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3星の選択方法による写像関数の偏り

前述した通り、マッチングでは検出星像から3星を選んで三角形を作り、同様に 星表から読み込んだデータから3星を選んで三角形を作って、それらが相似であ るかどうかを調べる、という方法を繰り返す。 しかし、作り得るすべての三角形を検討する場合を考えると、拡大率の大きい写 像関数ほど求まりやすいというバイアスがかかってしまう。

例を挙げて説明しよう。 初期値として概略の画角を1度と指定したとする。 また、画像から明るい10個の星をマッチングに利用するとする。

ここで、実際に画角が1度であったと仮定する。 マッチングは画像4枚分の領域の星図のどこにあてはまるかを調べるため、2x2度 の範囲で比較用星図を作成する。 この面積は画像の4倍なので、10x4=40個の星をプロットすれば良いが、誤差を考 えて余裕を見て、100個の星をプロットすることにする。

ここで、実際に画角が2度であったと仮定すると、4x4度の範囲で比較用星図を 作成し、100個の星をプロットすることになる。 また、実際に画角が0.5度であったと仮定すると、1x1度の範囲で比較用星図を作 成し、100個の星をプロットすることになる。

初期値1度の場合には、2x2度の範囲で比較用星図を作り、そこに100個の星をプ ロットする。 システムは拡大率が0.5〜2.0の範囲で写像関数を探す。 この時、もし本当の画角が2度であれば、本来は4x4度の範囲で100個の星をプロッ トすべきなのに、1/4の範囲に100個プロットしているので、密度が4倍になって いる。 逆に本当の画角が0.5度であれば、密度は1/4になってしまっている。 即ち、本当の画角が0.5度だとペアになるべき星がプロットされている確率が1/4 に、逆に本当の画角が2度だとペアになるべき星がプロットされている確率が4倍 になっている。 そのため、拡大率の大きい誤った写像関数が求まりやすくなってしまう。 取り得る最小のものと最大のものとの比は1:16である。

ところで、写像関数を計算する際にマッチングに利用する星から作成し得るすべ ての三角形を検討することは時間的に不可能である。 そのため、何らかの方法で三角形の個数を減らすことになる。 しかし、ここでランダムに三角形を選んでしまうと、上記のバイアスよりはるか に大きなバイアスがかかってしまう。

同様に例を挙げて説明しよう。 画像の画角が指定値の2倍であった時(探索範囲と同じ面積)と、指定値どおり であった時(探索範囲の1/4の面積)とを比較する。

カタログデータの中から任意の3個を選んで三角形を作る場合を考える。 その三角形が探索範囲の中に収まる確率は当然1である。 これが探索範囲の1/4の面積に収まる確率は、1 x 1/4 x 1/4 = 1/16 となる(最 初の1個は任意、残り2つはその近傍に制限される)。 即ち、画像の画角が指定値の2倍であった時は、任意に作成した三角形すべてが マッチングに利用できるが、指定値どおりであった時は、16個中15個は画像自体 よりも大きく、マッチングには使えないことになる。

更に、画角が指定値の2倍であった時は、ほぼ探索範囲全体と画像が合致するが、 指定値どおりであった時は、画像が探索範囲のどこに位置するかの自由度あるい は曖昧性が、画角が指定値の2倍であった時の4倍ほどあることになる。 ということは、画像がどこに位置してもマッチングできるように、画角が指定値 の2倍であった時の4倍の個数の三角形を用意しておかなければならない。

よって、画像の画角が指定値の2倍であった時も、指定値どおりであった時 も、同定度にマッチングしやすくなるためには、カタログデータから3個の星 を選んで三角形を作る場合に、画角が指定値の2倍であった時に適した大きさ の三角形を1個作るのに対し、画角が指定値どおりであった時に適した大きさ の三角形は、16 x 4 = 64個作らなければならないことになる。

本システムで取り得る拡大率は0.5〜2.0なので、その比は1:4096ということにな る。

これらの問題点は、三角形を作成した時に、大きな三角形を作りやすいというこ とになる。 そのため、小さな三角形だけが作られるように、3星の取り方を制限した。 具体的には、マッチングに利用する星を最小全域木で結び、各ノードから数ステッ プで到達できるものの中だけで三角形を作成している。 最小全域木は、距離の近い2つの点から順に結合して構築する木のことで、アル ゴリズムが簡単であることから採用した。 しかし、実際には三角形の形に不要な制限がかかることがあり、改良の余地があ る。

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