MISAO Project

English version       Home Page       Updated on August 18, 1999

1999年8月15日

    MISAO画像に写った小惑星    

MISAOプロジェクト・アナウンスメイル (1999年8月15日)

MISAOプロジェクトの吉田誠一です。

現時点までに、MISAOプロジェクトのデータベースに登録された上尾サーベイ チーム(門田健一、吉田誠一)のCCD画像は、1998年3月7日から1999年7月30日ま での、合計4188枚に達しています。

上尾サーベイチームの画像はすべて、PIXYシステムで検査し、新天体や新変光 星の捜索、及び既知変光星の光度データの取得を行っています。8月8日発行の アナウンスメイルで報告しました通り、これまでに134個の新変光星を発見し ています。しかし、彗星や小惑星、新星、超新星の発見は、これまで1つもあ りません。

実は、小惑星に関しては、非常に奇妙な事態が続いていました。これまでの 4188枚の画像からは、新小惑星どころか、既知の小惑星すら、わずかに2個し か検出されていないのです。

PIXYシステムによる自動新天体捜索では、ある画像に小惑星が偶然写っていて、 同じ写野を撮影した過去の画像があれば、小惑星が新天体候補として検出され なければいけません。しかし、これまでに検出された小惑星は、2月26日発行 のアナウンスメイルで紹介した (4) Vesta と、1月にM66を撮影した画像から 検出された (349) Dembowska の2個しかありませんでした。

これが、小惑星が偶然写る確率がそれほど低いということなのか、それとも PIXYシステムにバグがあってきちんと新天体候補を検出できていないのか、を 検証してみました。上尾サーベイチームの画像からはせいぜい16等までしか検 出されないので、1000番までの小惑星について、これまでの上尾サーベイチー ムの画像の写野内に入っていたかどうかを調べてみました。すると、42個の小 惑星が、上尾サーベイ画像の写野内にあり、かつ極限等級よりも明るかったこ とが分かりました。

このうち、現在の活動で主に使用している焦点距離が530mm以上の画像につい て調べてみると、次の通りでした。

小惑星年月日光度焦点距離Lm.結果
( 6) Hebe 1999年 7月 7日 8.9 530mm 14.0
( 75) Eurydike 1999年 2月 6日 13.0 990mm 16.7
( 93) Minerva 1999年 1月22日 12.0 990mm 15.8
(148) Gallia 1999年 4月29日 12.1 530mm 14.3
(159) Aemilia 1999年 4月14日 13.2 530mm 15.3
(167) Urda 1999年 4月 8日 13.9 530mm 15.4
(208) Lacrimosa 1999年 5月 1日 13.5 530mm 15.3
(230) Athamantis 1999年 4月14日 10.5 530mm 15.3
(243) Ida 1999年 7月15日 13.8 530mm 14.1 ×
(349) Dembowska 1999年 1月 7日 10.3 990mm 16.0
(354) Eleonora 1999年 7月 7日 11.3 530mm 14.1
(454) Mathesis 1999年 4月29日 13.4 990mm 14.3 ×
(483) Seppina 1999年 5月20日 13.1 530mm 15.2
(527) Euryanthe 1999年 4月 8日 13.7 530mm 14.3 ×
(538) Friederike 1999年 5月 8日 13.9 530mm 14.6
(641) Agnes 1999年 4月16日 15.5 990mm 15.8
(644) Cosima 1999年 7月 7日 14.3 530mm 14.7 ×
(653) Berenike 1999年 4月30日 13.1 530mm 15.0 ×
(656) Beagle 1999年 4月14日 14.0 530mm 15.3 ×
(666) Desdemona 1999年 4月14日 15.2 530mm 15.5 ×
(780) Armenia 1999年 6月 9日 13.2 990mm 16.2
(803) Picka 1998年11月23日 14.0 720mm 15.5
(825) Tanina 1999年 1月 7日 14.3 990mm 16.2
(863) Benkoela 1999年 4月14日 13.7 530mm 14.4

1999年 5月 8日 13.5 530mm 14.3
新天体候補として出力されていたが、過去画像がないために無視されていた。
画像が1枚しかなく、実在を確認できなかった。
× 星像が検出されていなかった。
小惑星の像が見当たらない。

写野に入った小惑星は多くが新天体候補として出力されていました。しかし、 いずれも過去画像が存在しないために、単に星表に記載されていないだけのふ つうの星と区別できなかったために、無視していたことが分かりました。予報 光度が極限等級に近い小惑星は、ほとんど検出されていませんでした。

尚、(230) Athamantis だけは、過去画像が存在しますので、新天体候補とし て出力されていたはずです。当時の記録が残っていないので確かではありませ んが、おそらく、過去画像と焦点距離が大きく異なっている(180mmと530mm)た めに、出力された結果を無視してしまったのだと思います。

この結果から、次のようなことが分かります。

  • 小惑星が偶然に写る可能性はかなり低い。
    4000枚以上撮影していながら、わずかに42個でした。発見した新変光星の 方がずっと多いです。
  • 現在の上尾サーベイチームの画像には、膨大な新天体が埋もれている可能性がある。
    これまでに発見した134個の新変光星は、いずれも過去の画像と比較して 変光を捉えたものです。しかし、そのような過去画像がある領域には、小 惑星が偶然写っている、ということがありませんでした。上尾サーベイチー ムでは、小惑星がいなそうな場所を集中的に撮影している、ということは ありません。よって、現時点では、大部分の画像がまだ過去画像がなく、 過去画像があるわずかな画像から、変光星が発見されている、ということ になります。上記の小惑星が写っていた画像には、未知の変光星が多数残 されていると思われます。
  • 13等程度までの新天体は自動検出できる。
    これまでの小惑星も、13等程度までならほぼ確実に新天体候補として出力 されていました。今後過去画像が揃ってくれば、13等程度までの新天体は 自動的に検出されることになると思います。

P.S.
過去のMISAOプロジェクト・アナウンスメイルは

http://www.info.waseda.ac.jp/muraoka/members/seiichi/misao/index-j.html
で閲覧できます。

--
吉田 誠一 / Seiichi Yoshida
seiichi@muraoka.info.waseda.ac.jp  GFB03015@nifty.ne.jp
http://www.info.waseda.ac.jp/muraoka/members/seiichi/index-j.html

Copyright(C) MISAO Project (comet@aerith.net). All rights reserved.