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PIXYシステムに於ける星像検出

PIXYシステム([1])に於ける天体画像からの星像検出の方法は、 背景レベルに対してある閾値を越えるものを星と見做す、という単純なものであ る。 しかし、一般に写真を撮影した時、中心が明るく、周辺が暗くなる周辺減光とい う現象が起こるため、天体画像は中央部が明るく、周辺部が暗いというものが多 い。 従って、背景レベルは画像全体で一定値を取るのではなく、中央部が盛り上がっ た曲面となる。 [2]では、この曲面を画像内の各ピクセルの座標 tex2html_wrap_inline75 の2次関数 で近似し、これをフラットフィールド関数と称した。 そして、この背景レベルと各ピクセル値との差の標準偏差を2倍を閾値として、 星像検出を行った。

ところで、冷却CCDで天体画像を撮影する場合にも、中央部が明るく周辺部が暗 くなるという傾向は生じる。 この場合、何らかの方法で均質な平面光源を作り、各ピクセルが等しい光量を受 け取るようにして、フラットフィールドと呼ばれる画像を予め撮影しておく。 そして、天体の画像を撮影するごとにこのフラットフィールドで除算を行い、画 像を平坦化する。 例えば、画像の中央と周辺で、フラットフィールドの値が20と10になったとする。 この場合は中央の感度が周辺に比べて2倍であることを意味している。 即ち、画像の中央部に写った光量1000の星と、周辺部に写った光量500の星は、 実際には同じ明るさであることになる。 そこで、全体をフラットフィールドで除算すれば、この星の光量は中央部でも周 辺部でも等しく50となり、平坦な画像が得られることが分かる。

本稿で想定しているケースでは、天体画像があるだけなので、実際にフラットフィー ルドを撮影して平坦化を行うことは不可能である。 しかし、画像の背景レベルは画像内の場所による感度の傾向を表している。 とすれば、この背景レベルをCCD撮影時のフラットフィールドの代わりに利用し、 画像を背景レベルで除算すれば、画像の平坦化が行えるようにも思えるかもしれ ない。 実際、CCDで撮影された生画像に対しては、この方法で平坦化も可能である。 しかし、レベル補正等の処理を施された画像については、この方法は適用できな い。 例えば、中央の感度が周辺に比べて2倍あって、中央部の背景レベルが100、周辺 部が50になったとする。 この画像全体から40を減算してしまった場合、背景レベルはそれぞれ60、10とな り、その比は6:1となって、もはや感度の比を表してはいない。 更に、PIXYシステムは多数の人々の多様な画像を対象とする。 そこにはネガをフィルムスキャナーで読み取ったものや、プリントされた写真を スキャナーで取り込んだもの等も含まれる。 これらは意図的に画像処理していなくても、結果的にレベル補正等が施されたの と同じ状態になってしまっている。 このような画像では、背景レベルが0に近くなっている場合も多く、無理に除算 による補正を行うと、過修正となってしまう。 例えば先の例で、中央部と周辺部に同じ明るさの星が写っていて、元々の光量が 500と250であったとする。 40を減算したため、光量は460と210になっている。 背景レベルから比は6:1となったため、除算をすると、光量は77と210となり、同 じ明るさの星の差が却って広がってしまった。 そのため、[2]では除算による平坦化を行わないことにした。

しかし、この方法には欠点がある。 まず、同じ明るさの星が写る場所によって違った明るさに見えてしまう問題が残っ たままである。 さらに、感度の高い中央部ではノイズの影響も大きくなり、周辺部では小さくな るため、中央部でノイズが現れないように星像検出の閾値を定めると、周辺部の 微光星が消えてしまうという問題もあった。 以下の例では、上の画像から検出した星像が中央の画像、さらに閾値を下げた場 合が下の画像であるが、同じ閾値でも中央部ばかりノイズが現れて来てしまうこ とが分かる。


カシオペヤ座新星1995
吉田誠一撮影
1995年12月21日 19:02 (1分)
茨城県藤代町
25cm F6.3 シュミットカセグレン 直焦点
コニカカラーGX3200

そこで、次節では除算による平坦化を行う手法を考える。

尚、[2]では背景レベルを曲面と見做すことで画像が平坦でない影 響をキャンセルしようとしていたため、背景レベルをフラットフィールド関数と 呼んでいた。 しかし、今後は除算による補正を行うための関数をフラットフィールド関数、背 景レベルをスカイフィールドと呼んで、両者を区別することにする。

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