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レベル補正された画像の平坦化と元画像の復元

ここでは、画像に対して行われ得る処理をレベル補正のみに限定して考える。

前述したとおり、レベル補正された画像は、背景レベルで単純に除算して平坦化 することはできない。 しかし、星像検出の際に閾値を小さくすると、中央部に偏ってノイズが現れて来 たことから、場所による感度の相違は、ノイズにも影響していることが分かる。 即ち、感度が高いほどノイズも大きくなる。 このノイズの大きさはレベル補正の影響を受けない。 例えば、中央の感度が周辺に比べて2倍あって、中央部の背景レベルが tex2html_wrap_inline87 、周辺部が tex2html_wrap_inline89 になったとする。 この画像全体から40を減算した場合、背景レベルはそれぞれ tex2html_wrap_inline91tex2html_wrap_inline93 となり、ノイズの大きさの比は2:1のままで、感度の比を保っている。 即ち、ノイズの分散傾向から、除算すべきフラットフィールド関数を得ることが できる。

現在のPIXYシステムで用いている手法は次の通りである。 まず、画像を適当な小領域に分割し、各領域内のピクセル値の標準偏差を求める。 具体的には、10x10の領域に分割している。 次に、画像内の座標 tex2html_wrap_inline95 に対するピクセル値の標準偏差を表すフラットフィー ルド関数を求める。 フラットフィールド関数は tex2html_wrap_inline97 の2次関数で近似する。

しかしこの方法では、明るい星が画像内で偏在している場合や、ダークノイズが 存在する場合に、それらの影響で誤ったフラットフィールドが求められてしまう ことがある。 例えば、下の図はCCD画像で元々かなり平坦なものだが、画像の上部や左側に偏っ て明るい星がある。


ウィルド第4彗星
中村彰正氏撮影
1997年5月31日

そのため、そのままフラットフィールドを求めると、以下のような極端なフラッ トフィールド関数が求められてしまう。 ここで、上の図が10x10の小領域毎のピクセル値の標準偏差を示したもので、明 るいほど標準偏差が大きい。 下の図がそれを2次関数で近似したフラットフィールドである。

この関数で補正をすると却って逆効果となる。 そこでPIXYシステムでは、予め画像全体のピクセル値の平均値 tex2html_wrap_inline99 と 標準偏差 tex2html_wrap_inline101 を求めておき、10x10の小領域毎に標準偏差を求める際に は、値が tex2html_wrap77 の範囲外のピクセルは恒星やダークノイ ズとして無視し、範囲内のピクセルのみを利用するようにした。 こうすることで、先のウィルド第4彗星の画像からも、以下のような妥当なフラッ トフィールドが得られる。

フラットフィールド関数が得られたら、全ピクセル値をフラットフィールド関数 で除算する。 この時、場合によってはフラットフィールド関数の値が0近くや負の値になって しまうため、画像全体でのフラットフィールドの最小値が1になるように底上げ している。 ここでスカイフィールド(背景レベル)を求めるが、一般にある一定値にはならな いため、これを2次関数で近似する。 レベル補正されていない画像に対してこれらの処理を行うと、ここでスカイフィー ルドが平面として得られるはずである。 このことから逆に、どのようなレベル補正を施されているかを算出し、補正前の ピクセル値を得る。 これを先のフラットフィールド関数で除算すると、平坦な画像が得られる。 ここでスカイフィールドを定数として求め、閾値を越えるものを星像として検出 する。

これらの処理を定式化すると、次の通りになる。 レベル補正前の元画像のピクセル値をpとする。 レベル補正した後の画像のピクセル値 tex2html_wrap_inline105 は、

displaymath79

と表される。 ここでa,bは定数である。 PIXYシステムでは、p,a,bは未知で、 tex2html_wrap_inline111 だけが与えられる。 ノイズの分散傾向から求めたフラットフィールド関数をFとする。 フラットフィールド関数で除算した後に得られる画像を tex2html_wrap_inline115 とすると、そのス カイフィールドは、

displaymath80

となる。 ここで、 tex2html_wrap_inline117 は元画像(の定数a倍)をフラット補正した結果 得られるスカイフィールドであり、平面即ち定数となる。 bも定数である。 また、 tex2html_wrap_inline123Fはそれぞれ関数として既知である。 そこで、各座標 tex2html_wrap_inline127 に対して tex2html_wrap_inline129Fを代入し、最小2乗法によって定 数 tex2html_wrap_inline133bを求める。 その結果、元画像(の定数a倍)のピクセル値は

displaymath81

それを平坦化した画像は

displaymath82

として得られる。 tex2html_wrap_inline139 とスカイフィールド tex2html_wrap_inline141 の差が閾値よりも大 きければ星像と見做す。

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