MISAO Project

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まとめ

本稿では、天体画像検査システムPIXYの現時点での実装を紹介し、ノイズ の除去や正確な測光等、処理の完全自動化に向けた問題点について考察した。

これまでは、CCDで撮影されたFITS画像を扱って実験を行って来た。 FITS画像の多くは、輝星が飽和せずにいるため、近接二重星のピーク同士の間に は有意な窪みが存在した。 しかし、GIFやJPEGのような形式の画像では、星の多くが飽和しており、近接二 重星が融合しているケースも珍しくない。 その場合は、本稿で述べた手法ではまったく適応できない。 通常のパターンマッチング、もしくは[12]のような手法を用いて実験 を行ってみたい。

本システムはカタログを参照して光度の測定値を決定している。 しかし、カタログは通常0.1〜0.5等程度の誤差を含んでいるため、それ以上の測 定精度のあるなしの評価には不適である。 他の測光プログラムや論文で用いられているテストデータや基準星を用いて、本 システムの測光精度を評価したい。 また、画像を故意に劣化させ、測光精度がどの程度悪くなっていくのかを測定し て、ノイズに対する強さも評価する予定だ。 本稿では近接二重星や星雲中の恒星の測光データについて述べたが、その極端な 場合として球状星団がある。 他の論文では、球状星団中の恒星の測光を目的としている場合も多い。 この点からも、本システムの評価を行って行きたい。

更に、本稿では述べなかったが、現在のシステムではマッチングにかなりの時間 がかかっている。 予め入力される概略の撮影方向の誤差が大きいと、探索領域が広くなってしまい、 誤差の2乗に比例して時間がかかってしまう。 また、概略の撮影範囲はせいぜい30%の誤差で指定せねばならず、それ以上違う 可能性を考慮すると、更に数倍の時間がかかることになる。 画像と星図とのマッチングでは、平行移動、拡大縮小、回転の3つの演算を考慮 する必要がある。 ここで平行移動を考慮しない場合は、画像中の星像および探索領域内の恒星デー タを明るい順に並べ、ある星から次の星へのベクトルを系列にし、2つのベクト ル系列を比較することで、短い時間で拡大率と回転角を求めることができると考 えている。 しかし、実際には平行移動量が大きい場合が多く、この場合の時間短縮の良い方 法はいまだ検討中である。

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