、天の川の星々の中に浮かんでいる姿が印象的です。さすがに40cmだと、中心部はほどよく集光しており、まだ充分に楽しめます。5/2には、透明度が良いため、たいへん明るく大きく感じられました。5/4は、12等星のすぐ傍でしたが、彗星はかなり明るく、はっきり分かりました。

測定光度は、日ごとに暗くなっていきましたが、見ている時は、急激に減光しているという感じはありませんでした。

4P/Faye

5月2日   13.2等より暗い   視直径0.5分   (40.0cm 反射 257倍)

5月4日   12.3等より暗い   視直径0.5分   (40.0cm 反射 257倍)

明け方の低空ですが、5/2は抜群の透明度のため、かなり暗い星まで見えました。5/2は予報位置に何かあるような気もしますが、14等台の星が見えていないので、たぶん彗星は見えていないと思います。5/4も快晴でしたが、測定結果を見ると、透明度の違いが明らかです。

41P/Tuttle-Giacobini-Kresak

5月1日   13.6等   視直径0.6分   DC 3   (40.0cm 反射 257倍)

5月2日   13.1等   視直径1.0分   DC 3   (40.0cm 反射 144倍)

5月3日   11.5等より暗い   視直径0.6分   (40.0cm 反射 144倍)

5月4日   12.4等   視直径0.7分   DC 3   (40.0cm 反射 257倍)

月がすぐ近くにある中での観測です。5/1は薄雲が迫り、もやっている中での観測です。5/3は、半月から4度しか離れておらず、しかも9等星のすぐ傍で、非常に条件は悪かったのですが、一応、バーストしていないことだけ確認しました。

結局、ゴールデンウィークの1週間には、大きなバーストは起こりませんでした。測定光度は、期間中に急激に明るくなっていきましたが、月明の影響がどんどん大きくなっていったため、見た目の印象では、増光してきたという感じはありませんでした。

この辺り、GSCの光度は、ASAS-3(V)より0.5〜1等も明るくずれています。

71P/Clark

4月30日   12.2等   視直径0.7分   DC 4   (40.0cm 反射 144倍)

5月2日   12.7等   視直径0.7分   DC 3   (40.0cm 反射 144倍)

5月3日   12.6等   視直径0.8分   DC 4   (40.0cm 反射 144倍)

5月4日   12.4等   視直径1.3分   DC 4   (40.0cm 反射 144倍)

意外と明るくなっていました。やや低空で見づらいのですが、ぼんやりとした小さい姿が見えます。5/4には、意外に大きな姿に見えました。

73P-B/Schwassmann-Wachmann 3

4月30日   7.1等   視直径13分   DC 3〜4   0.5度(位置角230度)   (10x70 単眼鏡)

4月30日   7.1等   視直径14分   DC 3   (10x24 双眼鏡)

5月2日   6.8等   視直径19分   DC 6   0.6度(位置角250度)   (10x70 単眼鏡)

5月2日   7.1等   視直径20分   DC 4〜5   (10x24 双眼鏡)

5月3日   6.4等   視直径26分   DC 7   0.7度(位置角230度)   (10x70 単眼鏡)

5月3日   6.0等   視直径33分   DC 3〜4   (10x24 双眼鏡)

5月4日   6.2等   視直径29分   DC 7   0.8度(位置角245度)   (10x70 単眼鏡)

5月4日   6.1等   視直径26分   DC 6   (10x24 双眼鏡)

ゴールデンウィークの1週間に、バーストが起きたようで、みるみる明るく、集光が強くなっていきました。

4/30には、まだ拡散状で、集光は弱く感じました。コマが伸びたように見え、崩壊しつつあるような印象を感じました。40cmで見ても、中心核はそれほどはっきりせず、やや細く伸びているようでした。

しかし、5/2には、かなり大きくなり、集光もしっかりした姿に変わりました。40cmでも、2日前には見えなかった、明らかな恒星状の明るい核が見えました。5/3, 5/4と、だんだん小口径でも集光が強くなっていきました。

後半は、40cmで拡大して見ると、C核に似た感じになってきました。しかし、低倍率の双眼鏡では、C核とまったく違って、大きな、ぼんやりした星雲状です。5/3〜5/4にはひときわ巨大な姿となり、まさに地球に接近しつつあるという実感があります。

5/3〜5/4は、M13との接近が見事な眺めでした。彗星は、M13よりは淡いですが、はるかに巨大で存在感があり、まったく見劣りしません。

肉眼では、M13は楽に見えますが、彗星はあるようなないようなで、はっきりとは分かりませんでした。

73P-C/Schwassmann-Wachmann 3

4月29日   6.3等   視直径12分   DC 6   (10x70 単眼鏡)

4月30日   6.4等   視直径12分   DC 7   0.8度(位置角235度)   (10x70 単眼鏡)

4月30日   6.2等   視直径12分   DC 7   0.4度(位置角235度)   (10x24 双眼鏡)

5月2日   6.4等   視直径13分   DC 7   2.5度(位置角250度)   (10x70 単眼鏡)

5月2日   6.4等   視直径14分   DC 6〜7   1.2度(位置角250度)   (10x24 双眼鏡)

5月3日   6.0等   視直径16分   DC 7   1.2度(位置角240度)   (10x70 単眼鏡)

5月3日   5.9等   視直径14分   DC 7   0.6度(位置角240度)   (10x24 双眼鏡)

5月4日   6.2等   視直径12分   DC 7〜8   1.4度(位置角240度)   (10x70 単眼鏡)

5月4日   6.1等   視直径18分   DC 7   0.7度(位置角240度)   (10x24 双眼鏡)

空の条件が良いためか、皆さんの報告よりも明るく、尾も長く見えました。特に、5/2にはものすごく長い尾が見えました。

これだけ地球に接近しても集光は強く、頭部の輝きがしっかりしています。雄大な尾を伸ばした見事な姿です。尾は20度くらいの角度に広がって、かなり長く、典型的な大彗星のダストの尾のようです。地球に接近している彗星という実感はまったく感じられません。むしろ、大彗星を遠くから眺めているような印象です。

ただ、5/4には、尾がかなり大きく広がってきたような印象を感じました。

肉眼では、あるようなないようなで、はっきりとは分かりませんでした。

4/29の時点ですでに6等級と、かなり明るくなっていて驚きました。しかし、明るさは、ゴールデンウィークの1週間ずっと変わらなかった感じです。

73P-G/Schwassmann-Wachmann 3

4月30日   13.6等より暗い   視直径0.9分   (40.0cm 反射 144倍)

5月2日   13.9等   視直径1.0分   DC 2   (40.0cm 反射 144倍)

2週間前にはあれほど明るく見えたのに、4/30には見えなくなってしまっていました。山篭りの直前に、村上茂樹さんのメールで、減光した、という情報を得ていたので、慌てませんでしたが、そうでなければ星図の位置とかが心配になっていたところです。すっかり拡散しているとのことだったので、75倍でも試みましたが、やはり見えませんでした。

5/2は、抜群の透明度のためか、限界に近い拡散した姿が、かろうじて見えました。

5/3は、G核の観測中に薄雲が出てきたので、あまりちゃんと見られませんでした。彗星が見えたように、しかも集光が強くなったように思いましたが、2つの14.7等星が並んでいただけのようです。

5/4は、ちょっとずれた位置を見てしまいました。

73P-AP/Schwassmann-Wachmann 3

4月30日   13.4等より暗い   視直径0.6分   (40.0cm 反射 144倍)

5月2日   13.9等より暗い   視直径0.6分   (40.0cm 反射 257倍)

5月3日   13.9等より暗い   視直径0.6分   (40.0cm 反射 257倍)

5月4日   14.2等より暗い   視直径0.6分   (40.0cm 反射 257倍)

4/30は、14.9等星は見えていましたが、その隣にいるはずの彗星は見えませんでした。5/2は、抜群の透明度の中、BC核は明るく見えましたが、AP核は見えませんでした。5/3は、小さく集光した姿が見えたように思いましたが、USNO-A2.0に載っている15.5等星でした。

73P-AS/Schwassmann-Wachmann 3

4月30日   14.2等   視直径0.8分   DC 3   (40.0cm 反射 144倍)

5月2日   13.8等   視直径0.6分   DC 2   (40.0cm 反射 257倍)

5月3日   14.4等より暗い   視直径0.5分   (40.0cm 反射 257倍)

予報位置に、微光星のような小さい姿があるように思えました。限界に近いのですが、4/30, 5/2の2夜ともに彗星が見えたように思います。4/30は、観測中に雨が降ってきたので、ゆっくりとは確認できませんでしたが。

しかし、5/3には見えなくなってしまいました。この日は透明度がかなり良くなったみたいで、GSCにない微光星が、視野内に無数に見えました。一通りスケッチしましたが、すべてUSNO-A2.0に載っている、15〜16等星でした。彗星はその合間にあったようですが、見えませんでした。

5/4は、ちょっとずれた位置を見てしまいました。

73P-BC/Schwassmann-Wachmann 3

5月2日   13.2等   視直径0.7分   DC 3〜4   (40.0cm 反射 257倍)

5月3日   13.9等より暗い   視直径0.7分   (40.0cm 反射 257倍)

山篭りの間はインターネットを見られませんでしたが、門田健一さんにお電話させて頂いて、そこでBC核の情報を教えて頂き、見ることができました。

5/2は、抜群の透明度だったためか、かなり明るく、意外と大きく見えました。観測中にみるみる移動していく様子が分かりました。

ところが、翌5/3には、急減光したのか、見えなくなってしまいました。

4/30は、BC核の情報を知らなかったのですが、AP核の観測中にも気づきませんでした。ちょうど、3つの13.5等星が集まった辺りに、BC核があったようです。

5/4は、大きく淡い、拡散したような、集光したような、良く分からない姿が見えたように思いました。USNO-A2.0の15.5等星も含めて目測してしまったようです。彗星も拡散状で見えていたと思いますが、重なっていた訳ではないので、光度を算出できず、報告できなくなってしまいました。

* 2006年4月17日(観測した彗星:5個)

茨城県・花立山天文台での彗星観測です。

花立自然公園は、ちょうど桜が満開で、とても見事な眺めでした。

昼間から空はかなり白っぽく、ひどい春霞みでした。一晩中晴れていましたが、透明度は極めて悪く、星座もまともに辿れません。中〜低空はまったくダメで、天頂だけが何とか、という状況でした。翌日は、東京で6年ぶりに黄砂が観測されたそうなので、その影響もあったかもしれません。

ただ、シーイングはそれほど悪くなく、明け方の木星は、低いながらも模様が良く見えました。

透明度が悪いので、いずれの彗星も、通常より倍率を高くした方が良く見えます。シーイングが悪くないこともあり、今回は12.5mmより7mmの方が明らかに良く見えました。

C/2003 WT42 ( LINEAR )

13.0等   視直径0.6分   DC 5   (40.0cm 反射 257倍)

ひどい空でしたが、天頂にあるので何とか見えました。

C/2006 A1 ( Pojmanski )

9.1等   視直径1.9分   DC 2   (40.0cm 反射 144倍)

中〜低空はもやがひどく、月明もあり、極めて条件が悪かったのですが、何とか存在は分かります。彗星はかなり拡散していて、淡く大きい感じがします。

73P-B/Schwassmann-Wachmann 3

9.6等   視直径3.0分   DC 3〜4   (40.0cm 反射 75倍)

思ったよりもはっきり見えました。もやっとしたものが広がっています。集光はふつうか、やや弱いくらいで、崩壊しつつある感じはしません。4月初めのバーストの頃は見ていないのですが、バーストした実感はもはや無く、3月末の状態からそのまま成長したような印象です。C核よりは明らかに暗いです。

73P-C/Schwassmann-Wachmann 3

9.1等   視直径4.0分   DC s7   (40.0cm 反射 75倍)

淡く大きく広がっています。ずいぶん大きくなった感がありますが、空の条件が悪く、尾が判別できていないためかもしれません。中心は相変わらず鋭く集光しており、春霞みの中でも強い集光が分かります。

73P-G/Schwassmann-Wachmann 3

11.7等   視直径0.8分   DC 5   (40.0cm 反射 257倍)

かなり明るくなったようで、空の条件が悪いのに見えました。思ったよりも集光している感じです。月出前の22時頃よりも、月明があっても高度が高くなった2時過ぎの方が、だいぶ見やすく感じました。

* 2006年3月31日(観測した彗星:8個)

茨城県・花立山駐車場での彗星観測です。

夜中から明け方まで快晴に恵まれましたが、春らしい霞んだ空で、透明度はあまり良くありませんでした。少し高度が低くなると、かなり空が白っぽく見えます。また、シーイングが悪いため、257倍で拡大しても暗い星が見えません。

明るい彗星が増えて来ましたが、この日は折悪しく、恒星と重なってしまった彗星が2つもありました。残念。

この他に、P/2005 XA54, P/2004 VR8も狙いましたが、見えず、not seenとしても意味のある観測になりませんでした。

C/2003 WT42 ( LINEAR )

約13.1等   視直径0.7分   DC 6   (40.0cm 反射 144倍)

夜中頃に、ちょうど13.5等星とぴったり重なってしまいました。なるべく離れてから観測しましたが、その分、高度が低くなってしまいました。まだ13.5等星にかなり近く、なんとか存在が分かる程度でした。

C/2004 B1 ( LINEAR )

10.7等より暗い   視直径0.8分   (40.0cm 反射 144倍)

不運にも、薄明開始の頃に11.8等星とぴったり重なってしまう、ということで、仕方無いので、まだ低空のうちに狙いました。しかし、条件が悪く、あまり意味のある観測にはなりませんでした。当初の、9等という予報よりははるかに暗いことは確認できました。吉本さんの観測から考えると、眼視では11.5〜12等ではないかと思います。

C/2004 D1 ( NEAT )

13.9等より暗い   視直径0.5分   (40.0cm 反射 144倍)

CCDでは15.5等くらいのようですが、C/2003 WT42のように意外に眼視で見えるかも、と思い、狙ってみました。しかし、見えませんでした。

C/2006 A1 ( Pojmanski )

7.6等   視直径5.5分   DC 6〜7   (10x70 単眼鏡)

7.9等   視直径3.3分   DC 6〜7   (40.0cm 反射 36倍)

73Pと違って、ごくふつうの彗星状で、面白味がありません。ほどよく集光しており、見やすいです。まだ7cmでも見えています。7cmでは、天の川の星粒の中に拡散状の彗星が浮かんで見えて、印象的です。

71P/Clark

13.0等より暗い   視直径0.7分   (40.0cm 反射 144倍)

そろそろ眼視で見え始める頃だと思いますが、春霞のためもあり、見えませんでした。今回は導入しやすい位置で、ASASのデータも得られて助かりましたが、この辺り、GSCやUSNO-A2.0では、実際の星空とデータがずいぶん違うので、苦労しそうですね。

73P-B/Schwassmann-Wachmann 3

11.9等   視直径1.4分   DC 6   (40.0cm 反射 144倍)

ずいぶん明るくなりました。もう40cmでは楽に見えます。ほどよく集光していて見やすいです。ただ、B核の集光は、C核のような鋭さが感じられません。恒星状の核も見えません。

73P-C/Schwassmann-Wachmann 3

9.6等   視直径3.0分   DC S7   6分(位置角255度)   (40.0cm 反射 36倍)

3週間ぶりですが、また劇的に明るくなっていました。星図から大雑把にその方向に向けると、すぐに分かりました。幅広い尾が雄大に伸びて見え、実に見事な姿です。集光は相変わらず鋭く、恒星状の核がたいへん目立ちます。

73P-G/Schwassmann-Wachmann 3

13.7等より暗い   視直径0.9分   (40.0cm 反射 144倍)

まだ見えませんでした。

* 2006年3月4日〜5日(観測した彗星:5個)

茨城県・花立山駐車場での彗星観測です。

土曜日は、ポイマンスキー彗星を見に、たくさんの人が来ていました。グループで来ているところもありました。

夜中すぎまで晴れていたそうですが、私が2時に到着した時には完全に曇っていました。仕方ないので、そのまま車中で待機。しかし、4時を過ぎてもまったく晴れる気配がありません。4時半近くになると、諦めて帰り始める車もちらほら。ところが、4時半になって、私も諦めて帰ろうかと思い、車外に出てみると、何と、空の西半分が晴れ上がっているではありませんか! 何も用意していなかったので、あわてて望遠鏡を組み立てていると、雲はそのまま東へ去り、快晴になってしまいました。

奇跡的に、薄明開始ぎりぎりで、2彗星を観測できました。しかし、薄雲は残っており、透明度はたいへん悪い状況でした。

日曜日は快晴でしたが、もやが多く、透明度は悪いです。2月27日に比べると、彗星の見え方はかなり劣っていました。

C/2003 WT42 ( LINEAR )

3月5日   13.1等   視直径0.9分   DC 6   (40.0cm 反射 144倍)

透明度が悪く、半月もあって、2/27に比べて遥かに見劣りがします。それでも、小さく集光の強い姿ははっきり分かります。いつも同じように見えて、安定感のある彗星です。

P/2005 XA54 ( LONEOS-Hill )

3月5日   14.1等より暗い   視直径0.5分   (40.0cm 反射 257倍)

見えません。恒星は14.5等くらいまで見えていますが、もやっていて、微光の彗星を見るには厳しい条件です。でも、2月27日の明るさと集光の強さから考えると、見えてもおかしくないはずですが。

C/2006 A1 ( Pojmanski )

3月4日   5.2等   DC 8〜9   (10x70 単眼鏡)

3月4日   5.2等   視直径2.7分   DC 7   (40.0cm 反射 36倍)

薄雲を通しての観測となりましたが、彗星は充分に明るいです!ようやく見られましたが、もうずいぶん高く昇るようになっていました。

とても小さく、集光が強いです。10x70単眼鏡ではほとんど恒星状で、視直径は分かりません。ですが、他の恒星と比べると、ややぼやけており、彗星だと分かります。

40cmでもたいへん小さく、明るくて、ぎゅっと凝縮された感じです。条件が悪く尾は見えませんが、コマは偏っており、やや放射状に広がっている感じです。村上さんが指摘されているように、二方向に尾が伸びているのかもしれません。

73P-B/Schwassmann-Wachmann 3

3月5日   13.8等   視直径0.5分   DC 5   (40.0cm 反射 257倍)

透明度が悪く、限界に近いですが、かろうじて存在が分かります。1週間のうちに少し増光したかもしれません。

73P-C/Schwassmann-Wachmann 3

3月4日   12.4等   視直径1.1分   DC 6   (40.0cm 反射 144倍)

3月5日   12.1等   視直径1.0分   DC 7   (40.0cm 反射 144倍)

透明度は悪かったのですが、彗星はさすがに明るいです。日曜日は、見かけの中心核が分かるほど、強く集光して見えました。ですが、その割に淡く大きく広がっている気もします。これは、ダストの尾が発達しているためでしょう。

* 2006年2月27日(観測した彗星:7個)

茨城県・花立山天文台での彗星観測です。

月曜日は、未明のうちに前線が通過して、朝から晴れの予報だったのですが、実際には、夕方まで重たい雲に覆われていました。茨城県北部は何とか日が差していましたが、全天が薄雲に覆われていて、昼間のうちは、星が見えるかどうか不安な状況でした。

そのまま、夕方は薄雲を通しての観測となり、暗い星はまったく見えませんでした。その後、いったんは完全に曇りになったのですが、21時頃から2時頃までは、透明度の良い快晴と、薄雲に覆われる時が、交互に訪れました。特に1〜2時の透明度は抜群でした。

しかし、3時過ぎに薄雲が覆ってきた後は、次第に雲が厚くなり、明け方には曇りになってしまいました。金星すら見えず、注目のC/2006 A1は見ることができませんでした。

南東〜南の低空にはずっと厚い雲があったので、関東南部はずっと曇っていたのかもしれません。

C/2003 WT42 ( LINEAR )

13.4等   視直径0.6分   DC 6〜7   (40.0cm 反射 144倍)

かなり明るく、40cmだと楽しめる好対象です。透明度が良く、位置も高いので、楽に見えます。相変わらず、小さく、非常に集光が強いです。

P/2004 VR8 ( LONEOS )

14.0等   視直径0.7分   DC 4   (40.0cm 反射 144倍)

淡く小さい姿が見えます。1月より見やすくなったような気がします。

C/2005 E2 ( McNaught )

約9.9等   視直径1.5分   DC 3   (40.0cm 反射 144倍)

高度が高いうちから狙っていましたが、薄明終了前に雲に入ってしまい、薄明中の観測となりました。薄雲を通しての観測のため、たいへん見づらく、光度は不確かです。でも、淡く大きく広がった彗星の存在は、はっきり感じられます。

P/2005 XA54 ( LONEOS-Hill )

14.0等   視直径0.5分以下   DC 7〜8   (40.0cm 反射 144倍)

意外にも明るく、はっきり見えました。かなり小さく、一見すると微光星のように見えます。しかし、高倍率では、他の星はピントが合うと鋭い点光源になりますが、この天体だけはそうはなりません。集光は強いながらも、恒星状ではなく、彗星状のようです。初めは27.56日に観測しましたが、透明度が良くなってから再観測しました。3時間半の間に移動を確認しました。

29P/Schwassmann-Wachmann 1

12.1等より暗い   視直径0.8分   (40.0cm 反射 144倍)

薄雲のため、暗い星はまったく見えません。彗星の予報位置に、何か彗星があるようにも思えました。バーストした29Pが見えているのかもしれません。しかし、視野が白っぽいため、拡大しても確認できません。怪しいので、not seenで報告します。

73P-B/Schwassmann-Wachmann 3

14.4等   視直径0.5分   DC 4   (40.0cm 反射 144倍)

非常に暗いです。限界に近いのですが、なんとか見えました。

73P-C/Schwassmann-Wachmann 3

12.3等   視直径1.1分   DC 7   (40.0cm 反射 144倍)

ようやく見られましたが、これは明るい!すでに楽に見える明るさになっていました。1時台の抜群の透明度の空では、鋭い中心核が見えて、CCD画像を彷彿とさせるような尾を伸ばした姿がはっきり分かります。たいへん格好の良い、見栄えのする姿です。

* 2006年1月8日(観測した彗星:8個)

茨城県・花立山天文台での彗星観測です。

非常に透明度の良い快晴が、一晩中続きました。夕方は雲が頻繁に往来し、かつ、明るい半月がありましたが、雲が抜けた一瞬にはかなり良く見えました。さらに、夜半後に月が沈んだ後は、かなり暗い星まで見えるようになりました。

非常に寒い夜でしたが、望遠鏡は少し凍り付くだけで、霜が降りたりもしませんでした。たいへん乾燥していたようで、水蒸気が無い分、透明度が良かったようです。

夕方は、山頂から長大な雲の帯をたなびかせて、夕焼けに浮かび挙がった富士山の美しいシルエットが見えていました。夜明けの後は、西に佇む雪を纏った山並みが、たいへん素晴らしい眺めでした。

この他に、C/2005 N1も狙いましたが、ちょうど彗星のまわりだけ、GSCのデータが異常で、彗星の正しい位置を特定できず、ちゃんとした観測になりませんでした。最後まで、この彗星とはあまり縁がなかったようです。

(60558) 2000 EC98

14.4等   視直径0.5分   DC 3   (40.0cm 反射 257倍)

観測にでかける直前に、彗星であることが判明したばかりの天体です。IAUC 8656では17.5等と報告されていたのですが、観測に出かける当日の朝に、1月7.85日(UT)に14.8等と、かなり明るいという門田さんの報告を目にしましたので、急きょ、ターゲットに追加しました。

この天体は、日心距離は13AUよりも遠いというのに、何と眼視でも見えています! これは、眼視で見えた彗星としては、もしかしたら最遠なのではないでしょうか?

望遠鏡を向けるまでは、バースト直後の29Pのような、鋭く集光した姿を想像していました。しかし実際には、まったく予想と反して、かなり拡散した姿でした。まん丸で、惑星状星雲のような、つかみどころのない姿です。ふくろう星雲にそっくりです。

門田さんは、8日には、7日に比べてやや集光が弱くなったと報告しています。すでにバーストが収まりつつあるのでしょうか?

C/2003 K4 ( LINEAR )

13.0等より暗い   視直径0.8分   (40.0cm 反射 144倍)

半月にかなり近く、さすがに彗星は見えませんでした。近くの14.1等星は何とか見えていました。

C/2003 WT42 ( LINEAR )

13.7等   視直径0.5分   DC 6   (40.0cm 反射 257倍)

3ヵ月ぶりですが、ほとんど変わっておらず、あまり明るくなっていませんでした。集光は相変わらず強く、拡大した方が良く見えます。144倍だとDC=3くらいに拡散した印象に見えます。

C/2004 Q2 ( Machholz )

13.9等より暗い   視直径0.4分   (40.0cm 反射 257倍)

明け方の空に再び現れて来たので、狙ってみました。低空のため、極限等級は少し悪く、彗星は見えませんでした。

P/2004 VR8 ( LONEOS )

14.8等   視直径0.4分   DC 3〜4   (40.0cm 反射 257倍)

限界に近いのですが、非常に淡く小さい像が見えたように思います。比較星がUSNO-A2.0なので、実際はもう少し明るいように思います。

C/2005 E2 ( McNaught )

10.1等   視直径1.8分   DC 3〜4   (40.0cm 反射 144倍)

すっかり拡散して、以前の鋭い集光はまったく無くなってしまいました。3ヵ月ぶりですが、まったく別の彗星のようです。月明・低空とはいえ、あまりにも淡く見づらいので驚きました。とはいえ、さすがに40cmだとはっきり見えます。

29P/Schwassmann-Wachmann 1

13.1等より暗い   視直径0.7分   (40.0cm 反射 144倍)

半月に極めて近く、かなり見づらい条件です。彗星は見えていないと思いますが、拡散状の天体の判定はかなり難しいです。

73P/Schwassmann-Wachmann 3

14.7等より暗い   視直径0.4分   (40.0cm 反射 257倍)

15.2等で眼視で見えたとの報告があったので、少し期待していました。かなり暗い星まで見えていましたが、彗星は見えませんでした。

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