Comet for Windows チュートリアル

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Updated on November 27, 2004

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    彗星の尾を調べる    

o 尾の長さと方向を調べる

Comet for Windows で位置推算をすると、彗星のイオンの尾の見かけの長さと方向を調べることができます。

Comet for Windows を起動して、メニューから「メニュー」−「位置推算」を選びます。

メニューの「表示」−「設定」を選び、「表示設定」ダイアログを開きます。 ここで、「尾の長さと位置角」をチェックします。 また、彗星の尾の実長を天文単位で入力します。

例えば、2004年春に南半球で明るく見えたリニア彗星(C/2002 T7)について調べてみると、次のようになります。


C/2002 T7 ( LINEAR )
  年 月 日     α        δ       r      Δ    Elong   m1   尾 (') 位置角 
2004- 4-20  23 52.61    4 39.0   0.618   1.218    30    4.3   221.5 255.1  
2004- 4-25  23 55.70    3  3.7   0.616   1.041    34    4.1   298.2 251.2  
2004- 4-30   0  3.61    1  5.3   0.633   0.853    38    3.9   394.0 247.4  
2004- 5- 5   0 20.43   -1 34.2   0.667   0.661    40    3.7   521.9 242.6  
2004- 5-10   0 55.83   -5 40.1   0.716   0.476    40    3.5   709.7 233.9  
2004- 5-15   2 16.52  -12 42.8   0.774   0.323    36    3.2   994.3 209.6  
2004- 5-20   5  2.45  -19 57.4   0.840   0.267    43    3.1  1291.0 154.4  
2004- 5-25   7 33.48  -17 43.8   0.911   0.355    63    3.2   966.6 125.4  
2004- 5-30   8 44.10  -13 50.3   0.985   0.515    72    4.0   621.8 118.8  

尾の位置角を見ると、4月には西に伸びていたイオンの尾が、5月中旬に急激に向きを変えて反転し、5月末には東に伸びて見えることが分かります。

また、彗星が地球に最接近する5月20日頃に、イオンの尾が最も長く伸びることが分かります。 見かけの長さは、尾の実長を0.1AUとしても1291分角(21.5度)もの長さになりますので、実際には数十度の尾が見える可能性があることが分かります。

o 尾の見やすい時期を調べる

彗星のダストの尾は、彗星の軌道面に沿って広がります。 そのため、地球が彗星の軌道面を通過する時は、広がった尾を真横から見ることになるため、尾が濃くなり、長く伸びて見えるようになります。

地球と彗星の軌道が水平に近ければ、長い間、尾を見やすい状態が続きます。 軌道が垂直に近ければ、軌道面を通過する直前に急に尾が長く伸び始め、通過した後はすぐにまた見づらくなってしまいます。

Comet for Windows で位置推算をすると、彗星の尾の見やすい時期を調べることができます。

Comet for Windows を起動して、メニューから「メニュー」−「位置推算」を選びます。

メニューの「表示」−「設定」を選び、「表示設定」ダイアログを開きます。 ここで、「彗星から見た地球の経緯度(彗星軌道面座標)」をチェックします。

彗星から見た地球の緯度が0度になる時が、地球が彗星の軌道面を通過する時です。 地球の緯度が0度に近い時は、尾が見やすいことになります。

例えば、2004年4月下旬に明け方の空で長い尾を伸ばした、ブラッドフィールド彗星について調べてみると、次のようになります。


C/2004 F4 ( Bradfield )
  年 月 日     α        δ       r      Δ    Elong   m1   地球の方向 
2004- 4-15   1 59.89    1 55.3   0.189   0.922    10    2.3  (248, 16)  
2004- 4-20   1 24.37   14 20.4   0.206   0.835     7    2.4  (143, 13)  
2004- 4-25   1  3.78   25 38.9   0.346   0.934    20    4.3  ( 91,  7)  
2004- 4-30   0 58.59   32 30.4   0.491   1.061    27    5.7  ( 70,  2)  
2004- 5- 5   0 59.34   37  9.3   0.627   1.183    32    6.7  ( 58, -1)  
2004- 5-10   1  2.50   40 39.1   0.754   1.295    35    7.5  ( 50, -4)  
2004- 5-15   1  6.63   43 28.6   0.874   1.397    38    8.8  ( 45, -7)  
2004- 5-20   1 11.04   45 52.7   0.988   1.490    41    9.8  ( 41, -9)  
2004- 5-25   1 15.36   47 59.6   1.097   1.574    43   10.6  ( 38,-12)  
2004- 5-30   1 19.37   49 54.4   1.202   1.650    46   11.4  ( 35,-13)  

「地球の方向」の欄が、彗星から見た地球の経緯度です。 彗星から見た太陽の方向が原点になります。

明け方の空に現れてきた頃、ちょうど地球がブラッドフィールド彗星の軌道面を通過して、尾が見やすくなっていたことが分かります。

また、長い間ずっと長い尾を伸ばし続けた、リニア彗星(C/2001 K5)について調べてみると、次のようになります。


C/2001 K5 ( LINEAR )
  年 月 日     α        δ       r      Δ    Elong   m1   地球の方向 
2003- 1- 1  17 48.40   21 59.8   5.220   5.841    47   14.8  (355,  6)  
2003- 2- 1  18 17.93   26 19.3   5.253   5.705    58   14.8  (359,  9)  
2003- 3- 1  18 41.47   31 39.8   5.291   5.541    70   14.8  (  3,  9)  
2003- 4- 1  19  0.45   38 43.7   5.342   5.366    83   14.8  (  7,  7)  
2003- 5- 1  19  7.73   45 50.4   5.401   5.251    93   14.9  ( 10,  3)  
2003- 6- 1  19  0.27   52  6.2   5.470   5.214    99   15.0  ( 10, -2)  
2003- 7- 1  18 40.23   55 45.7   5.546   5.260   101   15.1  (  7, -6)  
2003- 8- 1  18 17.84   56 25.9   5.631   5.376    99   15.3  (  2, -9)  
2003- 9- 1  18  8.01   54 40.3   5.724   5.539    95   15.5  (357, -9)  
2003-10- 1  18 15.35   52  1.0   5.821   5.726    90   15.8  (353, -7)  
2003-11- 1  18 37.78   49 30.6   5.928   5.936    84   16.0  (350, -3)  
2003-12- 1  19  9.41   48  3.6   6.037   6.151    78   16.2  (350,  1)  

彗星から見た地球の緯度は、ずっと0度に近い値になっています。 よって、この彗星の軌道は、地球とほぼ垂直になっていたにも関わらず、実は、彗星の尾が見やすい状態が続いていたことが分かります。

o ダストトレイルを調べる

短周期彗星の軌道上には、彗星から放出されたダストが散らばっています。 これをダストトレイルと呼びます。 ダストトレイルが地球に衝突すると、ダストが地球大気に飛び込んで流星となり、流星雨が見られます。

Comet for Windows で位置推算をすると、彗星のダストトレイルが伸びて見える方向や、ダストトレイルの見やすい時期を調べることができます。

Comet for Windows を起動して、メニューから「メニュー」−「位置推算」を選びます。

メニューの「表示」−「設定」を選び、「表示設定」ダイアログを開きます。 ここで、「地球から見た彗星軌道の位置角と俯角」をチェックします。

ダストトレイルについて調べる時は、尾についても調べる必要があります。 そこで、「尾の長さと位置角」と「彗星から見た地球の経緯度(彗星軌道面座標)」もチェックします。

例えば、2003年に明るくなり、地上からダストトレイルが撮影された、ガン彗星について調べてみると、次のようになります。


65P/Gunn
  年 月 日     α        δ       r      Δ    Elong   m1   尾 (') 位置角 地球の方向 軌道(pa,da)
2003- 4- 1  18 28.84  -24  9.3   2.459   2.174    94   13.2    61.5 267.2  ( 23, -4)  ( 97, 69)  
2003- 4-11  18 40.32  -24 40.9   2.453   2.049   101   13.0    64.3 266.3  ( 23, -3)  ( 96, 68)  
2003- 4-21  18 49.87  -25 16.7   2.449   1.928   109   12.9    65.9 265.9  ( 22, -3)  ( 95, 68)  
2003- 5- 1  18 57.16  -25 58.5   2.447   1.815   117   12.8    65.9 266.0  ( 21, -2)  ( 94, 69)  
2003- 5-11  19  1.86  -26 48.0   2.446   1.712   125   12.6    63.6 266.9  ( 19, -1)  ( 93, 70)  
2003- 5-21  19  3.74  -27 45.4   2.447   1.623   135   12.5    58.3 268.9  ( 16, -0)  ( 92, 72)  
2003- 5-31  19  2.67  -28 49.7   2.449   1.549   144   12.4    49.7 272.6  ( 13,  0)  ( 92, 74)  
2003- 6-10  18 58.76  -29 57.7   2.453   1.495   154   12.3    37.9 279.8  ( 10,  1)  ( 92, 77)  
2003- 6-20  18 52.51  -31  4.4   2.458   1.463   164   12.3    24.1 296.1  (  5,  2)  ( 93, 81)  
2003- 6-30  18 44.75  -32  4.1   2.465   1.456   170   12.3    14.5 344.2  (  1,  3)  ( 94, 85)  
2003- 7-10  18 36.69  -32 52.0   2.473   1.473   166   12.4    21.0  41.2  (356,  4)  ( 95, 89)  
2003- 7-20  18 29.57  -33 25.7   2.483   1.515   157   12.4    33.9  61.9  (352,  5)  ( 96, 92)  
2003- 7-30  18 24.44  -33 45.5   2.494   1.579   147   12.6    45.2  70.9  (348,  5)  ( 97, 95)  
2003- 8- 9  18 22.03  -33 53.2   2.507   1.663   137   12.7    53.3  76.0  (345,  5)  ( 98, 98)  
2003- 8-19  18 22.61  -33 51.6   2.521   1.764   128   12.9    58.2  79.3  (342,  5)  ( 98,100)  
2003- 8-29  18 26.16  -33 42.8   2.536   1.879   119   13.0    60.2  81.3  (340,  5)  ( 97,101)  
2003- 9- 8  18 32.47  -33 28.1   2.553   2.004   111   13.2    60.2  82.6  (339,  5)  ( 97,102)  
2003- 9-18  18 41.20  -33  8.4   2.571   2.137   103   13.4    58.5  83.4  (338,  4)  ( 96,103)  
2003- 9-28  18 51.99  -32 43.6   2.590   2.276    96   13.5    55.8  83.7  (337,  4)  ( 94,102)  

「軌道(pa,da)」の欄が、地球から見た彗星軌道の位置角と俯角です。

1番目の「pa」が位置角です。 彗星を撮影した時、ダストトレイルはこの方向に伸びて見えます。

2番目の「da」が俯角です。 地球から彗星を見た時の視線方向と、彗星の運動方向との為す角です。 俯角が0度の時は、彗星は地球からまっすぐに遠ざかっています。 俯角が180度の時は、彗星は地球にまっすぐに近づいています。

彗星軌道の位置角が、彗星の尾の位置角と一致している時は、彗星の尾とダストトレイルが重なってしまい、区別できません。 また、彗星軌道の俯角が0度または180度に近い時は、彗星のコマとダストトレイルが重なってしまい、区別できません。 このような時は、ダストトレイルを見ることはできません。

ガン彗星は、4月から6月中旬までは、尾の向きとダストトレイルの向きが一致しており、ダストトレイルを見ることができません。 しかし、6月中旬からは尾の向きが変わり、ダストトレイルと区別できるようになることが分かります。

また、彗星軌道の俯角はずっと90度に近く、ずっとダストトレイルを真横から見ていることが分かります。 このことから、ダストトレイルは長く伸びて見えるが、密度は薄くなるために淡いと予想されます。

なお、枯渇した彗星の場合は、コマが無いために、彗星軌道の俯角が0度または180度に近い時でも、ダストトレイルを見られる可能性があります。 彗星軌道の俯角が0度または180度に近い時は、ダストトレイルは長く伸びませんが、密度が濃くなるために、却って見やすくなる可能性があります。

下記のページでは、ふたご座流星群の母天体である小惑星ファエトンについて調べた結果を紹介しています。

枯渇した彗星ファエトンのダストトレイル=ふたご座流星群の母体を観測しよう!

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