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天体画像の現状と問題点

周知のとおり、天体撮影の主流は、ここ数年で銀塩写真から冷却CCDカメラに急 激に変わってきた。

写真と違って、CCDは量子効率が良いので露出時間が短くて済む。 また、結果がデジタルデータとして得られるため、場所もとらず、画像の劣化も ない。 更に、CCDはフィルムと違ってメディアの再利用が可能であり、画像の量産が行 ないやすい。 それだけでなく、CCDなら撮影したその場で画像を見られるため、失敗した場合 のやり直しがきく。 また、フィルムのように歪曲せず、入光と出力に直線性があるので、同じ観測で も写真よりも高精度の結果が得られる。 このようにCCDは写真に比べて利点が多く、現在の主流となっている。

ここで重要なことは、CCDによって天体画像が量産される体制ができた、という ことである。 実際、世界中の天文台では種々の観測やパトロールのために膨大な量の画像が撮 影されている。 また、個人でも冷却CCDカメラを利用する人が増え、写真の頃とは比べものにな らない程多くの画像が生成されている。

画像の数が膨大になれば、その中に新天体が偶然写っている可能性もそれだけ高 くなり、新天体の発見数も格段に増加する、と考えるのが自然である。 ところが、確かに新天体の発見数は増えているのだが、それらはCCDの簡便性に よってスカイサーベイプロジェクトが増えたためで、偶然に発見される新天体の 数はそれほど増えてはいない。 実際、撮影した自分のCCD画像に新天体が写っていないかどうか必ずチェックし ているという人はほとんどいない。 即ち、多数の未知の天体が膨大な画像の中に埋もれていると予想される。 これは非常にもったいないことだ。

この事態は主に次の2つのことが原因である。

  • 画像の管理が各天文台や個人ごとに独立して行われている
    画像の中に新天体が写っているかどうかをチェックしている人は僅かである。 チェックしている人も自分の画像をチェックするだけであり、他人の画像まで は見ない。 もし他人の画像もチェックしようとしても、多くの天文台の画像は非公開か、 WWW等で公開されていても利用するための手順が繁雑であったりするため、現実 的ではない。 個人毎の画像はそもそもMOディスク等のようなネットワーク的に断絶している場 所にあって利用できないケースが多い。 即ち、大部分の画像はチェックされずに死蔵されてしまっている。
  • 適当な処理プログラムがない
    自分の画像のチェックを行ないたいと思っても、画像から星像を検出し、星図 とマッチングさせ、既存天体をすべてチェックすることは一般にはかなり困難 である。 既に行なっている人の処理方法が一般に広まることは極めて稀で、各自がゼロ からすべてを身につけていかなければいけない。

本研究の目的は、ネットワーク環境を利用して、誰でも自分の画像に新天体が写っ ていないかどうかをチェックできるようにし、死蔵される画像をなくすことであ る。

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