彗星の広場 (1996年2月)

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Updated on Feb. 3, 1996
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  • 1. 今月の彗星ランキング
  • 2. 今月の彗星の解説
  • 3. 今月の位置推算表
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    1. 今月の彗星ランキング

    1996年2月に見える彗星のランキングはこのようになりました。

    1月下旬に、明るい新彗星が立て続けに発見されました。シュチェパンスキー 彗星(C/1996B1)と百武彗星(C/1996B2)です。前者は今月から来月にかけて8〜9 等で見えるでしょう。後者はC/1995Y1に続いての百武裕司氏の2つ目の彗星で、 現在12等ですが、これからどうなるでしょうか。

    さらに、昨年のクリスマスの翌日、12月26日の朝に発見された百武彗星 (C/1995Y1)も明るくなってきました。眼視でもよく見えます。上旬は他に本田- ムルコス-パジュサコバ彗星とシュワスマン-ワハマン第3彗星がなんとか眼視 でも見られる可能性がありますが、難しいかもしれません。

    その他には、ウィルド第4彗星とコマスソラ彗星が予想よりも急激に明るくなっ ています。両者ともにこのままいくと11等になるかもしれません。今月は13等 ですが、写せる人は確認してみて下さい。

      第1位  シュチェパンスキー彗星(C/1996B1) 9→8.5等
    第2位 百武彗星(C/1995Y1) 9等
    第3位 シュワスマン-ワハマン第3彗星(73P) 10.5→11.5等
    第4位 本田-ムルコス-パジュサコバ彗星(45P) 11→17.5等
    第5位 コップ彗星(22P) 13→12等
    第6位 チュリュモフ-ゲラシメンコ彗星(67P) 12.5→13等
    第7位 ウィルド第4彗星(116P) 13→12.5等
    第8位 コマスソラ彗星(32P) 13→12.5等
    第9位 シュワスマン-ワハマン第1彗星(29P) 13.5等
    第10位 ガン彗星(65P) 14等
    第11位 ジャクソン-ネウイミン彗星(58P) 14等→15等
    第12位 ダレスト彗星(6P) 14→15等
    第13位 デビコ彗星(122P) 14.5→15.5等
    第14位 ブラッドフィールド彗星(C/1995Q1) 15→16等
    第15位 キロン彗星(95P) 15.5等

    また、惜しくも太陽に近いために見えませんが、明るさだけは明るいはずの彗 星に次のようなものがあります。

      番外1  ヘール-ボップ彗星(C/1995O1) 9等
    番外2 ポン-ウィンネッケ彗星(7P) 14等

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    2. 今月の彗星の解説

    2.1. シュチェパンスキー彗星(C/1996B1)

    1月27日、アメリカ・テキサス州のシュチェパンスキー氏によって、北斗七星 の尾の辺りに10.5等の新彗星、シュチェパンスキー彗星(C/1996B1 Szczepanski)が発見されました。発見当時彗星は回転花火星雲M101(7.6等)に 約1°にまで接近しており、M101を写した写真に偶然この彗星が写っていた、 という人もいるようです。現在の軌道では近日点通過は今月5日で、これから 地球に近付いてきて、今月末には0.55AUにまで接近してきます。

    彗星は現在北斗七星の尾のあたりにいて、明け方の天頂近くに見えています。 今月末には地球に0.55AUまで近付いてくるため、今月彗星はおおぐま座の尾→ りょうけん座→おおぐま座の後ろ足→こじし座、と天球上を大きく南下し、明 け方の空から衝の位置へまわってきます。さらに来月はこじし座→しし座の大 がま→うみへび座へと移動し、何と夕空に見えることになります。一方明るさ の方はあまり変わらず、今月から来月にかけてずっと8〜9等程度でしょう。

    今月上旬は北斗七星のミザール・アルコルとおおぐま座η星の中間あたりにい て、位置的には分かりやすいでしょう。その後南下していくと、すぐ近くには 明るい星はなくなりますが、代わりに近くに回転花火星雲M101、子持ち星雲 M51、M106、M94などの明るい銀河が集まっている場所を通過して行きますので、 彗星を探すついでにこれらを見て楽しむことができます。17日にはM106(8.3等) とNGC4449(9.3等)のちょうど間を通ります。来月になると比較的目印となる星 が多くなります。まず2月29日におおぐま座ν星(3.5等)に1°まで接近した後、 3月8日から17日頃はししの大がまを縦断し、10日にγ星(2.3等)に1°、13日に η星(3.5等)に1°30′、16日にレグルス(1.4等)に1°まで接近します。その後 18〜20日にはシュワスマン-ワハマン第1彗星から約3°くらいのところを通っ ていきます。29日にはうみへび座ι星(3.9等)に1°まで接近します。彗星の動 きが速いため、恒星との接近は1日ずれただけでも結構距離が離れてしまいま す。

    この後彗星はさらに南下を続け、5月いっぱいで夕方の西空に沈みます。その 頃の明るさは13等です。そしてその後は天の南極に近づき、もう二度と地平線 から昇ってくることはないでしょう。

    2.2. 百武彗星(C/1995Y1)

    クリスマスの翌日12月26日の朝、うみへび座で鹿児島県の百武裕司氏によって 発見された新彗星、百武彗星(C/1995Y1 Hyakutake)が、今月24日の近日点通過 を迎えて明るくなってきています。1月上旬にはまだ11等級で見るのが難しかっ たのですが、新月の後、1月下旬には既に9等級になっており、眼視でも見るこ とができました。彗星は今月もずっと9等で明け方の空に見えるでしょう。明 け方だとまわりの明かりも少ないですので、寒いですが、月がない時に是非見 てみましょう。

    彗星は現在へびつかい座の足元にいて、今月はへび座(尾)からわし座へと、天 の川の中をさか上っていきます。薄明開始時(東京で5:00頃)の高度はずっと30°く らいで、みかけ上左に真横に動いていきます。

    今月も彗星はわりと明るい星の多い区域を移動していきますので、9等という 明るさから考えても、視野に導入するのはそんなに難しくないでしょう。9日 には球状星団M14(7.5等)に約2°、21日には視直径52′の球状星団IC4756(5.0 等)に約1°30′にまで接近します。尚、1日には本田-ムルコス-パジュサコバ 彗星から約6°程のところにいます。

    彗星は今後しばらく明け方の空にいます。5月になると太陽から離れ始め、そ の後は秋に暗くなるまでずっと観測できる位置にいます。

    2.3. シュワスマン-ワハマン第3彗星(73P)

    核が分裂し、10月上旬に6等までバーストしたシュワスマン-ワハマン第3彗星 (73P/Schwassmann-Wachmann 3)を観測できるのも今月が最後となりました。11 月までは7〜8等と明るく見えていましたが、12月から1月にかけては大きく広 がって淡くなってきたようです。先月は9〜10等で見えていたようですが、私 は眼視では確認できませんでした。今月はさらに地平高度が下がりますので、 眼視で見ることは困難でしょう。

    今月は彗星はみずがめ座からくじら座とうお座の真ん中へと移動していきます。 夕空低く、かなり見にくい位置になってきました。2日には夕空で金星と土星 が約1°まで接近する美しい現象が見られますが、その時その左に約8°離れた ところに見えています。また、12日にはくじら座β星(3.6等)の右約3°のとこ ろにあります。この頃が事実上最後のチャンスで、それを過ぎると太陽に追い 付かれてしまいます。

    1月までの観測からだと、彗星はどうやら明るいまま西空に沈むことになりそ うです。大規模に分裂してダストが大量に放出されたため、なかなか元には戻 らなかったようです。この後彗星は7月に明け方の空に姿を現します。バース ト後の光度式からの予報光度は13〜14等ですが、おそらくその頃には元の明る さに戻っているでしょう。デビコ彗星で盛り上がっているところに突然降って 湧いたシュワスマン-ワハマン第3彗星のバースト騒動でしたが、それもつい に今月で終止符が打たれることになりました。

    ところで、核が分裂したということは、主核でも元の核よりもかなり小さくなっ てしまった、ということですので、次回の回帰では相当暗くなってしまうよう に思います。もしかしたら、分裂した核がそれぞれ観測されることになるかも しれません。

    2.4. 本田-ムルコス-パジュサコバ彗星(45P)

    12月下旬に近日点を通過し、その頃夕空で6等台にまでなった本田-ムルコス- パジュサコバ彗星(45P/Honda-Mrkos-Pajdusakova)が、先月下旬から再び明け 方の空に見えています。ですが、先月下旬に見た時にはともに観測した人には 見えたのですが、私には確認できませんでした。かなり淡くなっているようで す。

    彗星は現在地球に約0.2天文単位にまで接近しており、今月はへびつかい座→ へび座(頭)→おとめ座とうしかい座の間→しし座、というように天球上を高速 に移動していきます。そして観測条件はどんどんよくなっていくのですが、光 度の方は今月上旬に11→13等、中旬に13→16等、下旬に17→18等と急落してい くでしょう。眼視では既に難しく、写真でも事実上今月半ばで観測はできなく なってしまいます。6等台で観測されてからたったの1カ月半でもう消えてしま うとは、ずいぶんとはかないものですね。

    彗星は1日には百武彗星から約6°ほど離れたところに見えています。4日には へびつかい座δ星(2.7等)に 2°まで接近し、視野に導入する際の目印とする ことができるでしょうが、その後は明るい星のない区域に入ってしまいます。 星雲星団とは、2日に球状星団M10(6.5等)、M12(6.5等)に 3°まで、8日には球 状星団M5(5.8等)に 3°まで接近します。

    この彗星はもともと近日点通過の前後で急激な増減光をみせることで有名でし たが、今回帰ではその予想を上回る急激な増光を見せました。予想よりも少し 遅れて10月に初めて確認された時には、光度は21等と予想よりも4等程度暗い ものでした。その後11月の中旬には16等でとらえられていますが、この時点で も予想より2等程度暗いままでした。ところが12月に入って、中旬に9→8等、 下旬には8→7等と、近日点通過の直前になって急増光し、明るくなってくれま した。これらの観測から今回帰での光度式を計算してみると、

    m1 = 16.0 + 5 log Δ + 30 log r
    となります。logrの係数が30になっていて、この彗星の近日点通過前後で急 激に増減光する、という特徴をよく表しています。

    2.5. コップ彗星(22P)

    7月2日に近日点を通過するコップ彗星(22P/Kopff)が急激に増光してきます。 現在彗星は明け方のてんびん座にいてへびつかい座の足元に移動していきます。 今月は13等から12等になるはずです。

    彗星はこの後3月に11等、4月には10→9等、5月に8等と増光して、6〜7月には ほぼ衝の位置で7等になります。近日点通過の頃に衝と、この彗星としては最 良の条件で観測できます。今年回帰を予想されている彗星の中で最も期待でき るものです。また、この頃すぐ近くに7等にまで明るくなったヘール-ボップ彗 星も見えています。その後は年末になってもまだ14等と、今年1年中観測でき ます。その後も1997年2月に16等で夕空に沈むまで長期に渡って観測できる彗 星です。

    彗星は2月1日にはてんびん座γ星(3.9等)に30′、5日にはη星(5.4等)に 1°、 9日にはθ星(4.2等)に1.5°まで接近しますので、1月30日から2月11日くらい まではこれらの星を頼りすれば探しやすいでしょう。また、下旬の29日にはへ びつかい座φ星(4.3等)に20′にまで接近し、27日から3月2日くらいまではこ の星が目印となります。

    尚、彗星は2〜3月はずっとガン彗星と小惑星セレスと10°以内に接近していま す。2月21日にはガン彗星と約30′にまで接近します。この時の明るさはコッ プ彗星が12等、ガン彗星が14等です。もう少し明るいといいのですが、写真で は狙い目でしょう。この前後、15日から25日くらいの間は両彗星は 1°程度の 距離を保っていますので、コップ彗星がガン彗星を追い抜いていく様子を連続 写真で記録することもできるでしょう。また、来月9日にはセレスと約10′に まで接近します。この時の明るさはコップ彗星が11.5等、セレスが8.3等です ので、こちらの方が写しやすいでしょう。3月5日から12日くらいまでは両者が 1°以内に接近しています。

    2.6. チュリュモフ-ゲラシメンコ彗星(67P)

    先月1月17日に近日点を通過したチュリュモフ-ゲラシメンコ彗星 (67P/Churyumov-Gerasimenko)は、7月3日に17等で初めて捕らえられた後、8月 から10月にかけて14等、11月に13等、そして12月から1月にかけて12.5等と順 調に増光してきました。彗星は今月は夕方の南の空で、うお座→おひつじ座→ おうし座へと移動していきます。光度は12〜13等程度でしょう。ですが今月は すぐ近くには目印となる明るい星がないので、導入するのが難しいと思われま す。来月は3月6〜7日にかけて、プレアデス星団の北3°のところを通過してい きます。

    彗星は今後しばらく夕空に見えますが、光度は3月に14等、4月に15等、5月に 16等、6月に17等と減光して見えなくなって行きます。

    2.7. ウィルド第4彗星(116P)

    8月31日に近日点を通過するウィルド第4彗星(116P/Wild 4)が予想よりも急激 に明るくなってきました。今回が初回帰の彗星で、前回帰でも比較的急な光度 変化を見せましたが、今回はそれを上回っています。昨年2月に検出された時 は20.5等でした。その後太陽と合になり、再び11月初めに観測された時には17 等になっており、その後12月下旬には14等、そして先月は12.5〜13等で観測さ れています。これらの観測から光度式を求めてみると、

    m1 = 0.0 + 5 log Δ + 30.0 log r
    となります。当初の予報では1月には14〜15等のはずでした。このまま増光を 続ければ、7月に西空に沈む時には10〜11等になるかもしれません。写真に写 せる人は是非確認してみて下さい。

    現在彗星はふたご座の真ん中にいます。衝をすぎたばかりで、一晩中見えてい ます。7日の夕方には、ふたご座のι星(3.8等)とほんの 5′にまで接近し、こ の前後10日間ほどは、この星が目印となります。但し、5日が満月ですので、 見るのは厳しいかもしれません。

    2.8. コマスソラ彗星(32P)

    6月10日に近日点を通過するコマスソラ彗星(32P/Comas Sola)も予想よりも急 激に増光してきています。昨年の8月には19〜20等でしたが、その後9月上旬に 18等、10月中旬に16等、11月中旬に15.5等となっています。これらの観測から そのまま光度式を求めてみると、

    m1 = -0.5 + 5 log Δ + 35.0 log r
    となります。これを元に予報を出してみると、今月は13→12.5等と増光し、そ の後4月に西空に沈む時には11〜12等になることになります。但し、ウィルド 第4彗星と違って、最終観測が11月の15.5等ですので、この式はあまり信頼度 はありません。ですが、期待を込めてこの式で予報を出してみました。今月ど の程度の明るさになっているのか、写真に撮れる人は是非確認してみて下さい。 予報よりも暗く14〜15程度であれば、春にもせいぜい14等で終わることになる でしょう。

    今月は彗星は夕空をうお座からおひつじ座へと移動していきます。7日にはう お座ο星(4.3等)に10′弱にまで接近しますが、この日はちょうど満月となっ てしまいます。その後はあまり明るい星が近くにないので見つけにくいのです が、来月3月22日には金星と約1°30′にまで接近します。3月中旬から下旬の 新月の頃は金星に近く、これを頼りに導入できるでしょう。また、4月に西に 沈む頃には、プレアデス星団と約2°にまで接近しています。

    2.9. シュワスマン-ワハマン第1彗星(29P)

    バースト彗星として有名なシュワスマン-ワハマン第1彗星 (29P/Schwassmann-Wachmann 1)が今月は衝を迎えます。先月も中旬に13.5等で とらえられており、やはりこの程度の明るさを平常光度と思っていた方がいい ようです。コンスタントに確認しておくべきでしょう。

    彗星は今年6月下旬に西空に沈むまで、ずっとししの足もとに位置しています。 残念ながらすぐ近くには目印となる明るい星がなく、正確に導入するのは難し いです。

    2.10. ガン彗星(65P)

    7月24日に近日点を通過するガン彗星(65P/Gunn)は思ったよりも少しだけ暗い ようです。先月は中旬に15等でとらえられています。これから徐々に増光しま すが、このままだと近日点通過の頃はほぼ衝の位置で13等ぐらいでしょう。

    彗星は今月はコップ彗星、小惑星セレスとともに、明け方の東の空で、てんび ん座からへびつかい座の足元へと移動していきます。この3者は今月から来月 にかけてずっと10°以内に接近して見えています。今月21日にはガン彗星とコッ プ彗星が約30′にまで接近します。その時の明るさはコップ彗星が12等、ガン 彗星が14等です。この前後15日から25日くらいの間は約1°程度の距離を保っ ています。

    また、彗星は2月6日にはてんびん座θ星(4.2等)に1.5°まで接近しますので、 9日まではこのてんびんの東の腕の星を頼りに導入できるでしょう。来月3月6 日にはへびつかい座φ星(4.3等)に1°弱にまで接近し、4日から8日頃にはよい 目印となります。

    2.11. ジャクソン-ネウイミン彗星(58P)

    10月6日に近日点を通過しても増光を続け、11月から12月にかけてに11等にま でなったジャクソン-ネウイミン彗星(58P/Jackson-Neujmin)ですが、先月は急 に淡くなって、13等程度でした。どうやら元の明るさに戻り始めたようです。 11月以降の観測からの光度式は、ちょうど近日点通過前の平常状態の式よりも 5.5等程明るいものになっています。それによると今月は14→15等と減光して いくことになりますが、実際にはもっと急激に暗くなっていくと思われます。 ついこの前までは明るかったのに、もう今月で見えなくなってしまうかもしれ ません。

    彗星は現在夕方の南の空に見えていて、くじら座からおうし座へと移動してい きます。あたりに明るい星はなく、彗星自体が暗くなってしまったので、見る のはかなり困難でしょう。

    2.12. ダレスト彗星(6P)

    昨年7月27日に近日点を通過したダレスト彗星(6P/d'Arrest)ですが、11月に11 等になった後、その後どうなったのか分かりません。位置的にはずっと夕空の くじら座に見えていましたので、暗くなってしまったのかもしれません。8月 に8等になってから11月に11等になるまでの観測からの光度式によると今月は 14等から15等となりますが、実際にはもっと暗い可能性があります。

    彗星は今月もくじら座を北上していきますが、もう夕空かなり低くなっていて、 あたりには明るい星もなく、光度的にも見ることは難しいでしょう。来月には 西空に沈んでしまいます。

    2.13. デビコ彗星(122P)

    9月に日本人3人によって再発見されてから、10月にかけて6等に達した周期74 年の大物デビコ彗星(122P/de Vico)も今月が最後です。夕空にまわって11月に 11等まで暗くなった後、12月下旬からは再び明け方にまわってきているはずで すが、見えたという話は聞きません。もしかしたらかなり暗くなっているのか もしれません。

    今月は明るくても既に15等になってしまっており、位置的にもヘルクレス座の 手の先で目印になる星もなく、見ることはかなり困難でしょう。昨年夏以降の 彗星ブームの主役で、私が再び彗星を見るきっかけともなった星ですが、残念 ながらあとは静かに消えていくのみです。

    2.14. ブラッドフィールド彗星(C/1995Q1)

    8月にオーストラリアで突然肉眼彗星として発見されたブラッドフィールド彗 星(C/1995Q1 Bradfield)も、11月に11等にまで暗くなった後には観測されたと いう話を聞きません。位置的には夕空の天頂付近にありますので、こちらもや はり暗くなってしまったのでしょうか。

    彗星は今月も夕方の北の空高く、天頂付近に見えていて、ペルセウス座の手の 先からアンドロメダ座の足元へと移動していきます。光度は明るくても15→16 等ですので、いずれにせよ今月で最後です。久ぶりに肉眼で発見されるという 衝撃的な彗星で、デビコ彗星、シュワスマン-ワハマン第3彗星とともに彗星 ブームをもたらしてくれましたが、奇しくも他の2彗星と同時に消えることに なりました。

    2.15. キロン彗星(95P)

    小惑星から彗星になったキロン彗星(95P/Chiron)が今月2月にいよいよ初めて の近日点通過を迎えます。とはいっても、近日点距離が8.5AUもあるので、特 に急に明るくなるという訳ではなく、あいかわらず15.5等程度でしょう。彗星 は現在明け方に見えていて、おとめ座でスピカのすぐ右に10°ほど離れた位置 にいます。が、すぐ近くには明るい星がなく、導入するのはかなり難しいでしょ う。この状態は7月に西空に沈むまで続きます。せっかくの話題の彗星ですが、 見ることのできる人が少ないかもしれません。

    この彗星は近日点距離が大きいため、ここ数年間はほぼ同じ光度で観測するこ とができます。今シーズンは7月に西に沈むまでずっと15.5等でしょう。その 後太陽と合になり、また12月頃に明け方にまわってきます。そしてまた来シー ズンは春に衝となり、15.5等で観測されるでしょう。

    2.16. ヘール-ボップ彗星(C/1995O1)

    1995年7月に発見された、世紀の大彗星ヘール-ボップ彗星(C/1995O1 Hale-Bopp) です。発見以来ずっといて座で10等級で見えていましたが、昨年 11月から西空に沈み、しばらく観測できませんでした。ですがもう今月中旬に は薄明開始時には地平線の上に顔を出してきます。しかし本格的に観測できる のは来月中旬以降でしょう。その頃には彗星は8.5〜9等になっているはずです。

    来月には明け方の空で天王星・海王星・ヘール-ボップ彗星・木星が左からこ の順で一直線に並んで見えています。この状態は6月まで続きます。その後は 7等にまで明るくなったコップ彗星が接近してきます。

    ところで、南半球のオーストラリアなどでは、一足早く今月中旬からよく見る ことができるようになります。しばらく見えなかったので明るさが気になると ころですが、そろそろ情報も入って来るでしょう。

    2.17. ポン-ウィンネッケ彗星(7P)

    1989年以来、実に21回目の回帰を迎えたポン-ウィンネッケ彗星 (7P/Pons-Winnecke)ですが、今回帰はずっと太陽に近いため、全く見ることが できません。7月中旬にはようやく明け方の東の空低く見え始めますが、その 頃には既に18等となってしまいます。

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    3. 今月の位置推算表

    3.1. シュチェパンスキー彗星(C/1996B1)

    C/1996B1 Szczepanski
      年 月 日      α         δ        r     Δ    Elong   m1
    1996  1 28   14  6.20    53 46.8    1.463  0.801   109    9.2
    1996  2  7   13 25.61    51 15.5    1.459  0.691   119    8.8
    1996  2 17   12 29.43    46  1.6    1.468  0.600   133    8.6
    1996  2 27   11 27.73    36 20.0    1.491  0.549   150    8.4
    1996  3  8   10 35.72    23  7.1    1.527  0.557   159    8.6
    1996  3 18   10  0.05    10 17.7    1.574  0.628   150    9.0
    1996  3 28    9 38.91     0 24.9    1.631  0.749   137    9.5
    

    3.2. 百武彗星(C/1995Y1)

    C/1995Y1 Hyakutake
      年 月 日      α         δ        r     Δ    Elong   m1
    1996  1 28   16 41.00   -12 51.1    1.148  1.325    57    9.2
    1996  2  7   17 31.09    -6  5.6    1.094  1.257    56    8.9
    1996  2 17   18 22.19     1 31.7    1.062  1.237    55    8.7
    1996  2 27   19 12.32     9  4.7    1.056  1.267    54    8.7
    1996  3  8   19 59.70    15 43.8    1.076  1.337    52    8.9
    1996  3 18   20 43.07    21  6.8    1.121  1.436    51    9.3
    1996  3 28   21 21.81    25 16.4    1.186  1.549    49    9.7
    

    3.3. シュワスマン-ワハマン第3彗星(73P)

    73P/Schwassmann-Wachmann 3
      年 月 日      α         δ        r     Δ    Elong   m1
    1996  1 28   23 40.31   -10  9.8    1.893  2.464    44   10.3
    1996  2  7    0  1.74    -7 24.3    1.984  2.630    40   10.7
    1996  2 17    0 21.79    -4 49.1    2.074  2.791    35   11.0
    1996  2 27    0 40.74    -2 24.2    2.163  2.948    31   11.3
    1996  3  8    0 58.79     0  9.1    2.250  3.096    26   11.6
    1996  3 18    1 16.08     1 56.5    2.335  3.234    21   11.8
    1996  3 28    1 32.72     3 52.9    2.418  3.361    16   12.1
    

    3.4. 本田-ムルコス-パジュサコバ彗星(45P)

    45P/Honda-Mrkos-Pajdusakova
      年 月 日      α         δ        r     Δ    Elong   m1
    1996  1 28   17 53.74    -9 36.2    0.850  0.190    40   10.5
    1996  2  7   15 33.10     2 51.6    0.994  0.171    87   12.3
    1996  2 17   13 30.70    12 51.0    1.137  0.218   128   14.7
    1996  2 27   12 15.95    16 51.4    1.276  0.309   154   17.0
    1996  3  8   11 33.79    17 56.1    1.412  0.428   166   19.0
    1996  3 18   11 10.17    17 50.2    1.543  0.569   160   20.8
    1996  3 28   10 57.66    17 12.7    1.669  0.729   149   22.4
    

    3.5. コップ彗星(22P)

    22P/Kopff
      年 月 日      α         δ        r     Δ    Elong   m1
    1996  1 28   15 27.76   -14  5.6    2.166  2.214    74   13.5
    1996  2  7   15 47.34   -14 58.3    2.109  2.050    79   13.0
    1996  2 17   16  7.18   -15 41.8    2.052  1.889    84   12.5
    1996  2 27   16 27.19   -16 15.3    1.996  1.732    90   12.0
    1996  3  8   16 47.25   -16 38.7    1.942  1.582    95   11.5
    1996  3 18   17  7.21   -16 51.7    1.891  1.438   100   11.0
    1996  3 28   17 26.87   -16 54.9    1.841  1.303   105   10.5
    

    3.6. チュリュモフ-ゲラシメンコ彗星(67P)

    67P/Churyumov-Gerasimenko
      年 月 日      α         δ        r     Δ    Elong   m1
    1996  1 28    1 23.86    11 53.3    1.306  1.119    76   12.3
    1996  2  7    1 57.60    16  7.0    1.323  1.163    75   12.5
    1996  2 17    2 33.12    19 57.9    1.349  1.217    74   12.7
    1996  2 27    3 10.04    23 16.7    1.385  1.284    73   13.0
    1996  3  8    3 47.80    25 56.5    1.430  1.363    72   13.3
    1996  3 18    4 25.71    27 53.9    1.481  1.456    71   13.6
    1996  3 28    5  3.10    29  9.2    1.538  1.560    70   14.0
    

    3.7. ウィルド第4彗星(116P)

    116P/Wild 4
      年 月 日      α         δ        r     Δ    Elong   m1
    1996  1 28    7 34.81    27 40.6    2.542  1.585   162   13.2
    1996  2  7    7 25.90    27 49.6    2.501  1.593   150   13.0
    1996  2 17    7 19.27    27 47.2    2.461  1.625   139   12.8
    1996  2 27    7 15.72    27 34.9    2.422  1.675   128   12.6
    1996  3  8    7 15.60    27 14.6    2.384  1.740   118   12.5
    1996  3 18    7 18.86    26 47.5    2.347  1.815   109   12.4
    1996  3 28    7 25.28    26 14.4    2.310  1.895   101   12.3
    

    3.8. コマスソラ彗星(32P)

    32P/Comas Sola
      年 月 日      α         δ        r     Δ    Elong   m1
    1996  1 28    1 30.79     6 35.8    2.226  2.247    76   13.4
    1996  2  7    1 43.47     8 44.1    2.178  2.316    69   13.2
    1996  2 17    1 57.97    10 56.4    2.132  2.379    63   12.9
    1996  2 27    2 14.19    13 10.9    2.089  2.437    58   12.6
    1996  3  8    2 32.03    15 25.7    2.048  2.489    52   12.4
    1996  3 18    2 51.45    17 38.7    2.010  2.536    47   12.1
    1996  3 28    3 12.43    19 47.5    1.976  2.578    43   11.9
    

    3.9. シュワスマン-ワハマン第1彗星(29P)

    29P/Schwassmann-Wachmann 1
      年 月 日      α         δ        r     Δ    Elong   m1
    1996  1 28   10 25.72     6  1.3    6.247  5.365   151   13.6
    1996  2  7   10 21.73     6 14.4    6.248  5.302   162   13.6
    1996  2 17   10 17.33     6 31.0    6.249  5.268   172   13.6
    1996  2 27   10 12.78     6 49.6    6.251  5.266   173   13.6
    1996  3  8   10  8.40     7  8.5    6.252  5.295   163   13.6
    1996  3 18   10  4.44     7 26.4    6.253  5.353   152   13.6
    1996  3 28   10  1.16     7 41.7    6.254  5.439   141   13.6
    

    3.10. ガン彗星(65P)

    65P/Gunn
      年 月 日      α         δ        r     Δ    Elong   m1
    1996  1 28   15 43.34   -14 22.7    2.686  2.847    70   14.3
    1996  2  7   15 56.91   -15 14.5    2.663  2.700    77   14.1
    1996  2 17   16  9.62   -16  0.7    2.642  2.551    84   14.0
    1996  2 27   16 21.21   -16 42.1    2.621  2.403    91   13.8
    1996  3  8   16 31.42   -17 19.4    2.601  2.256    98   13.6
    1996  3 18   16 39.96   -17 53.8    2.583  2.114   106   13.4
    1996  3 28   16 46.47   -18 26.4    2.566  1.978   115   13.3
    

    3.11. ジャクソン-ネウイミン彗星(58P)

    58P/Jackson-Neujmin
      年 月 日      α         δ        r     Δ    Elong   m1
    1996  1 28    2 49.11     0 44.4    1.887  1.574    92   13.7
    1996  2  7    3  7.94     1 47.2    1.959  1.734    87   14.2
    1996  2 17    3 26.62     4  4.8    2.032  1.902    82   14.7
    1996  2 27    3 45.22     6  8.3    2.106  2.074    78   15.2
    1996  3  8    4  3.71     7 57.6    2.181  2.251    73   15.7
    1996  3 18    4 22.09     9 32.9    2.256  2.429    68   16.1
    1996  3 28    4 40.36    10 54.7    2.331  2.608    62   16.6
    

    3.12. ダレスト彗星(6P)

    6P/d'Arrest
      年 月 日      α         δ        r     Δ    Elong   m1
    1996  1 28    2 12.44    -7 56.3    2.342  2.281    81   13.9
    1996  2  7    2 25.71    -5 36.0    2.413  2.464    75   14.2
    1996  2 17    2 39.36    -3 24.9    2.484  2.646    69   14.5
    1996  2 27    2 53.31    -1 23.4    2.553  2.827    64   14.7
    1996  3  8    3  7.51     0 28.5    2.623  3.004    58   15.0
    1996  3 18    3 21.87     2 10.7    2.691  3.176    52   15.2
    1996  3 28    3 36.37     3 43.3    2.759  3.341    46   15.4
    

    3.13. デビコ彗星(122P)

    122P/de Vico
      年 月 日      α         δ        r     Δ    Elong   m1
    1996  1 28   18 22.13    17 51.5    2.121  2.624    49   14.3
    1996  2  7   18 30.32    18 13.0    2.259  2.698    53   14.7
    1996  2 17   18 36.59    18 49.0    2.394  2.751    58   15.1
    1996  2 27   18 40.87    19 37.3    2.527  2.785    64   15.4
    1996  3  8   18 43.00    20 35.3    2.657  2.803    71   15.7
    1996  3 18   18 42.86    21 40.1    2.785  2.808    78   16.0
    1996  3 28   18 40.24    22 48.1    2.912  2.805    86   16.2
    

    3.14. ブラッドフィールド彗星(C/1995Q1)

    C/1995Q1 Bradfield
      年 月 日      α         δ        r     Δ    Elong   m1
    1996  1 28    1 56.46    50 58.6    2.731  2.418    97   14.8
    1996  2  7    2  1.45    48 18.3    2.864  2.704    89   15.3
    1996  2 17    2  8.05    46 21.7    2.996  2.991    80   15.7
    1996  2 27    2 15.68    44 58.4    3.124  3.275    72   16.2
    1996  3  8    2 23.95    44  0.8    3.251  3.549    64   16.6
    1996  3 18    2 32.63    43 23.1    3.375  3.812    57   16.9
    1996  3 28    2 41.55    43  0.9    3.498  4.059    49   17.3
    

    3.15. キロン彗星(95P)

    95P/Chiron
      年 月 日      α         δ        r     Δ    Elong   m1
    1996  1 28   12 48.90    -8  7.0    8.454  8.021   112   15.5
    1996  2  7   12 48.59    -8  4.6    8.454  7.874   123   15.4
    1996  2 17   12 47.57    -7 57.3    8.454  7.743   133   15.4
    1996  2 27   12 45.93    -7 45.6    8.454  7.632   144   15.4
    1996  3  8   12 43.76    -7 30.0    8.454  7.547   154   15.3
    1996  3 18   12 41.21    -7 11.2    8.455  7.488   165   15.3
    1996  3 28   12 38.43    -6 50.2    8.455  7.460   175   15.3
    

    3.16. ヘール-ボップ彗星(C/1995O1)

    C/1995O1 Hale-Bopp
      年 月 日      α         δ        r     Δ    Elong   m1
    1996  1 28   19 10.77   -23 37.1    5.484  6.390    21    9.4
    1996  2  7   19 17.08   -23  3.1    5.389  6.222    29    9.3
    1996  2 17   19 23.11   -22 27.4    5.293  6.031    38    9.1
    1996  2 27   19 28.70   -21 50.0    5.197  5.818    47    9.0
    1996  3  8   19 33.73   -21 11.1    5.100  5.588    55    8.8
    1996  3 18   19 38.05   -20 30.6    5.002  5.343    64    8.6
    1996  3 28   19 41.49   -19 48.6    4.903  5.086    73    8.4
    

    3.17. ポン-ウィンネッケ彗星(7P)

    7P/Pons-Winnecke
      年 月 日      α         δ        r     Δ    Elong   m1
    1996  1 28   19 54.08   -24  6.4    1.294  2.241    11   13.4
    1996  2  7   20 32.75   -23 57.4    1.328  2.264    13   13.6
    1996  2 17   21  9.93   -23 17.8    1.371  2.293    16   13.9
    1996  2 27   21 45.22   -22 13.5    1.422  2.326    18   14.1
    1996  3  8   22 18.41   -20 51.2    1.480  2.362    21   14.4
    1996  3 18   22 49.45   -19 17.2    1.542  2.399    23   14.7
    1996  3 28   23 18.38   -17 37.3    1.609  2.435    26   15.0
    

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