MISAO Project

English version       Home Page       Updated on August 22, 2002

2002年8月22日

    カタログ調査のススメ    

MISAOプロジェクト・アナウンスメイル (2002年8月22日)

MISAOプロジェクトの吉田誠一です。

皆さんは、星について知りたい時、どのようにして調べていますか?

新星を見つけたと思った時や、明るさの変わる星を見つけた時、昔の画像と比 べて大きく動いている星を見つけた時など、それが新天体なのかどうか、どん な星なのか、などを調べたいことは、良くあります。

最近、何人かの方から、PIXYシステム2を使って、天体のカタログを調査する 方法について、質問のメールを頂きました。

また、TASS(The Amateur Sky Survey)のデータを研究している、イギリスの John Greaves氏からは、TASSのデータから見つけた興味深い星について、それ がどんな天体なのか、PIXYシステム2を使って簡単に調べたい、というメール も頂きました。

そこで、カタログ調査の機能をアップしたPIXYシステム2の最新版をリリース しました。また、MISAOプロジェクトのホームページでは、カタログを調べる 方法のチュートリアルを用意しました。

2001年9月19日のアナウンスメール「天体カタログのサポート」で紹介しまし た通り、PIXYシステム2では、非常にたくさんのカタログがサポートされてい ます。あなたが見つけた星について、変光星、星雲星団、赤外線天体など、さ まざまな情報を調べることができます。特に変光星については、京都大学の加 藤太一氏らによって取りまとめられたカタログをサポートしているので、アマ チュアによって発見されたばかりの新しい星まで、調べることができます。

また、天体データベースを構築すれば、多くのデータを、何度でも、手軽に、 かつ高速に検索することができるようになります。

まず、1つの星の正体を調べる方法を紹介しましょう。

例えば、夏の天の川を撮影した画像から、赤経18h19m.1、赤緯-30°19'に、以 前には写っていなかった、新星のような星を見つけたとしましょう。

この位置には、SIMBAD(http://simbad.u-strasbg.fr/Simbad)で検索してみ ても、何も出力されません。

しかし、PIXYシステム2の「View Multiple Catalog Chart」で星図を表示し、 「Add Catalog」で

Taichi Kato's Catalog of Variable Stars, etc., for VSNET
ftp://ftp.kusastro.kyoto-u.ac.jp/pub/vsnet/others/newvar.cat

を開くと、ここには「HadV100」という、明るい時には11.5等、暗い時には 13.8等以下になる、ミラ型の変光星があることが分かります。これは、長谷田 勝美氏が発見した、ちょうど100個目の変光星です。

たくさんの星について、まとめてカタログを調査したい場合は、「Cross Identification」の機能を使います。

まず、調べたい星のリストを、AstrometricaのOther(ASCII)フォーマットで作 成します。例えば、

Star 1        18 19 06.00 -30 19 00.0 11.5
Star 2        21 00 08.00 +44 21 20.5 12.5

のようなファイルを作成します。

そして、Base Catalogとして「Astrometrica Other(ASCII) Star Catalog」を 選び、作成したファイルを指定します。そして、Identify Withとして

Taichi Kato's Catalog of Variable Stars, etc., for VSNET
ftp://ftp.kusastro.kyoto-u.ac.jp/pub/vsnet/others/newvar.cat

を指定し、「Cross Identification」を実行すると、次のような結果が得られ ます。

Star 1  18h19m06s.00 -30o19'00".0  Mag:11.50
= HadV100 (7.4")
HadV100  18h19m05s.76 -30o19'06".7  Mag(max):11.5  Mag(min):<13.8  Mag
System:p  Type:M

Star 2  21h00m08s.00 +44o21'20".5  Mag:12.50
= MisV1111 (2.9")
MisV1111  21h00m08s.21 +44o21'22".3  Mag(max):12.4  Mag(min):14.0
MagSystem:C  Type:SR?  ID:USNO-A2.0 1275.14464201, MSX5C
G085.6796-01.1497  DiscoveryDate:2001 May 30  Discoverers:Seiichi
Yoshida, Nobuo Ohkura, KenIchi Kadota

Star 1は長谷田勝美氏の新変光星、Star 2はMISAOプロジェクトの新変光星で あったことが分かります。

ただ、この方法は、カタログファイルを最初から最後まで、繰り返し読み込む ため、かなり時間がかかります。また、変光星、星雲星団、その他の天体、す べてを調べたい場合は、1つ1つカタログを開いて調べていくのは大変です。

そこで、天体データベースを構築することをお勧めします。

PIXYシステム2の「Star Database」デスクトップを開き、「Register Catalog」を選ぶと、天体データベースが構築され、指定したカタログがデー タベースに登録されます。

天体データベースがあれば、「View Multiple Catalog Chart」で星図を表示 した時には、「Add Stars in Database」を選んで、データベース内の天体を すべてプロットすることができます。また、「Cross Identification」でも、 Identify With Databaseと指定して、データベース内の天体をすべて調べるこ とができます。

以下のチュートリアルページでは、図解付きで、PIXYシステム2を使ったカタ ログの調べ方や、天体データベースの構築の仕方を紹介しています。

カタログの調査
http://www.aerith.net/misao/pixy/tutorial/catalog-j.html
天体データベースの構築
http://www.aerith.net/misao/pixy/tutorial/database-star-j.html

MISAOプロジェクトでも、天体データベースを構築し、活用しています。そこ には

サポートしているカタログ一覧
http://www.aerith.net/misao/pixy/catalog.html

にあるカタログのうち、GSC、USNO-A1.0/2.0、Tycho/Tycho-2 Catalogueといっ た、全天恒星カタログを除いた、すべてのカタログ、およそ150万個の天体が 登録されています。

この天体データベースのサイズは、圧縮すると110MBほどですが、ハードディ スクに展開すると、3GBほどになります。

PIXYシステム2では多くのカタログをサポートしているため、ゼロから天体デー タベースを構築するには、時間がかかります。ハードディスクに充分な空きが あり、自分ですべての天体について調べたいと思っている方には、MISAOプロ ジェクトで使用している天体データベースをお送りすることも可能です。

PIXYシステム2を実行するには、JDK (Java Development Kit)など、サイズの 大きな、いくつかのソフトウェアが必要になります。それらをダウンロードす ることが困難な方には、天体データベースも含めて、必要なソフトウェアをす べて揃えた「PIXYシステム2・スタートアップCD」をお送りすることも可能で す。

ご希望の方は、吉田誠一(comet@aerith.net)までご連絡下さい。

P.S.
過去のMISAOプロジェクト・アナウンスメイルは

http://www.aerith.net/misao/index-j.html
で閲覧できます。

--
吉田 誠一 / Seiichi Yoshida
comet@aerith.net
http://www.aerith.net/index-j.html

Copyright(C) MISAO Project (comet@aerith.net). All rights reserved.