MISAO Project

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2001年7月16日

    MisV新変光星の同定調査    

MISAOプロジェクト・アナウンスメイル (2001年7月16日)

MISAOプロジェクトの吉田誠一です。

MISAOプロジェクトで発見された新変光星は、5月30日現在、1119個に達してい ます。しかし、これらの変光星の多くは、2夜もしくは3夜の観測しかなく、 どのような変光星であるか、そのタイプは不明なものが多くあります。

その中には、もしかしたら新星や激変星といった、貴重な天体が含まれている かもしれません。それを確かめるためには、DSS (Digitized Sky Survey) の ような画像を調査する必要があります。ですが、すべての新変光星について画 像を確認するのは、時間がかかります。

これまでMISAOプロジェクトでは、新変光星を発見した場合は、GSC 1.1、 USNO-A2.0 という2種類の恒星カタログ、及び IRAS Point Source Catalogue という赤外線カタログをチェックし、天体のデータが記録されていないかどう かを調べていました。これらのカタログに載っていれば、新星や激変星ではな いと判断できます。

しかし、MISAOプロジェクトで発見される新変光星は暗いものが多いためか、 これらのカタログにデータが記載されていない天体が、非常に多くありました。 そのため、新変光星の中から注目に値する新星・激変星の候補を絞り込むこと ができませんでした。

最近になって、新しい恒星カタログ、赤外線カタログが多く入手できるように なりました。そこで、イギリスのJohn Greaves氏と吉田誠一は、改めてすべて のMisV新変光星について、カタログにデータが記載されているかどうかを調べ てみました。

具体的に調査したカタログは、下記の通りです。

  • 2MASS (The Two Micron All Sky Survey)
    http://www.ipac.caltech.edu/2mass/

    全天に渡る赤外線カタログです。現在は全天の半分のデータだけが公開され ていますが、2002年にはすべてのデータが公開されます。約3億個のデータ を含み、非常に暗い星まで網羅されています。従来の恒星カタログと同等以 上の精度で位置が求められています。JバンドとKバンドの等級から、天体が 赤色変光星かどうかを判定することも可能です。下記のサイトで検索できま す。

    GATOR
    http://irsa.ipac.caltech.edu/applications/Gator/

  • UCAC1 (USNO CCD Astrograph Catalog)
    http://ad.usno.navy.mil/ucac/

    16等までの恒星の高精度な位置カタログです。2002年には UCAC2 が公開さ れ、2003年には全天を網羅する予定です。下記のサイトで検索できます。

    VizieR Service
    http://vizier.u-strasbg.fr/cgi-bin/VizieR

  • GSC 2.2 (Guide Star Catalog II)
    http://www-gsss.stsci.edu/gsc/gsc2/GSC2home.htm

    おなじみの全天恒星カタログ GSC 1.1 の次期バージョンです。GSC 1.1 で は13〜16等ほどまでしか含まれていませんでしたが、GSC 2.2 では19等まで のデータが含まれています。2つのバンドでの等級も記録されています。 GSC 2.2 は約4億個の恒星データを含んでいます。最終版の GSC 2.3 は、 2002年に公開されます。GSC 2.2 のホームページで検索できます。
  • MSX5C (Midcourse Space Experiment Point Source Catalog)
    http://www.ipac.caltech.edu/ipac/msx/msx.html

    銀河面の赤外線カタログです。非常に暗い星まで含まれており、2MASSのデー タが公開されていない箇所では、特に重宝します。下記のサイトで検索でき ます。

    VizieR Service
    http://vizier.u-strasbg.fr/cgi-bin/VizieR

最近のカタログには暗い星が多く含まれています。特に、CCDカメラでは明る く写るミラ型のような赤色変光星は、ほとんどが2MASSにデータが記載されて います。

この調査により、1119個のうち、いずれのカタログにも記載されていない天体 は、わずかに27個までに絞り込まれました。

残った27個についても、John Greaves氏と吉田誠一が、下記のサイトで過去画 像をチェックした結果、新星や激変星ではないことが判明しました。

USNO Flagstaff Station Integrated Image and Catalogue Archive Service
http://www.nofs.navy.mil/data/FchPix/cfra.html

Astronomical Image On-line Access Interface
http://dss.mtk.nao.ac.jp/

今回の同定の調査結果は、MISAOプロジェクトのホームページで公開されてい る、新変光星のカタログで見ることができます。

また、7月9日に発行された IBVS 5135

The 76th Name-List of Variable Stars
http://www.konkoly.hu/cgi-bin/IBVS?5135

では、179個のMisV新変光星に正式な符号が与えられました。今後、MisV0001 は「いて座V4652星」、MisV0002は「ぎょしゃ座V523星」と呼ばれることにな ります。これらの符号も、ホームページで公開されている新変光星のカタログ で見ることができます。

P.S.
過去のMISAOプロジェクト・アナウンスメイルは

http://www.aerith.net/misao/index-j.html
で閲覧できます。

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吉田 誠一 / Seiichi Yoshida
comet@aerith.net
http://www.aerith.net/index-j.html

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