English version Home page |
Updated on June 12, 2005 |
|
観測キャンペーンの呼びかけ1983年に発見された小惑星3200番「ファエトン」は、12月に見られる「ふたご 座流星群」の母天体です。かつては彗星活動をしていた、枯渇した彗星の名残 と考えられています。しかし、現在はファエトンにコマや尾は確認されていま せん。 ファエトンの軌道上には、ふたご座流星群の元となるダストトレイルが存在し ます。ダストトレイルはたいへん淡いのですが、地球からの視線方向と、ファ エトンの軌道の方向とが一致した時は、ダストトレイルが重なり合い、濃くなっ て、検出しやすくなります。 地球からファエトンを見た時の視線方向と、ファエトンの軌道の方向とが一致 した時は、ファエトンの核の周りに淡く広がるダストトレイルが、コマまたは 尾のように見える可能性があります。 そのような観測好機は、1983年の発見以来、これまで3回しかありませんでし た。そして、4回目の好機が、2004年12月に訪れます。 表:ファエトンのダストトレイルの観測好機 (ファエトンが暗すぎず、また、地上からの観測条件が良いもの)
表中の、単位面積辺りのダストトレイルの表面光度は、ダストトレイルの日心 距離が1AUの時に、θ=90度の方向から見た時の光度を20等と仮定して計算した 値です。 1984年12月には、地上からの観測はありませんでした。1991年12月には、1月1 日に1観測のみ報告されています。1994年12月には、3地点で4夜の観測が報告 されています。 これまでで最もダストトレイルが明るく見えたのは1994年12月ですが、この時 は満月があり、淡いダストトレイルを検出するには悪い条件でした。2004年に は、1994年とほぼ同じ明るさになります。2004年には三日月がありますが、 1994年よりは良い条件となります。 2004年12月の観測条件は下記の通りです。北緯35度と南緯35度での、観測の最 適時刻と、その時の高度を示してあります。
|
観測キャンペーンの結果報告2004年12月15日から22日にかけてのファエトンのダストトレイルの観測キャンペーンには、多くの方々が参加して下さいました。どうもありがとうございました。 10月にこのキャンペーンを呼びかけた際には、たくさんの方からコメントを頂きました。 John Bortle氏からは、ファエトンは長い間彗星活動をしていないので、写真で検出できるような高密度のダストの塊は存在しないのではないか、という指摘を頂きました。 しかし、成功の見込みは少ないながらも、AlanW. Harris氏、P. Clay Sherrod氏をはじめとして、たくさんの方に、主旨に賛同して頂きました。 ファエトンのダストトレイルを捉えるのに、どのような機材が適しているのかも不明でした。 2003年には、2つの枯渇しつつある彗星が出現しました。 エンケ彗星の淡いコマを捉えるのには、広角の機材が適していました。 しかし、リニア彗星(C/2002 CE10)の淡い尾は、8メートルのすばる望遠鏡でなければ捉えられませんでした。 そのため、いろいろな機材による観測の試みが重要でした。 このキャンペーンに際しては、たくさんの方から観測報告や画像を送って頂きました。それらの報告をご紹介します。 残念ながら、今回のキャンペーンでは、ファエトンのダストトレイルを捉えることはできませんでした。 ふたご座流星群の元となる流星物質の束は、いまだ存在が確認されていません。 Stefano Sposetti氏12月14日、18日、20日に、40センチF4反射望遠鏡とCCDカメラを使って撮影した画像を送って頂きました。それぞれ、60秒露出の画像を、14日は89枚、18日は130枚、20日は120枚重ね合わせたものです。 Vishnu Reddy氏とRon Dyvig氏12月15日から22日のキャンペーン期間中はほぼ曇でしたが、12月12日までの数週間に、Badlands天文台の26インチF4.8反射望遠鏡とApogeeの1kx1k CCDを使って、ファエトンのライトカーブの解析のための観測を行いました。 Vishnu Reddy氏は、180秒露出の画像には、尾やダストトレイルと思われるも のは、何も見当たらない、とコメントされています。 堀寿夫氏12月15日の15時53分から16時06分(世界時)の間、口径113cmの反射望遠鏡を使って、小惑星追尾で2分露出、5コマの撮影を行い、加算コンポジットした画像を送って頂きました。 堀氏は、北の方向にかなり薄い尾のようなものがあるようにも見えるが、フラット補正をしていないため、むらかもしれない、とコメントされています。 鈴木雅之氏12月16日に、口径20cmの望遠鏡で60秒露出の画像を30枚コンポジットしましたが、特に異常は分からなかった、とのことです。 http://www.geocities.jp/mtnsuzuki/3200_1a.jpg 織部隆明氏12月17日11時20分(世界時)頃から約1時間ほど、さじアストロパークの103cm望遠鏡に冷却CCDカメラをつけ、2分露光を30枚撮像し、そのうちの27枚をコンポジットしましたが、特に変わったものは見つからなかったとのことです。 大槻功氏12月17日に撮影した画像を送って頂きました。 David Higgins氏12月18日に、36cmシュミットカセグレン望遠鏡で、1分露出の画像を40枚撮影し、重ね合わせた画像を送って頂きました。 尾は見られなかったとのことです。 Pepe Manteca氏12月18日に、14インチF6.3シュミットカセグレン望遠鏡とST9+AO7を使って撮影したところ、尾は見られなかった、とのことです。 Sergio Foglia氏12月18日と20日の21時(世界時)に、イタリアのdi Suno天文台で撮影したところ、ダストや尾は見られなかった、とのことです。 12月19日に撮影した画像を送って頂きました。 http://asteroidi.uai.it/pub/03200.htm http://asteroidi.uai.it/pub/03200stk.gif http://asteroidi.uai.it/pub/03200skz.gif Kamil Hornoch氏とPeter Kusnirak氏12月18.785日(世界時)に、65cm反射望遠鏡とAP7p CCDを使って撮影を行い、Rバンドで合計1575秒の露出時間を積算した画像を送って頂きました。 コマや尾、ダストトレイルは観測されなかった、とのことです。 Kamil Hornoch氏はまた、ファエトンと、同じ写野内でファエトンとほぼ同じ明るさの4つの星について、プロファイルを調べて下さいました。 4つの星のプロファイルは、ファエトンのプロファイルととても良く似ていた、とのことです。
ファエトンのプロファイル
同じ写野内の星1のプロファイル
同じ写野内の星2のプロファイル
同じ写野内の星3のプロファイル
同じ写野内の星4のプロファイル Claudine Rinner氏12月19日に、T400 F1346mmとST10XMEを使って、1分露出の画像を60枚撮影し、重ね合わせた画像を送って頂きました。 Arto Oksanen氏12月21日20時08分から21時03分(世界時)に、Nyrola天文台の口径40cmのMeade LX200望遠鏡を使って、Rcバンドで1分露出の画像を50枚撮影し、平均した画像を送って頂きました。 コマやダストトレイルは見られなかった、とのことです。 |
関連論文
H. Hsieh and D. Jewitt (2005). Search for Activity in (3200) Phaethon. Ap. J., 624, 1093-1096.
|