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生まれたばかりの星:MisV1147
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2000年 8月30日 | 12.3等 | |
8月31日 | 12.6等 | |
10月11日 | 13.5等 | |
10月13日 | 13.4等 | |
2001年 9月17日 | 14.2等 | |
10月 2日 | 12.5等 | |
10月 3日 | 12.3等 | |
10月31日 | 12.2等 | |
11月20日 | 12.2等 | |
11月21日 | 12.2等 |
2000年8月30日から31日にかけて、わずか1日で0.3等も暗くなっていました。 さらに、2001年9月だけ、異常に暗くなっており、しかも、わずか2週間後に は、およそ2等も明るくなっていました。
このような、大きな変化をしていることから、MisV1147は、俄然注目を集める ようになりました。
2002年1月以降、Mike Simonsenさん、Gary Poynerさん、Pavol A. Dubovskyさ んといった眼視観測者が、MisV1147のモニターを始めて下さいました。
Mike Simonsenさんは、MisV1147の観測星図を作り、John Greavesさんらとと もに、MSDG観測キャンペーンを実施し、MisV1147の観測を呼びかけて下さいま した。ちなみに、MISAOプロジェクトの星についてMSDG観測キャンペーンが実 施されたのは、MisV0380以来、2回目のこととなりました。
1月13日には、ぐんま天文台の衣笠健三さんが、スペクトル観測をして下さい ました。
1月14日には、Arne A. Hendenさんが、MisV1147と、その近くの星の、5色測 光をして下さいました。そして、MisV1147の比較星のカタログを作り、公開し て下さいました。
これらの観測データは、MISAOプロジェクトのホームページでも公開、または リンクをさせて頂いています。
これらの結果から、加藤太一さんは、MisV1147が、生まれたばかりの星の中で も、Herbig Ae/Beというタイプである可能性を指摘されました。このタイプの 星は、青い色をしています。
一方、John Greavesさんは、生まれたばかりの星の中でも、おうし座Tという 変光星と、同じタイプの星ではないかと推定されました。というのも、Arne A. Hendenさんの5色測光では、MisV1147の色はやや褐色であったためです。
さて、その後しばらく眼視でモニターされましたが、2002年7月中旬まで、ずっ と13.5等前後で、特に目だった変光もせず、MisV1147は静かな状態が続きまし た。
ところが、2002年7月20日に、突然、MisV1147が暗くなったのが、Mike Simonsenさんによって捉えられました。7月12日には13.3等だったのに、20日 には14.2等と、約1等も暗くなってしまったのです。しかし、次に8月3日に観 測した時は、また13.3等に戻ってしまっていました。
Pavol A. Dubovskyさんも、7月16日と26日に観測していましたが、特に暗くなっ た様子は、捉えられていませんでした。つまり、MisV1147が暗くなった姿を見 たのは、Mike Simonsenさんだけ、しかも7月20日の1夜だけでした。
その後、8月に入ると、MisV1147は逆に、13.0等前後と、これまでより少し明 るく見えるようになっていました。
ところが、8月28日になって、またも突然に、MisV1147が暗くなったのが、 Mike Simonsenさんによって捉えられました。今度は、Michael Poxonさんも、 8月30日に15.9等にまで暗くなっている姿を、確認しました。8月31日にも14.7 等以下でしたが、9月3日には、元通り13等台に戻っていました。
この2回目の減光に際して、加藤太一さんの提案を受けて、衣笠健三さんと、 藤井貢さんに、スペクトル観測をお願いしました。というのも、2002年1月の スペクトルは、MisV1147が明るい時のものなので、暗い時の様子を知ることが、 大切だったためです。しかし、悪天候と、MisV1147が暗すぎたことから、この 時はスペクトルが得られませんでした。
2002年9月になると、7月までの静かな状態が嘘のように、MisV1147は頻繁に減 光を繰り返すようになりました。
MisV1147が活発な変光を見せるようになったため、Michael Poxonさん、 Robert Stineさん、京都大学チームなど、多くの方々が、新たにMisV1147のモ ニターを始めて下さいました。
MisV1147の減光は、食のように、突然に暗くなり、またすぐに元に戻っている ようでした。そのため、この減光が周期的に起きているのかどうかが、注目さ れるようになりました。
2002年10月末には、加藤太一さんやChris Lloydさんによって、32日程度の周 期が指摘されました。Chris Lloydさんは、MisV1147が連星である可能性も指 摘しています。
これまでの様子を見ると、数日の間、15等程度まで暗くなるような、大きな減 光は、
2002年 8月30日頃 |
10月 1日頃 |
11月 1日頃 |
12月 7日頃 |
2003年 1月 6日頃 |
と、およそ1ヵ月ごとに起きているようです。
しかし、この他にも、14.5等まで暗くなる小さな減光や、数時間で元に戻って しまう短い減光も、何度も起きています。
また、ふだんの明るさも、一定していません。9月には13.5等でしたが、10月 には13.0等と、明るい状態が続きました。しかし、11月には逆に、14.0等と暗 くなってしまいました。12月には更に暗くなり、ほとんど14等以下の暗い状態 が続きました。
MisV1147は、準周期的な、非常に複雑な変光をしているようです。
さて、10月末の減光に際して、Arne A. Hendenさんが、再び、MisV1147の5色 測光をして下さいました。これで、1月のデータと併せて、明るい時期と、暗 い時期の、色の情報が得られた訳です。
その結果では、MisV1147は、暗い時期には、やや赤く色が変わっていました。 しかし、UバンドとBバンドの写りを比べると、逆に、わずかに青くなってい ました。加藤太一さんによれば、これは、Herbig Ae/Beというタイプの星に、 ときどき見られる現象だそうです。
また、9月19日にはぐんま天文台の衣笠健三さんが、再びスペクトル観測をし て下さいました。10月25日には藤井貢さんが、美星天文台の1m望遠鏡にて、 スペクトル観測をして下さいました。
加藤太一さんによると、これらのスペクトルからも、MisV1147は、おうし座T 型ではなく、Herbig Ae/Beというタイプの星であると言えるそうです。天文学 的には、前主系列星と呼ばれる星です。
Brian Skiffさんによれば、Arne A. Hendenさんの5色測光で、MisV1147の色 がやや褐色になっているのは、星間吸収で、見かけ上、赤くなっているだけだ そうです。その影響を除くと、MisV1147は、青い色の、B型星と考えられるそ うです。
John Greavesさんによれば、赤くなっている度合から考えて、星間吸収のため に、本来の明るさより、3等級も暗くなってしまっているそうです。つまり、 星間吸収がなければ、MisV1147は、10等ほどの明るさで見えたはずです。
John Greavesさんは、MisV1147は、若い星の集まりである、「ケフェウスOB1」 というOBアソシエーションのメンバーだと推測されています。ケフェウスOB1 は、地球から3.5キロパーセクの距離にあります。MisV1147がB型星だとする と、絶対光度は-3等ほどですが、この距離だと、星間吸収がなければ、10等で 見えることになります。これは、MisV1147の明るさと一致します。
なお、MisV1147の変光星としてのタイプは、
MisV1147は、発見されてから1年が経過しました。これまで、多くの方々に観 測して頂き、研究して頂きました。皆様に感謝致します。また、今後も多くの 観測が集まって、研究が進み、より多くのことが明かになることを期待してお ります。
余談ですが、2002年には、2つの明るい彗星が、MisV1147に接近しました。4 月18日には、4等級の池谷・張彗星が、57分角まで接近しました。8月5日には、 9等級のヘーニッヒ彗星が、2.5分角まで大接近しました。明るい彗星と、奇 妙な縁があるようです。
MisV1147とヘーニッヒ彗星(撮影:江崎裕介さん)
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