彗星の広場 (1996年1月)

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Updated on Dec. 27, 1995
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  • 1. 今月の彗星ランキング
  • 2. 今月の彗星の解説
  • 3. 今月の位置推算表
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    1. 今月の彗星ランキング

    1996年1月に見える彗星のランキングはこのようになりました。

    今月は眼視では本田-ムルコス-パジュサコバ彗星とシュワスマン-ワハマン第 3彗星が見える範囲にいますが、本田-ムルコス-パジュサコバ彗星は条件が悪 く、しかも光度が急落していくため、見るのは難しいかもしれません。シュワ スマン-ワハマン第3彗星の方も10等以下と暗めです。一方、写真では13〜14 等程度の彗星が多く見られます。今月は今まで明るかった彗星もこれから明る くなる彗星も共に14等という、新旧交替の月ですね。

    ところで、現在バーストしていると思われる彗星に、シュワスマン-ワハマン 第3彗星、ジャクソン-ネウイミン彗星、ダレスト彗星の3つがあります。い ずれも既に近日点を通過しており、今後は暗くなる一方ですが、いつまでもつ か注目です。

      第1位  本田-ムルコス-パジュサコバ彗星(45P) 7→11等
    第2位 シュワスマン-ワハマン第3彗星(73P) 10→11等
    第3位 ジャクソン-ネウイミン彗星(58P) 12等→13等
    第4位 チュリュモフ-ゲラシメンコ彗星(67P) 12.5等
    第5位 デビコ彗星(122P) 13→14.5等
    第6位 ダレスト彗星(6P) 13→14等
    第7位 コップ彗星(22P) 15→13等
    第8位 ブラッドフィールド彗星(1995Q1) 13→15等
    第9位 シュワスマン-ワハマン第1彗星(29P) 14等
    第10位 ガン彗星(65P) 14等
    第11位 ウィルド第4彗星(116P) 14等
    第12位 コマ-ソラ彗星(32P) 15等
    第13位 ウエスト-ハートレー彗星(123P) 16等
    第14位 ラインムート第1彗星(30P) 16等
    第15位 キロン彗星(95P) 16等

    また、惜しくも太陽に近いために見えませんが、明るさだけは明るいはずの彗 星に次のようなものがあります。

      番外1  ヘール-ボップ彗星(1995O1) 10等
    番外2 ポン-ウィンネッケ彗星(7P) 13等

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    2. 今月の彗星の解説

    2.1. 本田-ムルコス-パジュサコバ彗星(45P)

    1996年1月の第1位は、先月に引き続き本田-ムルコス-パジュサコバ彗星 (45P/Honda-Mrkos-Pajdusakova)です。先月までは夕空低く見えていましたが、 12月25日に近日点を通過して、今月下旬には明け方の空にまわってきます。

    今回帰では予想よりも少し遅れて、10月に初めて確認されました。その時の光 度は21等と、明るさも予想よりも4等程度暗いものでした。その後11月の中旬 には16等でとらえられていますが、この時点でも予想より2等程度暗いままで した。ところが12月に入って、中旬には8〜9等と、ここにきていっきに増光し てきました。その後は少し落ち着いて、金星と接近したクリスマスの頃に私が 観測したところ、8等程度でした。これらの今回帰の観測から光度式を計算し てみると、

    m1 = 16.0 + 5 log Δ + 30 log r

    となります。logrの係数が30になっていて、この彗星の近日点通過前後で急 激に増減光する、という特徴をよく表しています。

    さて、彗星はクリスマスの頃に金星と20′にまで接近した後、急速に太陽に近 づいて夕空から姿を消します。今月はしばらくこの彗星を見ることはできませ んが、1月26日に、今度は明け方の空に再びその姿を現します。その時の光度 は既に10等になってしまっているはずです。ですが、この彗星の光度は±2等 程度は違ってくる可能性があります。明るければ8等、暗ければ12等で明け方 の空に現れるでしょう。

    また、この頃彗星は地球に約0.2天文単位にまで接近しています。この後彗星 は2月4日に0.17天文単位まで接近し、2月26日まで0.3天文単位以内をキープす るため、天空上をたて座→へび座(尾)→へびつかい座→へび座(頭)→おとめ座 と急速に移動し、また観測条件も日に日に良くなります。但し、明るさの方は 逆で、2月に入って、上旬に11→12等、中旬に13→15等、下旬に16→17等と急 落していきます。事実上、2月半ばで観測期間は終了となってしまうでしょう。

    彗星は1月28日の朝はへびつかい座ν星(3.3等)に 1°まで、2月4日にはへびつ かい座δ星(2.7等)に 2°まで接近しますので、視野に導入する際の目印とな るでしょう。また、2月2日にはへびつかい座の球状星団M10、M12に 3°まで、 8日には球状星団M5に 3°まで接近します。全体的に言って、1月下旬から2月 上旬まではへびつかい座の中を横切っていくため比較的明るい星が近く、導入 はしやすいでしょう。しかし、2月8日頃からはうしかい座とおとめ座の間とい う星の少ない領域に位置するため、探すのは難しくなります。さらに、2月5日 が満月でもありますので、彗星の光度から考えても、実質的にこの彗星を観測 できる期間は明け方に現れてからの10日間程しかない、ということになります。 新月は19日ですが、既に15等になっているでしょう。

    2.2. シュワスマン-ワハマン第3彗星(73P)

    10月上旬に6等までバーストしたシュワスマン-ワハマン第3彗星 (73P/Schwassmann-Wachmann 3)は、11月にも中旬に7等、下旬に8等、12月に入っ ても8.5等と引き続き明るく見えています。大バーストしてから、比較的長い 間バーストしたままの光度を保っています。そこで、バースト後の光度データ のみをつかって光度式を計算してみると、

    m1 = 5.6 + 5 log Δ + 12.0 log r

    となります。この式をもとに今月の予報を出してみると、彗星は10等から11等 とゆっくりと減光していくことになります。ですが、いつバースト状態から元 に戻ってもおかしくない時期ですので、この彗星の光度には注意が必要です。

    今月は彗星はやぎ座からみずがめ座へ移動していき、あいかわらず夕方の南西 の空に見えています。ここのところ探しにくい位置にいましたが、1月8日には みずがめ座δ星(3.3等)に約30′にまで接近します。この頃、7日から10日くら いまでは、この星を目印に探すことができます。ちょうど6日が満月ですが、 夕空ですので影響はないでしょう。

    この彗星の観測期間は西空に沈む来年の2月中旬まで続きます。その頃彗星は、 現在の光度を保ったままだとすると11.5等ですが、元の明るさに戻っていれば 18等になっているはずです。観測終了の頃、1月下旬から2月上旬にかけては、 夕空で金星と土星が接近しているそのすぐ左側に8°くらい離れて見えていま す。

    2.3. ジャクソン-ネウイミン彗星(58P)

    当初はそれほど明るくなるとは思われていなかったジャクソン-ネウイミン彗 星(58P/Jackson-Neujmin)ですが、10月6日に近日点を通過した後も、予想外の 増光を続けています。近日点通過直前の9月には14等から13等にしか明るくなっ ていませんでしたが、通過後は10月に12等、そして11月にはなんと10〜11等級 にまで明るくなりました。近日点通過前の観測からの予報では11月には14〜15 等のはずですので、4等程明るいということになります。しかも、12月に入っ ても11日に11等と明るい状態を保っています。実際には太陽から遠ざかってい ますので、彗星の本体は増光を続けている、ということになります。明らかに バーストしています。

    今月も彗星は夕方の南の空に見えていて、くじら座を北上していきます。光度 は12→13等と減光していくと思われますが、現在までにいまだ減光する様子を 見せていないので、光度はまったく予想がつきません。うまくいけば10〜11等、 元に戻れば14〜16等程度かもしれません。ですが、シュワスマン-ワハマン第 3彗星も長くバーストしていますので、こちらも期待したいものです。また、 同じくじら座にはこれまた予想よりも明るい状態を保っているダレスト彗星も 見えています。

    彗星は12月28日にはくじら座ζ星(3.7等)に 1°弱まで接近しますので、12月 の26〜30日はこの星を目印に導入することができます。但し、すぐ近くに半月 もありますので、見るのは難しいかもしれません。その後1月になると、近く に明るい星がないので探しにくくなります。下旬から2月の上旬にかけてはく じら座の頭のすぐ下を通過しますので、α星(2.5等)、γ星(3.5等)などを頼り に再び見つけやすくなります。

    2.4. チュリュモフ-ゲラシメンコ彗星(67P)

    今月17日に近日点を通過するチュリュモフ-ゲラシメンコ彗星 (67P/Churyumov-Gerasimenko)が最も明るい時期を迎えています。今回帰では7 月3日に17等で初めて捕らえられた後、8月から10月にかけて14等、11月に13等 と順調に増光している様子が観測されています。彗星は今月は夕方の南の空で、 うお座の中を横切っていきます。光度は今月から来月にかけて12.5等を保つで しょう。その後は、彗星は3月に14等、4月に15等、5月に16等、6月に17等と減 光して見えなくなって行きます。

    彗星は今月の初旬には土星のすぐ左側にいますがだんだん離れていきます。中 旬の15日から21日頃にはうお座δ星(4.4等)、ε星(4.3等)に接近し、これを頼 りに導入できます。また、下旬の30日から翌2月の3日にかけてはうお座η星 (3.6等)に近く、この星が目印となります。今月はうお座の中にいて、比較的 見つけやすい日が多いです。来月は彗星はおひつじ座に移動します。

    2.5. デビコ彗星(122P)

    9月に再発見されてから、10月にかけて6等に達した周期74年の大物デビコ彗星 (122P/de Vico)は予想よりも減光が急なようです。夕空にまわってきた11月に は、上旬には7→8等でしたが、中旬には10等になってしまいました。再発見の 頃からの観測データから光度式を求めてみると、

    m1 = 7.9 + 5 log Δ + 13.0 log r

    となります。logrの係数が10よりも大きく、減光が少し急であることを表し ています。

    さて、彗星は先月下旬から明け方の空のごく低空に13等で見えるようになって いるはずです。今月は徐々に観測条件がよくなっていきますが、明るさの方は 13→14.5等と暗くなっていくでしょう。場所的にもヘルクレス座の頭とへびつ かい座の頭の間で、あたりには明るい星もなく、みつけるのは難しいでしょう。

    2.6. ダレスト彗星(6P)

    7月27日に近日点を通過したダレスト彗星(6P/d'Arrest)は、8月に8等になった 後、10月中旬に9〜10等、11月中旬に11等と、比較的長い間明るい光度を保っ ています。近日点通過前のデータから求めた光度式を使うと、同じ頃彗星は17〜 19等にまで減光しているはずですが、この彗星はもともと近日点通過の前後で 増光・減光の仕方がまったく異なり、通過後の方がかなり明るいという傾向を 持っていましたので、まあ妥当な光度変化をしている、と言えるでしょう。そ こで、最も明るくなった8月中旬以降のデータのみから光度式を求めてみると、

    m1 = 8.3 + 5 log Δ + 10.0 log r

    となります。この式を用いて今月の予報を出してみると、13→14等と減光して いくことになります。ただ、彗星はそろそろ急減光する可能性もありますので、 注意が必要です。

    彗星は夕方南の空で、ジャクソン-ネウイミン彗星を追いかけるようにくじら 座を北上していきます。12月31日にはτ星(3.5等)に 2°、1月14日にはζ星 (3.7等)に 2°まで接近しており、中旬までは見つけやすい状態が続きます。 中旬以降は明るい星が近くになくなって、探しにくくなります。

    2.7. コップ彗星(22P)

    1996年7月2日に近日点を通過するコップ彗星(22P/Kopff)が今月から急激に増 光してきます。現在彗星は明け方のてんびん座にいて、1月中に15等から13等 にまで明るくなってきます。

    彗星はこの後2月には13→12等、3月に11等、4月には10→9等、5月に8等と増光 して、6〜7月にはほぼ衝の位置で7等になります。近日点通過の頃に衝と、こ の彗星としては最良の条件で観測できます。今年回帰を予想されている彗星の 中で最も期待できるものです。その後は年末でもまだ14等と、今年1年中観測 できます。その後も1997年2月に16等で夕空に沈むまで長期に渡って観測でき る彗星です。

    彗星は2月1日にはてんびん座γ星(3.9等)に30′、5日にはη星(5.4等)に 1°、 9日にはθ星(4.2等)に1.5°まで接近しますので、1月30日から2月11日くらい まではこれらの星を頼りすれば探しやすいでしょう。

    尚、彗星はこれからしばらくガン彗星とともに動いていきます。来月2月21日 には、ガン彗星と約30′にまで接近します。この時の明るさはコップ彗星が12 等、ガン彗星が13等です。もう少し明るいといいのですが、写真では狙い目で しょう。この前後、15日から25日くらいの間は両彗星は 1°程度の距離を保っ ていますので、コップ彗星がガン彗星を追い抜いていく様子を連続写真で記録 することもできるでしょう。

    2.8. ブラッドフィールド彗星(1995Q1)

    8月にオーストラリアで突然肉眼彗星として発見されたブラッドフィールド彗 星(C/1995Q1 Bradfield)は、8月31日に近日点を通過した後、日本からは9月20 日に6等で見え始めました。そして9月中は7等、10月には7.5等から9.5等まで 減光して、11月下旬には11等にまでなっています。

    彗星は今月は夕方の北の空高く、天頂付近に見えていて、きりん座→カシオペ ア座→ペルセウス座と移動していきます。光度は13等から15等と急落していき ます。3月には18等にまでなるでしょう。そろそろ観測は終了です。

    尚、彗星は1月1日にはカシオペア座のW字の一番左上のε星(3.4等)に 1°ま で接近しますので、この前後3日間くらいはよい目印となります。

    2.9. シュワスマン-ワハマン第1彗星(29P)

    バースト彗星として有名なシュワスマン-ワハマン第1彗星 (29P/Schwassmann-Wachmann 1)の観測条件がよくなってきました。現在彗星は しし座の足もとにいて、今月は未明の2:00頃に南中します。昨年の秋から観測 可能となっていましたが、11月には13.5等と、やはり明るい状態で見えていま した。ここ数年の状態からすると、この程度の明るさを平常光度と思っていた 方がいいようです。

    尚、彗星は今年6月に西空に沈むまで、ずっとししの足もとに位置しています。 また、光度も不安定ながら13〜14等を保つでしょう。

    2.10. ガン彗星(65P)

    1996年7月24日に近日点を通過するガン彗星(65P/Gunn)の観測条件もよくなり 始めました。現在彗星はコップ彗星とともに、明け方の東の空で、てんびん座 を横切っています。

    彗星は1月24日にはてんびん座γ星(3.9等)に 1°、28日にはη星(5.4等)に 1°、 2月6日にはθ星(4.2等)に1.5°まで接近します。1月22日から2月9日までは、 これらの星を頼りに導入できるでしょう。さらに、2月21日にはコップ彗星と 約30′にまで接近します。その時の明るさはコップ彗星が12等、ガン彗星が13 等です。この前後15日から25日くらいの間は約 1°程度の距離を保っています。

    この彗星は軌道の形が円に近いので、近日点通過の前後数年の間見ることがで きます。既に1995年前半に15〜16等で観測されています。今月はそれよりも 1等ほど明るく、14等程度でしょう。これから徐々に増光し、近日点通過の頃 はほぼ衝の位置で12等にまで明るくなります。その後は11月に14等で西空に沈 み、今シーズンの観測期間は終了します。が、また1997年には4月頃に15等で 見え始め、1998年2月に17等になるまで観測できます。

    2.11. ウィルド第4彗星(116P)

    1996年8月31日に近日点を通過するウィルド第4彗星(116P/Wild 4)がそろそろ 明るくなり始めます。現在彗星はふたご座のポルックスのそばで衝になってい て、一晩中観測できます。光度は14等です。

    この彗星も長期に渡って観測できる彗星です。まず今年は7月に西空に沈むま でずっと13〜14等で見えていて、その後1997年の3月に再び明け方の空に15等 で現れます。そして1997年の夏まで15〜16等で見えているでしょう。

    尚、彗星は今月1月18日にふたご座のポルックスに30′弱程度まで接近します。 この前後10日間くらいは 1°以内に接近していますので、写真に撮る時には導 入の目印になるでしょう。また、来月2月7日の夕方には、ふたご座のι星(3.8 等)とほんの 5′にまで接近し、この前後10日間ほどは、この星が目印となり ます。但し、5日が満月ですので、見るのは厳しいかもしれません。

    2.12. コマ-ソラ彗星(32P)

    6月10日に近日点を通過するコマ-ソラ彗星(32P/Comas Sola)もそろそろ明るく なってきます。既に昨年の秋に19等から16等にまで明るくなってきている様子 が観測されています。現在彗星は夕方の空にあり、うお座で15等です。

    彗星は1月26日にはうお座η星(4.8等)に20′まで接近しますので、24日から28 日までは導入の目印となります。但し、この日は約 3°離れたところに半月が 輝いていて、実際に見るのは難しいでしょう。また、2月7日にはο星(4.3等) に10′弱にまで接近しますが、この日はちょうど満月となってしまいます。

    この後彗星は4月に西に沈むまで観測できます。その頃には14等でしょう。残 念ながら近日点通過の頃は太陽に近く観測できません。近日点通過後には、11 月に再び明け方の空に姿を現します。しかし、その時の光度は17等程度でしょ う。さらに、昨年の秋の観測によると、思ったよりも急激な光度変化を見せて いるので、さらに暗く18〜19等程度になってしまっているかもしれません。

    2.13. ウエスト-ハートレー彗星(123P)

    1990年に発見されたウエスト-ハートレー彗星(123P/West-Hartley)の初回帰で す。近日点通過は5月ですが、衝の位置にいる今月から来月にかけてがもっと も明るい時期です。既に昨年の秋に18等で検出されています。ほぼ予想どおり の明るさといっていいでしょう。

    現在彗星は冬の北の空高く、ふたご座のポルックス・カストルとぎょしゃ座の カペラのちょうど真中あたりにいて、16等です。彗星が暗い上、あたりには特 に目印となるような星もないので、見つけるのはかなり困難でしょう。彗星は 春までずっと同じ位置にいます。

    2.14. ラインムート第1彗星(30P)

    既に昨年の9月3日に近日点を通過したラインムート第1彗星(30P/Reinmuth 1) が明け方のおとめ座で16等で見えています。既に近日点通過前の昨年2月に17 等で観測されています。近日点通過の頃は太陽に近く見えませんでしたが、11 月頃から再び明け方の空にまわってきています。光度の方は2月よりは1等程明 るいはずですが、それでも16等程度でしかありません。また、既に近日点を通 過していますので、これから徐々に減光していきます。

    彗星は今月11日におとめ座ι星(4.1等)に20′、31日にη星(3.9等)に 1°まで 接近しますので、この前後5日間ほどはこれらの星を頼りに導入できるでしょ う。

    2.15. キロン彗星(95P)

    小惑星から彗星になったキロン彗星(95P/Chiron)が来月2月にいよいよ初めて の近日点通過を迎えます。とはいっても、近日点距離が8.5AUもあるので、特 に急に明るくなるという訳ではなく、あいかわらず16等程度でしょう。彗星は 現在明け方に見えていて、おとめ座でスピカのすぐ右に10°ほど離れた位置に います。が、すぐ近くには明るい星がなく、正確に導入するのは難しいでしょ う。この状態は5月まで続きます。

    近日点距離が大きいため、彗星はここ数年間はほぼ同じ光度で観測することが できます。今シーズンは8月に西に沈むまでずっと16等でしょう。その後太陽 と合になり、また12月頃に明け方にまわってきます。そしてまた来シーズンは 春に衝となり、16等で観測されるでしょう。

    2.16. ヘール-ボップ彗星(1995O1)

    1995年7月に発見された、世紀の大彗星ヘール-ボップ彗星(C/1995O1 Hale-Bopp) です。発見以来ずっといて座で10等級で見えていましたが、昨年 11月から西空に沈み、しばらく観測はお休みです。次に見えるのは3月中旬で、 明け方の空に8.5〜9等で姿を現します。その時、明け方の空で、天王星・海王 星・ヘール-ボップ彗星・木星が左からこの順で一直線に並んでいますが、天 王星・海王星は高度が低く、見えにくいでしょう。

    ところで、この彗星は発見の2年以上前の1993年4月27日に、オーストラリアで 18等で写真に写っていたのがみつかっています。ところが、現在雑誌などでよ くみかける光度式

    m1 = -2.0 + 5 log Δ + 10.0 log r

    を用いてこの日の予想を出してみると、14.7等となります。また、1991年には 予想光度は16〜17等なのに、写っているはずの写真にはその姿を確認できなかっ たそうです。つまり、この頃に比べて、最近のこの彗星の光度は3〜5等程度明 るすぎる、ということになります。その間の観測がないためこれらの情報から この彗星の今後を占うことはできませんが、現在バーストして明るく見えてい て、今後元の光度に戻り、ごくふつうの肉眼彗星で終わる可能性もあります。 そう言えば、現在彗星は太陽から6天文単位程のところにいますが、同じよう な距離でシュワスマン-ワハマン第1彗星がバーストを繰り返しているのは有 名です。とはいえ、実際にはまだなんとも言えない、というのが本当です。春 に明け方でどういう姿を見せるのか、期待しましょう。

    2.17. ポン-ウィンネッケ彗星(7P)

    1989年以来、実に21回目の回帰を迎えたポン-ウィンネッケ彗星 (7P/Pons-Winnecke)が今月近日点を通過します。しかし太陽に近いため、全く 見ることができません。今回の回帰は条件が最悪で、彗星はこの後も太陽を追 いかけるように動いていきますので、ようやく明け方の東の空低く見え始める のは7月中旬となります。その頃には既に18等となってしまいますので、実質 今回帰の観測はできないことになります。

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    3. 今月の位置推算表

    3.1. 本田-ムルコス-パジュサコバ彗星(45P)

    45P/Honda-Mrkos-Pajdusakova
      年 月 日      α         δ        r     Δ    Elong   m1
    1995 12 29   20 29.91   -20 34.1    0.536  0.595    27    6.7
    1996  1  8   20 19.35   -18 47.4    0.599  0.410    15    7.4
    1996  1 18   19 31.22   -16  9.1    0.714  0.274     7    8.8
    1996  1 28   17 53.74    -9 36.2    0.850  0.190    40   10.3
    1996  2  7   15 33.10     2 51.6    0.994  0.171    87   12.1
    1996  2 17   13 30.70    12 51.0    1.137  0.218   128   14.4
    1996  2 27   12 15.95    16 51.4    1.276  0.309   154   16.6
    

    3.2. シュワスマン-ワハマン第3彗星(73P)

    73P/Schwassmann-Wachmann 3
      年 月 日      α         δ        r     Δ    Elong   m1
    1995 12 29   22 23.54   -19 24.3    1.611  1.975    54    9.5
    1996  1  8   22 51.77   -16 11.2    1.706  2.134    51   10.0
    1996  1 18   23 17.14   -13  5.8    1.800  2.298    48   10.4
    1996  1 28   23 40.31   -10  9.8    1.893  2.464    44   10.9
    1996  2  7    0  1.74    -7 24.3    1.984  2.630    40   11.2
    1996  2 17    0 21.79    -4 49.1    2.074  2.791    35   11.6
    1996  2 27    0 40.74    -2 24.2    2.163  2.948    31   11.9
    

    3.3. ジャクソン-ネウイミン彗星(58P)

    58P/Jackson-Neujmin
      年 月 日      α         δ        r     Δ    Elong   m1
    1995 12 29    1 51.18    -9 30.9    1.685  1.144   104   12.0
    1996  1  8    2 10.83    -6 25.4    1.749  1.277   100   12.4
    1996  1 18    2 30.10    -3 29.1    1.817  1.421    96   12.7
    1996  1 28    2 49.11     0 44.4    1.887  1.574    92   13.1
    1996  2  7    3  7.94     1 47.2    1.959  1.734    87   13.4
    1996  2 17    3 26.62     4  4.8    2.032  1.902    82   13.7
    1996  2 27    3 45.22     6  8.3    2.106  2.074    78   14.0
    

    3.4. チュリュモフ-ゲラシメンコ彗星(67P)

    67P/Churyumov-Gerasimenko
      年 月 日      α         δ        r     Δ    Elong   m1
    1995 12 29   23 55.73    -1 20.7    1.321  1.037    81   12.5
    1996  1  8    0 22.78     2 59.7    1.305  1.058    79   12.5
    1996  1 18    0 52.19     7 27.4    1.300  1.085    77   12.5
    1996  1 28    1 23.86    11 53.3    1.306  1.119    76   12.6
    1996  2  7    1 57.60    16  7.0    1.323  1.163    75   12.7
    1996  2 17    2 33.12    19 57.9    1.349  1.217    74   12.9
    1996  2 27    3 10.04    23 16.7    1.385  1.284    73   13.2
    

    3.5. デビコ彗星(122P)

    122P/de Vico
      年 月 日      α         δ        r     Δ    Elong   m1
    1995 12 29   17 45.49    18 40.6    1.694  2.270    43   12.7
    1996  1  8   17 59.88    18  2.4    1.839  2.410    44   13.3
    1996  1 18   18 12.01    17 47.0    1.981  2.529    46   13.8
    1996  1 28   18 22.13    17 51.5    2.121  2.624    49   14.3
    1996  2  7   18 30.32    18 13.0    2.259  2.698    53   14.7
    1996  2 17   18 36.59    18 49.0    2.394  2.751    58   15.1
    1996  2 27   18 40.87    19 37.3    2.527  2.785    64   15.4
    

    3.6. ダレスト彗星(6P)

    6P/d'Arrest
      年 月 日      α         δ        r     Δ    Elong   m1
    1995 12 29    1 35.84   -15 47.8    2.128  1.751    98   12.9
    1996  1  8    1 47.39   -13  3.0    2.199  1.923    92   13.2
    1996  1 18    1 59.63   -10 25.5    2.271  2.100    86   13.6
    1996  1 28    2 12.44    -7 56.3    2.342  2.281    81   13.9
    1996  2  7    2 25.71    -5 36.0    2.413  2.464    75   14.2
    1996  2 17    2 39.36    -3 24.9    2.484  2.646    69   14.5
    1996  2 27    2 53.31    -1 23.4    2.553  2.827    64   14.7
    

    3.7. コップ彗星(22P)

    22P/Kopff
      年 月 日      α         δ        r     Δ    Elong   m1
    1995 12 29   14 31.15   -10 41.2    2.344  2.711    58   14.8
    1996  1  8   14 49.62   -11 56.1    2.284  2.546    63   14.4
    1996  1 18   15  8.51   -13  4.6    2.225  2.380    68   13.9
    1996  1 28   15 27.76   -14  5.6    2.166  2.214    74   13.5
    1996  2  7   15 47.34   -14 58.3    2.109  2.050    79   13.0
    1996  2 17   16  7.18   -15 41.8    2.052  1.889    84   12.5
    1996  2 27   16 27.19   -16 15.3    1.996  1.732    90   12.0
    

    3.8. ブラッドフィールド彗星(1995Q1)

    C/1995Q1 Bradfield
      年 月 日      α         δ        r     Δ    Elong   m1
    1995 12 29    2 11.30    65 48.4    2.313  1.642   121   13.0
    1996  1  8    1 57.13    59 28.1    2.455  1.878   114   13.6
    1996  1 18    1 54.21    54 36.4    2.595  2.140   106   14.2
    1996  1 28    1 56.46    50 58.6    2.731  2.418    97   14.8
    1996  2  7    2  1.45    48 18.3    2.864  2.704    89   15.3
    1996  2 17    2  8.05    46 21.7    2.996  2.991    80   15.7
    1996  2 27    2 15.68    44 58.4    3.124  3.275    72   16.2
    

    3.9. シュワスマン-ワハマン第1彗星(29P)

    29P/Schwassmann-Wachmann 1
      年 月 日      α         δ        r     Δ    Elong   m1
    1995 12 29   10 33.04     5 52.2    6.242  5.705   119   13.7
    1996  1  8   10 31.53     5 49.5    6.244  5.571   129   13.7
    1996  1 18   10 29.05     5 52.6    6.245  5.456   140   13.6
    1996  1 28   10 25.72     6  1.3    6.247  5.365   151   13.6
    1996  2  7   10 21.73     6 14.4    6.248  5.302   162   13.6
    1996  2 17   10 17.33     6 31.0    6.249  5.268   172   13.6
    1996  2 27   10 12.78     6 49.6    6.251  5.266   173   13.6
    

    3.10. ガン彗星(65P)

    65P/Gunn
      年 月 日      α         δ        r     Δ    Elong   m1
    1995 12 29   14 59.34   -11 11.6    2.758  3.262    51   14.1
    1996  1  8   15 14.39   -12 21.3    2.733  3.130    57   13.9
    1996  1 18   15 29.11   -13 25.0    2.709  2.991    64   13.8
    1996  1 28   15 43.34   -14 22.7    2.686  2.847    70   13.6
    1996  2  7   15 56.91   -15 14.5    2.663  2.700    77   13.4
    1996  2 17   16  9.62   -16  0.7    2.642  2.551    84   13.3
    1996  2 27   16 21.21   -16 42.1    2.621  2.403    91   13.1
    

    3.11. ウィルド第4彗星(116P)

    116P/Wild 4
      年 月 日      α         δ        r     Δ    Elong   m1
    1995 12 29    8  2.96    26 18.5    2.665  1.725   158   14.7
    1996  1  8    7 54.64    26 51.5    2.624  1.650   169   14.5
    1996  1 18    7 44.85    27 20.4    2.582  1.603   172   14.3
    1996  1 28    7 34.81    27 40.6    2.542  1.585   162   14.1
    1996  2  7    7 25.90    27 49.6    2.501  1.593   150   14.0
    1996  2 17    7 19.27    27 47.2    2.461  1.625   139   13.9
    1996  2 27    7 15.72    27 34.9    2.422  1.675   128   13.8
    

    3.12. コマ-ソラ彗星(32P)

    32P/Comas Sola
      年 月 日      α         δ        r     Δ    Elong   m1
    1995 12 29    1  5.24     0 53.5    2.379  2.026    98   15.6
    1996  1  8    1 11.48     2 38.7    2.326  2.101    90   15.4
    1996  1 18    1 20.06     4 33.4    2.275  2.175    82   15.3
    1996  1 28    1 30.79     6 35.8    2.226  2.247    76   15.2
    1996  2  7    1 43.47     8 44.1    2.178  2.316    69   15.1
    1996  2 17    1 57.97    10 56.4    2.132  2.379    63   15.0
    1996  2 27    2 14.19    13 10.9    2.089  2.437    58   14.8
    

    3.13. ウエスト-ハートレー彗星(123P)

    123P/West-Hartley
      年 月 日      α         δ        r     Δ    Elong   m1
    1995 12 29    7  9.58    43 38.7    2.376  1.436   158   16.4
    1996  1  8    6 59.51    44 50.4    2.345  1.407   157   16.3
    1996  1 18    6 49.22    45 34.0    2.315  1.402   151   16.2
    1996  1 28    6 40.63    45 47.6    2.286  1.420   143   16.1
    1996  2  7    6 35.34    45 34.6    2.260  1.458   134   16.1
    1996  2 17    6 34.20    45  1.0    2.236  1.511   125   16.1
    1996  2 27    6 37.44    44 12.8    2.214  1.577   117   16.2
    

    3.14. ラインムート第1彗星(30P)

    30P/Reinmuth 1
      年 月 日      α         δ        r     Δ    Elong   m1
    1995 12 29   13 56.23    -4 39.9    2.131  2.288    68   16.2
    1996  1  8   14 12.31    -5 32.3    2.172  2.219    74   16.3
    1996  1 18   14 26.84    -6 10.8    2.214  2.146    80   16.3
    1996  1 28   14 39.56    -6 35.0    2.258  2.070    87   16.4
    1996  2  7   14 50.21    -6 45.0    2.304  1.993    95   16.4
    1996  2 17   14 58.49    -6 40.9    2.351  1.918   103   16.5
    1996  2 27   15  4.12    -6 23.5    2.399  1.846   111   16.5
    

    3.15. キロン彗星(95P)

    95P/Chiron
      年 月 日      α         δ        r     Δ    Elong   m1
    1995 12 29   12 45.44    -7 45.6    8.456  8.513    83   16.4
    1996  1  8   12 47.32    -7 57.4    8.455  8.346    93   16.4
    1996  1 18   12 48.48    -8  4.6    8.455  8.180   102   16.3
    1996  1 28   12 48.90    -8  7.0    8.454  8.021   112   16.3
    1996  2  7   12 48.59    -8  4.6    8.454  7.874   123   16.3
    1996  2 17   12 47.57    -7 57.3    8.454  7.743   133   16.2
    1996  2 27   12 45.93    -7 45.6    8.454  7.632   144   16.2
    

    3.16. ヘール-ボップ彗星(1995O1)

    C/1995O1 Hale-Bopp
      年 月 日      α         δ        r     Δ    Elong   m1
    1995 12 29   18 51.34   -25 10.2    5.766  6.744     5    9.8
    1996  1  8   18 57.78   -24 40.6    5.673  6.653     4    9.7
    1996  1 18   19  4.30   -24  9.6    5.579  6.534    12    9.5
    1996  1 28   19 10.77   -23 37.1    5.484  6.390    21    9.4
    1996  2  7   19 17.08   -23  3.1    5.389  6.222    29    9.3
    1996  2 17   19 23.11   -22 27.4    5.293  6.031    38    9.1
    1996  2 27   19 28.70   -21 50.0    5.197  5.818    47    9.0
    

    3.17. ポン-ウィンネッケ彗星(7P)

    7P/Pons-Winnecke
      年 月 日      α         δ        r     Δ    Elong   m1
    1995 12 29   17 55.13   -20 56.7    1.257  2.222     8   13.2
    1996  1  8   18 34.58   -22 36.9    1.258  2.219     9   13.2
    1996  1 18   19 14.46   -23 40.3    1.270  2.226    10   13.3
    1996  1 28   19 54.08   -24  6.4    1.294  2.241    11   13.4
    1996  2  7   20 32.75   -23 57.4    1.328  2.264    13   13.6
    1996  2 17   21  9.93   -23 17.8    1.371  2.293    16   13.9
    1996  2 27   21 45.22   -22 13.5    1.422  2.326    18   14.1
    

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