English version Home Page Updated on October 15, 2005
楕円軌道の食連星:MisV1306
2005年10月13日 私たちは、楕円軌道を持つ珍しい食変光星MisV1306を発見しました。MISAOプロジェクトでは、これまでたくさんの新しい食変光星を発見してきましたが、楕円軌道の食連星は、これが初めての発見となります。 MISAOプロジェクトの食変光星の詳しいタイプや周期は、三重県の中島和宏さんが徹底的な観測を行って、明らかにされています。 最近では、自動サーベイの膨大なデータから、食変光星のタイプや周期はすべて簡単に求められるかのようにも思われがちですが、中には、そう簡単にはいかない星もあります。中島さんは、MisV1306を約2年間に70夜も観測し、1812個もの光度を測定して、ようやくこの星のタイプと周期を明らかにすることができました。その結果は、とても興味深いものでした。
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この星は3夜目に減光を確認し、早く決めれそうな予想でした。22夜目には次の減光を確認できました。しかし、それからが大変でした。 2つの減光をつないで可能性のある周期を5つ求めて予報をし、減光の確認をしていきましたが、すべて空振りに終わりました。 |
食変光星は、周期的に減光を繰り返します。2回の減光を捉えた後は、その間に何回減光したかを仮定して、周期を推測することができます。すると、次に暗くなる時期を予報できます。予報どおりに暗くなれば、推測した周期が正しかったと分かります。
しかし、楕円軌道を持つ食連星の場合は、減光の間隔が一定になりません。そのため、予報どおりに減光を捉えることができず、正しい周期を知ることが難しいのです。
そこで、今までの周期予報をあきらめ、元のように毎日の撮影から減光を探し始めました。49夜目に減光を捉えたものの、3回の減光からでは周期性が認められず、引き続き毎日追いかけます。
55夜目に副極小を捕らえたところで、楕円軌道を思いつきました。ずらした周期で計算すると、周期を5.337日まで追い込めました。
後は、予報どおり観測していくだけでしたが、なにせ周期が5.337日です。極小を捉えられる日が、16日と13分ごとに回りますが、長時間の主極小の観測予定が満月と重なったりして、今年は条件があまり良くありませんでした。
最終的に、MisV1306は周期5.3364日の楕円軌道を持つ食連星と判明しました。副極小は、0.412の位相で起こっていました。明るさは、極大11.97等、主極小12.50等、副極小12.30等でした。この結果を得るために、2005年9月18日まで、70夜もかかりました。
70夜、1年半かかりましたが、まさか楕円軌道とは思いませんでした。周期が合わず、手当たり次第に予報をして、副極小が見つかったときは、肩の荷がおりたようでした。
今までのMisV食変光星候補の中で一番悩み多い、手ごわい星でした。
最近では、明るい変光星であれば、自動サーベイの膨大なデータを見ることができます。北天ならNorthern Sky Variability Survey (NSVS)、南天ならAll Sky Automated Survey (ASAS)のデータが公開されています。
北天にあるMisV1306は、NSVSでデータが記録されています。NSVSのライトカーブは、こちらで見ることができます。
http://skydot.lanl.gov/nsvs/star.php?num=1776070&mask=18708
NSVSでは、1年間に渡って147回もの観測が行われていますが、たったの2夜しか減光が捉えられていません。この星は、食を捉えるのが非常に難しいことが分かります。
連星の軌道の変化など、長い時間でのMisV1306の変化を明らかにするためにも、興味のある方に観測を続けて頂ければ幸いです。
楕円軌道の周期を確定した中島さんの観測結果は、IBVS 5700に掲載されました。
http://www.konkoly.hu/cgi-bin/IBVS?5700#49
MisV1306について、詳しくは、下記のページにまとめられています。
http://www.aerith.net/misao/data/misv.cgi?1306
(2005年10月15日追記)
Michael Sallman氏から、この星の2回の主極小(JDは2452911.80072と2453322.67412)がTASSで捉えられている、との報告を頂きました。
http://sallman.tass-survey.org/servlet/markiv/template/TassPlot.vm?object_id=5350714