MISAO Project

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2003年3月11日

    星の名前はどういう意味か    

MISAOプロジェクト・アナウンスメイル (2003年3月11日)

MISAOプロジェクトの吉田誠一です。

天体写真を撮っていると、妙に赤い星が写ったり、明るさが変わっている星を 見つけたりすることがあります。

また、彗星や星雲星団に望遠鏡を向ける時に、星図にない星を見つけたり、星 図にあるはずの星が見えなかったりすることがあります。

そんな「ちょっと気になる星」を見つけた時に、その星について検索してみる と、1つの星に、いろいろな名前が付いているのが分かることがあります。

MISAOプロジェクトでは、変光星や星雲星団、赤外線天体や紫外線天体、輝線 天体、固有運動の大きい星など、およそ150万個の星を集めたデータベースを 作って、「ちょっと気になる星」を、すぐに調べられるようにしています。

例えば、赤経07h27m04s.6、赤緯-09°09'09"に、明るさの変わる星を見つけた としましょう。

MISAOプロジェクトのデータベースを調べてみると、この星には、次のような、 5つの名前が付いていることが分かりました。

  • IRAS 07246-0903
  • MSX5C G225.1540+03.6430
  • CGCS 1720
  • CGCS J0727-0909
  • ISV 0724-09

さて、これらの名前は、いったい何を表しているのでしょうか?

ある星が、いろいろな名前を持っている、ということは、基本的には、いろい ろな角度から研究、観測されてきた、ということを示しています。

星の名前には、研究の内容や、研究者、論文のタイトルなどを表す、略称が付 いていることが多いです。そのため、名前を見るだけでも、その星がどういう 天体なのか、おおよそ分かります。

しかし、聞いたこともないような名前が付いていた場合は、どうすれば良いで しょうか? この例でも、「CGCS」や「ISV」といった略称は、いったい何を表 しているのでしょうか?

略称の意味や、その星のデータが載っている文献を調べるには、下記のページ が便利です。

Dictionary of Nomenclature of Celestial Objects
http://vizier.u-strasbg.fr/cgi-bin/Dic

例えば、「CGCS」という略称を入れて、検索してみると、「Cool Galactic Carbon Stars」の略であることが分かります。つまり、炭素星であることが分 かります。

また、「IRAS」と「MSX5C」という略称からは、この星が赤外線で観測されて いること、つまり、赤い星であることが分かります。

この例の星は、どうやら、ミラのような、赤色変光星のようです。

しかし、世の中には、公認されていない略称も多くあります。そういった略称 は、このページでは検索できません。この例では、「ISV」という略称を入れ て検索しても、何も出力されません。

実は、MISAOプロジェクトで発見した新変光星に付いている「MisV」という略 称も、このページでは検索できません。

最近は特に、次々と新しい変光星が発見されて、新しい略称も増えています。 この3月にも、新たにOndrej Pejcha氏が新変光星を発見し、「Pej」という略 称を使った名前を付けて、発表したばかりです。

そこで、MISAOプロジェクトの天体データベースに含まれる、すべての略称に ついて、本来の名前や、カタログの入手先などをまとめたページを作成しまし た。

Supported Catalogues
http://www.aerith.net/misao/pixy/catalog.html

このページを見ると、さきほどの例の「ISV」という略称は、「Iida Suspected Variables」の略だと分かります。つまり、日本のアマチュアの飯 田氏が、かつて変光星として発見していた星だった訳です。

「ISV」のような、公認されていない略称を持つ星の多くは、加藤太一氏が取 りまとめている、「newvar.cat」というファイルに含まれています。

吉田誠一は、vsnet-newvarなどに新しい変光星が発表されたのを見つけたら、 データ形式を整えて加藤氏に送り、この「newvar.cat」に加えてもらっていま す。最近、Klaus Bernhard氏、長谷田勝美氏、John Greaves氏などから報告さ れた天体も、すでに「newvar.cat」に加えてもらっています。

近年、Brian Skiff氏は、古いカタログに載っている天体を調べ直して、正確 な位置を求める、という研究をしています。その成果は、vsnet-idに発表され ています。それらの天体の位置とデータも、吉田誠一から「newvar.cat」に加 えてもらいました。

「ちょっと気になる星」について調べたい時は、下記のページも便利です。

SIMBAD: Query by identifier, coordinates or reference code
http://simbad.u-strasbg.fr/sim-fid.pl

赤経赤緯を入力すると、その星に付いている、いろいろな名前が検索できます。 しかし、このページでは、最近のアマチュアが発見した新変光星などは、出て 来ません。

このページと併せて、「newvar.cat」も調べることをお勧めします。そして、 見知らぬ名前が付いていた時は、

Supported Catalogues
http://www.aerith.net/misao/pixy/catalog.html

このページの一覧表を当たってみて下さい。

P.S.
過去のMISAOプロジェクト・アナウンスメイルは

http://www.aerith.net/misao/index-j.html
で閲覧できます。

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吉田 誠一 / Seiichi Yoshida
comet@aerith.net
http://www.aerith.net/index-j.html

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