MISAO Project

English version       Home Page       Updated on October 13, 2003

    自動サーベイの公開画像の検査    

1. はじめに

現在の天文界は、自動サーベイの時代を迎えています。自動的に撮影された画 像が直ちにインターネットで公開されて、最新の画像が誰でも見られるケース も多くなってきました。

MISAOプロジェクトでは、インターネットで公開されている画像を、PIXYシス テム2で検査して、新天体を探しています。

現在、MISAOプロジェクトでチェックしているのは、次の3つのサイトです。

伊藤智行さんの「星空図書館」
http://www.kcv.ne.jp/~totomo/tosyokan/
All Sky Automated Survey (ASAS-3)
http://archive.princeton.edu/~asas/
SOHO LASCO C3 images
http://sohowww.nascom.nasa.gov/data/realtime-images.html

これらのサイトでは、画像の撮影スケジュールや、画像へのアクセスの仕方な どが、それぞれ異なっています。

PIXYシステム2には、エージェントの仕組みが備わっています。

そこで、MISAOプロジェクトでは、具体的なファイル名やダウンロードの仕方 などを記述したエージェントを、それぞれのサイトごとに作成しました。

PIXYシステム2は、これらのエージェントをプラグインとして読み込むことが できます。その結果、ボタン1つで画像を自動的にダウンロードして、Guide Star Catalog (GSC) や Tycho Catalogue のデータと比較して、新天体の候補 をピックアップし、HTMLギャラリーを作成するまで、自動的に実行できるよう になりました。

PIXYシステム2が作る、新天体候補のHTMLギャラリーは、このようなものです。

HTMLギャラリーの例

予めデータベースに登録しておいた過去画像や、Digitized Sky Survey (DSS) 画像と並べて表示させることができるので、見つかった候補が、本物の新天体 かどうか、一見するだけで簡単にチェックすることができます。

2. 伊藤智行さんの「星空図書館」

http://www.kcv.ne.jp/~totomo/tosyokan/

伊藤智行さんの「星空図書館」では、毎晩、一晩中、南の空を自動的に撮影し た画像が公開されています。1枚の画像は15×15度の範囲で、条件が良ければ 8.5等星まで写ります。

「星空図書館」で公開されている画像は、このようなものです。

この画像は、「走査式天体写真撮影法」という特殊な方法で撮影されています。 画像はメルカトル図法になっているため、そのままでPIXYシステム2で Tycho Catalogue と比べられません。

また、画像には、格子模様のような濃淡が見られます。

そこで、「星空図書館」のエージェントでは、画像処理を施して、図法の変換 と、格子模様の除去を行っています。処理をした後の画像は、このようになり ます。

「星空図書館」のケースでは、同一夜の2枚の画像と、データベースに登録し ておいた過去画像とを並べたHTMLギャラリーを作るようにしています。この際、 ノイズによる誤報を抑制するために、2枚の画像で同じ位置に写っている星し か、ピックアップしないようにしています。

「星空図書館」の画像から検出された新天体候補の1つを紹介します。

J220652.26-122655.0

2003 Oct. 4.5
6.20
175.0 x 175.0 arcmin
2003 Oct. 4.5
5.70
175.0 x 175.0 arcmin
2003 July 25.7
[8.00
175.0 x 175.0 arcmin

2003年7月25日過去画像に写っていない星が、10月4日に写りました。調べてみ ると、これは天王星でした。

3. All Sky Automated Survey (ASAS-3)

http://archive.princeton.edu/~asas/

ASAS-3は、2003年4月に、いて座新星の増光をいち早く捉えていたことで有名 になりました。赤緯+30度より南の空を、数日ごとに繰り返しサーベイしてい ます。撮影された画像は、すぐにインターネットで公開されます。ASAS-3の画 像には、約14等までの星が写ります。

ASAS-3の画像を見るには、All Sky Automated Survey のホームページで、次 のような手順を踏む必要があります。

  • 星図を表示する。
  • 星を1つクリックする。
  • データを1つ選び、ライトカーブを表示する。
  • ライトカーブの中の点をクリックする。

MISAOプロジェクトでは、これらの手順を自動的に行うエージェントを作りま した。そのため、ボタン1つで、指定したエリアの画像がすべてダウンロード され、Guide Star Catalog (GSC) と比較して、新天体の候補がピックアップ され、HTMLギャラリーが作成されます。

ASAS-3のケースでは、Digitized Sky Survey (DSS) 画像と並べたHTMLギャラ リーを作るようにしています。

ASAS-3の画像から検出された新天体候補の1つを紹介します。

J222037.91-044458.6

2003 Sept. 30.0888
13.30
24.8 x 24.8 arcmin
DSS image
5.7 x 5.7 arcmin

Digitized Sky Survey (DSS) に存在しない明るい星が、ASAS-3の画像に写っ ています。調べてみると、これは2003年9月下旬にバーストを起こして明るく なっていた、29P/Schwassmann-Wachmann 1 という彗星でした。

このように、ASAS-3の画像では、彗星の最新の姿をモニターすることができま す。そこで、次のようなページも作成しました。

ASAS-3の最新彗星画像
http://www.aerith.net/comet/asas3/asas3.html

4. SOHO LASCO C3 images

http://sohowww.nascom.nasa.gov/data/realtime-images.html

SOHOのホームページでは、毎日、数十分ごとに、太陽のまわりを探査機から撮 影した画像が公開されています。1枚の画像は15×15度の範囲で、約9等まで の星が写ります。

SOHOの画像はノイズが多いため、そのままでは新天体とノイズの区別が付きま せん。また、ノイズの影響で、PIXYシステム2が Tycho Catalogue とマッチ ングすることもできません。

そこで、SOHOのエージェントでは、撮影時刻の近い3枚の画像を重ね合わせて、 中間値をとった画像を作り、そこから新天体を探すようにしています。

SOHOの元画像と、エージェントで作成した中間値の画像、そして同じ視野の Tycho Catalogue の星図は、次の通りです。中間値をとることで、ノイズが無 くなり、星図と良く一致するようになったことが分かります。


元画像

中間値の画像

Tycho Catalogue の星図

SOHOのケースでは、Digitized Sky Survey (DSS) 画像と並べたHTMLギャラリー を作るようにしています。この際、ノイズによる誤報を抑制するために、前日 の画像も使って、2日間とも同じ位置に写っている星しか、ピックアップしな いようにしています。

SOHOの画像から検出された新天体候補の1つを紹介します。

J124000.18-113721.1

2003 Oct. 4 15:18
8.61
92.9 x 92.9 arcmin
2003 Oct. 6 00:18
8.85
92.9 x 92.9 arcmin
DSS image
5.7 x 5.7 arcmin

Tycho Catalogue に載っていない明るい星が、2日間の画像から検出されまし た。Digitized Sky Survey (DSS) 画像を見ると、これはM104(ソンブレロ星 雲)でした。


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