Comet for Windows チュートリアル

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Updated on October 2, 2004

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    ヘール・ボップ彗星の光度解析    

o 光度式の計算

まずは、ヘール・ボップ彗星の光度グラフを見てみましょう。 Comet for Windows を起動して、メニューの「メニュー」−「光度グラフ」を選びます。 そして、メニューの「設定」−「天体の選択」を選び、「C/1995 O1 (Hale-Bopp)」を選びます。 すると、光度変化のグラフが描かれます。

メニューの「表示」−「フォーマット」を選ぶと、いろいろなパターンのグラフを描くことができます。 例えば、横軸を「日心距離の対数」、縦軸を「地心距離を補正した光度」とし、折り返して重ね合わせると、次のようなグラフになります。

この形式のグラフでは、一般的に、彗星の光度変化は直線的になります。

次に、このデータの解析を行ってみましょう。

メニューの「設定」−「計算」を選ぶと、「光度式の計算」ダイアログが開き、この光度変化を表す光度式を計算することができます。

ダイアログを開いた時には、「計算式」の欄に、すべての光度データから計算された光度式と、その残差が表示されています。 このサンプルデータでは、242個のデータから

m1 = -0.64 + 5 logΔ + 7.96 log r

という式が計算されました。

光度式の計算に利用するデータは、選別することができます。 光度式は、右側の「計算に考慮するデータ」の欄にあるデータだけを用いて計算されます。

さて、こうして計算した光度式は、どのような光度変化を表しているのか、グラフに描いて、確かめてみましょう。 「計算された光度式をグラフに描く」ボタンを押し、「OK」を押すと、計算された光度式が登録されます。 「光度式の計算」ダイアログを閉じると、グラフに、計算された光度式を示す曲線が描かれます。

計算された光度式は、実際の光度変化と良く合っていることが分かります。

ところで、ヘール・ボップ彗星は発見当初、-2等に達する大彗星として報じられました。 これは発見当初の光度から、log r の係数を10と仮定して求めた

m1 = -2.0 + 5 logΔ + 10 log r

という光度式から予報されたものです。

そこで、この式と、実際の光度変化との違いを見てみましょう。 メニューの「設定」−「光度式の登録」を選ぶと、「光度式の登録」ダイアログが開きます。 ここでは、さきほど計算した光度式が、1つだけ登録されています。

ここで「新規」ボタンを押し、

m1 = -2.0 + 5 logΔ + 10 log r

という光度式を入力します。 色は、緑色を選ぶことにします。

「OK」を押すと、グラフに新たに緑色の曲線が描かれます。 これが当初の予報による光度変化です。

途中までは実際の光度変化とほぼ一致していましたが、途中から実際の彗星の明るさの方がわずかに暗くなっています。 その境目は、1996年の9月頃になっています。 グラフの横軸をΔTにすると、近日点通過より250日ほど前の頃が境になっているようです。

このように、彗星はその光度変化が1つの式で表されないことも多くあります。 そこで、Comet for Windows では、 区間を区切って複数の光度式を登録することができます。

ヘール・ボップ彗星の光度変化は、

近日点通過より250日前まで: m1 = -2.0 + 5 logΔ + 10 log r

近日点通過より250日前から: m1 = -0.64 + 5 logΔ + 7.96 log r

という、2つの光度式で表されることが分かりました。 そこで、この結果を、データベースに保存しておくことにしましょう。

まず、メニューの「表示」−「設定」を選び、「登録した式」のチェックボックスを外します。

次に、メニューの「データベース」−「光度式」を選び、「新規」を押して、この2つの光度式を登録します。

すると、2つの光度式がつながった、本来の光度変化を表す曲線が描かれます。

o もし、近日点通過がずれていたら・・・

ここで、ヘール・ボップ彗星で少し遊んでみましょう。

メニューの「データベース」−「天体」を選んで、リストからヘール・ボップ彗星を選択して、「修正」ボタンを押します。 すると軌道要素の編集ダイアログが開きます。

ここで、近日通過日を1996年12月1日にしてみて下さい。

また、メニューから「表示」−「グラフの範囲設定」を選んで、光度の範囲を-5.0等〜11.5等に設定して下さい。

すると、光度グラフが、次のように変わります。

1997年1月には、最大で-5等という、ものすごい明るさになることが分かります。 この彗星はとてつもない可能性を秘めていたのでした。

さて、次に進む前に、近日点通過日を元に戻しておいて下さい。

o 自分の観測を評価する

ヘール・ボップ彗星は大変明るかったので、貴方も観測しているかもしれません。 そこで、当時のメモを取り出して、貴方の観測結果をデータベースに登録してみましょう。

メモに残っていた貴方の観測は次の通りであったとしましょう。

1997年 1月20日 3.2等
30日 2.5等
2月10日 1.4等
15日 1.0等
22日 0.8等
28日 0.5等
3月10日-0.5等
12日-0.8等
14日-0.5等
22日-1.2等
4月 1日-1.5等

メニューの「データベース」−「光度」を選ぶと、データベースに登録されている光度データの一覧が表示されます。

ここで、「新規」ボタンを押して、1つずつデータを追加していきます。

登録が終わってから「データベース」ダイアログを閉じると、光度グラフに、追加したデータが描かれます。

さて、貴方の観測だけに着目するために、貴方の観測データを別のグループに分けます。

メニューの「データベース」−「光度」を選び、「データベース」ダイアログを開きます。 ここで「設定」ボタンを押すと、「グループ設定」ダイアログが開きます。

最初は、「*光度」というグループだけになっています。

ここで、「新規」ボタンを押し、新しいグループを追加します。 グループ名は「自分の観測」とします。

新しいグループを作成したら、「グループ設定」ダイアログに戻ります。 「自分の観測」グループを選ぶと、すべてのデータが左側の「グループに所属しないデータ」に表示されています。 この中から、貴方の観測データだけを、右側の「グループに所属するデータ」に移動して、「OK」を押します。

さて、グループの設定は終わりました。 そこで、貴方の観測データだけの光度グラフを描いてみることにしましょう。 メニューの「表示」−「設定」を選び、「表示設定」ダイアログを開きます。 ここで「グループを限定」をチェックし、「自分の観測」グループを選びます。 「OK」を押すと、貴方の観測データだけが、光度グラフに描かれます。

ここで、メニューから「表示」−「グラフの範囲設定」を選んで、「日付の範囲設定」と「光度の範囲設定」を、どちらもチェックしておいて下さい。

「表示設定」ダイアログで、「グループに所属しないデータも表示」をチェックすると、すべてのデータが淡い色で表示され、貴方の観測だけが黒く表示されます。

次に、貴方の観測データから光度式を求めてみましょう。 メニューの「設定」−「計算」を選び、「光度式の計算」ダイアログを開きます。 最初はすべての観測データが選択されていますので、いったんすべてを左側の「計算に考慮しないデータ」に移動します。 ここで、「自分の観測」グループを選んでから、「グループのデータをすべて選択」ボタンを押すと、貴方の観測データだけが、右側の「計算に考慮するデータ」欄に表示され、貴方の観測データだけを使って求めた光度式が、「計算式」の欄に表示されます。 この例では、

m1 = -1.23 + 5 logΔ + 15.03 log r

となっています。

この結果から、貴方の観測は、彗星が暗い時は暗めに、明るい時は明るめに測定していることが分かります。

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