MISAO Project

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1998年 9月 2日

    新しいMISAOプロジェクトのホームページ    

MISAOプロジェクトの吉田誠一です。久しぶりにプロジェクトの進捗状況をご 報告致します。

プロジェクトの作業が一段落してきたので、MISAOプロジェクトのホームペー ジを一新しつつあります。

http://www.info.waseda.ac.jp/muraoka/members/seiichi/misao/index-j.html

以下のメイルの内容について、詳しいことは上記ホームページに情報がありま すので、是非ご覧になってみて下さい。

MISAOプロジェクトに関連して、門田健一氏と私の2名で、茨城県美和村の花 立山天文台、通称「美スター」(びすたー、と読みます)で美スターサーベイ を行っています。広角レンズとCCDによる広域サーベイです。

美スターサーベイの目的の1つは、PIXYシステムなど、MISAOプロジェクトで 無料で制作、配布しているソフトウェアを使って実際に新天体を発見し、ソフ トウェアの有効性を証明することです。

PIXYシステムは、天体画像を自動で検査するソフトウェアで、上記ホームペー ジで公開しています。これまでに美スターサーベイで得られたCCD画像等を元 に、システムの改良に取り組んで来ました。その結果、7月末までに、なんと か実用段階に達しました。実際、既に美スターサーベイで得られた画像の検査 はPIXYシステムで行っています。

なお、PIXYシステムは以前はUNIX上でしか動作しませんでしたが、6月にすべ てJava言語で書き直したので、現在はWindows上でも動作するようになってい ます。

PIXYシステムの実行には、GSCやUSNO等の恒星カタログのCD-ROMが必要です。 画像からすべての星像を検出した後、これらのカタログと照合して、カタログ に載っていない「新天体候補」や、カタログに載っている明るさと違っている 「変光星候補」、カタログに載っているのに実際には写らなかった「カタログ エラー候補」をリストアップします。

35mmレンズとCCDで撮影した画像(上記ホームページで公開されています)を 検査した結果がどのくらいになるか紹介します。画角は22x15度弱で、この中 に約9等までの恒星がおよそ3500個ほど写っていました。実際には11等級から 13等級までの、およそ1万個から2万個の星が写っているようですが、数が多す ぎるので、現在のPIXYでは3500個程度までにしています。このうち、だいたい 画像1枚あたり数個の「新天体候補」が5〜10個前後、「カタログエラー候補」 が数個、「変光星候補」が約30個ほど、PIXYシステムによって見つかるようで す。なお、検査時間は画像1枚あたり15分ほどです。望遠鏡で撮影した写野の 狭い画像では恒星数が少ないので、5分程度で終わるようですが、広角の場合 は恒星数が1桁多いので時間がかかります。

ですが、これらの「要注意天体」の大部分は、既に知られている変光星です。 そのため、新天体を発見するためには、PIXYシステムでGSC等と照合するだけ でなく、既に知られている変光星との同定も行う必要があります。

7月中旬以降、PIXYシステムの出力したすべてのデータを既知変光星等と同定 するプログラムを作成していました。現在は、変光星一般カタログ、IRAS天体、 星雲星団などに載っている天体との同定が、ほぼ自動でできるようになってい ます。

その結果、上で延べた画像1枚あたり数十個の「要注意天体」の大部分は、既 知変光星と同定されました。ただ、画像1枚あたり5〜10個ほどの未知の要注 意天体は残るようです。これらはほぼすべてGSCにも載っている星で、「新天 体」ではありませんが、明るさがだいぶ違うので「新変光星」かもしれません。 いずれにせよ、それを確かめるためには今後も追跡観測をする必要があります ので、これらの天体は「MISAO天体」として登録しておきます。美スターサー ベイで見つかった「MISAO天体」はホームページで公開しています。もしかし たらこの中に未知の貴重な天体が入っているかもしれません。それをどなたか が観測して確かめた場合、発見の栄誉はその方のものとなります。

残念ながら、自動同定システムは上記ホームページでも公開されていません。 その理由は、自動同定には変光星一般カタログ、IRASカタログなどのカタログ を参照する必要があるのですが、これらの配布/公開の許可を得ていないため です。もし配布許可を得られれば、PIXYシステムや自動同定システムと合わせ てCD-ROM化して、誰でも自宅で新天体の捜索ができることになります。配布は 無理でも公開できることになれば、WWWで同定システムを公開します。この場 合は、MISAOプロジェクトのホームページを見にいって、PIXYシステムで見つ かった「要注意天体」の位置を入力して、その位置に既知変光星や既知の小惑 星などがあるかどうか調べる、という手順になるでしょう。

尤も、利用しているカタログ自体は公開されているものばかりですので、同定 結果自体の公開は問題はありません。ですから、当面は何か見つかったら私に 「ここに何かあるけどこれは何?」とメイルで聞く、というのが唯一の解にな ります (^^;

新天体発見のためには邪魔な既知変光星ですが、これらの観測データもやはり 貴重なものとなります。MISAOプロジェクトでは、未知の要注意天体にMISAO番 号を付けて公開するとともに、測定した画像にあったすべての既知変光星の明 るさのデータを蓄積して公開します。美スターサーベイの例では、35mmレンズ とCCDの画像で1枚あたり500個ほどの変光星が写ります。3500個中500個です から、7個に1個の割合で変光星、ということになります(1万個以上の星すべて を検出するとこの割合は変化するとは思います)。

美スターサーベイの結果はすべてホームページで公開します。各画像のページ では、検出された既知変光星の位置をマークアップしたり、その星の検出光度 やカタログに載っているデータを参照できるようになっています(結構面白い ので是非ご覧になってみて下さい (^^))。

もし貴方が自分の画像に新天体がないかどうか確認したいだけでなく、写って いる既知天体の明るさの情報も活用したいと考えているのならば、私に画像を 送って頂ければ、測定してMISAOプロジェクトのページで公開します。測定結 果もご本人にお返しします。PIXYシステムをどう使うのか良く分からない、と いう方も、画像を頂ければこちらで測定します。でも、まだ測定していない画 像が私の手元にたくさんあるので、画像を頂いても即日結果をお返しするよう なことはできないと思います。

なお、これまでの経験では、GSCやUSNO等の恒星カタログには不備が多くて、 やたらたくさんの「新天体候補」が見つかります。ホームページで公開してい るMISAO天体にも、「単にカタログに載っていないだけで実際にはただの星」 というのが多く入って来ると思います。ですから、これらのソフトウェアで検 査した結果「新天体候補」を新天体として報告する前に、DSS等で良く確認す る必要があります。日を置いてもう一度同じ場所を撮影した画像も確認に役に 立ちます。

ところで、今年の春頃にはMISAOホームページでPIXYシステムが利用できるよ うになっていましたが、現在は公開していません。この理由は、1つにはPIXY システムがまだ多種多様な画像に対応しきれていなくてすぐエラーになる、と いうことがありました。ですが、もっと根本的に、通信量と処理時間が現実的 でないという理由もあります。まず、画像を検査するので画像を送りますが、 これがだいたい数百KBで、FITSなら1MBを越えます。PIXYシステムの処理はだ いたい15分と書きました。その間ずっと接続しっぱなしというのは、電話回線 の場合は難しいです。また、3500個のデータを出力すると、それだけで1MBを 越えてしまいます。自動同定結果もまた500KB〜1MBになります。これだけの量 を送り返すのにも相当の時間がかかります。画像に写っている1万個以上の星 すべてを検出すれば、更に何倍にも増えてしまいます。以上より、現状ではと ても何枚もの画像をホームページで検査しようとは思えないと考えています。

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吉田 誠一 / Seiichi Yoshida
早稲田大学大学院理工学研究科情報科学専攻修士2年 村岡研究室
seiichi@muraoka.info.waseda.ac.jp  GFB03015@nifty.ne.jp
http://www.info.waseda.ac.jp/muraoka/members/seiichi/index-j.html

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