2012年6月2〜3日 第42回彗星会議 in 大分 日出町
吉田 誠一 / Seiichi Yoshida
comet@aerith.net
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近日点距離は 1.55 A.U. ですが、絶対光度が 3.2 等と大型の彗星で、長期に渡って明るく見えました。
光度変化も安定していました。光度式も、典型的な彗星の光度式となりました。
m1 = 3.2 + 5 logΔ + 10.5 log r
41年ぶりに現れた、クロイツ群の大彗星です。
発見時の絶対光度は H10 = 15等 でした。 ボートルの式では、7等より暗い彗星は生き残れませんので、消滅すると思われましたが、予想に反して、大彗星になりました。
15 log r という、極めて急激なペースで増光し続けました。
m1 = 15.5 + 5 logΔ + 15.0 log r
12月16日の近日点の後は、絶対光度が4.5等も明るくなりました。
m1 = 11.0 + 5 logΔ + 15.0 log r
近日点前と同じく、15 log r のペースで暗くなっていきました。 但し、12月20日には核が崩壊しており、この光度式は、本体の活動度ではなく、ダストが拡散していく様子を表したものです。
4〜6等になると期待されていましたが、8月15日頃を境に、崩壊してしまいました。 この時点で、太陽に 0.8 A.U. まで接近していました。
崩壊するまでは、予想を上回る速いペースで増光していました。
m1 = 8.5 + 5 logΔ + 12.5 log r
近日点を過ぎた後も、10月中は、極めて淡いダストの残光が捉えられました。
わずか2週間しか観測されませんでした。
Terry Lovejoy氏が撮影に成功していた、もう1つのクロイツ群の彗星です。 C/2011 W3 ( Lovejoy ) とほぼ同じ明るさでしたが、こちらは近日点で消滅しました。
Lovejoy氏が撮影した3月10日には、太陽から 0.30 A.U. で、9等でした。 絶対光度は H10 = 13等です。
なお、C/2011 W3 ( Lovejoy ) は、太陽から 0.30 A.U. になったのは12月11日で、7等でした。 その時点での絶対光度は、同じく H10 = 13等です。
過去3回の出現では、概ね同じ光度変化を見せています。
急激に増光し、突然に眼視で明るく見えるようになりました。 177P/Barnard 2 と似ています。
しかし、近日点の後は減光が遅く、長いこと明るさを保ちました。
近日点の前は急激に増光し、近日点の後はやや緩やかに減光していく傾向があります。
1995年以降の、4回の出現の光度変化をプロットしました。
(近日点前) m1 = 14.2 + 5 logΔ + 23.0 log r
(近日点後) m1 = 12.0 + 5 logΔ + 15.0 log r
前回2004年と比べるとやや明るく、前々回1997年の光度変化と、良く一致していました。
2010年8月末と、2012年1月初めに、バーストを起こしましたが、全体の光度変化には、大きな影響はありませんでした。
ただ、近日点距離が 1.98 A.U. と遠方の彗星ですが、近日点の近くで増光し、予想よりも少し明るくなりました。
離心率が 0.974 の長周期彗星らしく、やや急激な光度変化でした。
m1 = 9.0 + 5 logΔ + 20.0 log r
1995年のバースト以来、絶対光度が暗くなり続けていましたが、今回は、前回と同じ明るさでした。
近日点の直前になって増光が鈍ったことまで含めて、前回2006年と、まったく同じ光度変化を見せました。
検出時の明るさからは、H10 = 12.5等 となり、最大で16等止まりの計算になりますが、急増光しました。
離心率が0.285と、円軌道に近いにもかかわらず、近日点と遠日点での明るさの差がきわめて大きい彗星です。
2001年7月に木星に接近し、近日点距離が 3.8 → 2.9 A.U. と小さくなって、2004年に発見されました。 2007年末に急減光しましたが、2011年に急増光し、2004年と同じ明るさになりました。
※緑色の光度曲線は、H10 = 7.0等 の光度変化です。
2003年の発見当時から、周期彗星の可能性が指摘されていた彗星です。 2007年末の回帰は見逃されましたが、再発見されました。
近日点距離が 0.57 A.U. と、太陽に近づく短周期彗星にはよくあるように、急激な増減光をします。 ただ、絶対光度が極端に暗いです。
m1 = 20.5 + 5 logΔ + 25.0 log r
いくつかの彗星は、一部の眼視観測者から、たいへん明るく見えるとの報告がありました。 但し、CCD画像では、明るく見えそうな兆候はありませんでした。
この彗星は、近日点の前に崩壊・消滅したと思われます。
佐藤英貴氏が、小規模なバーストを捉えています。
光度式は、近日点の30日後に最大光度となり、かつ、log r の係数が 7.5 と小さくなります。
メインベルト彗星です。 H = 17.5等が、本来の明るさのようです。
ちなみに、2012年に再観測された P/2008 R1 ( Garradd ) は、H = 20.0等という暗さでした。
近日点を通過した後は、通過前よりも4等も暗くなりました。
2006年のバースト以来、5年ぶりに再バーストを起こしました。
2011年4月にバーストを起こした後は、異常に長い間、明るさを保っています。
バーストの前の光度変化は、20 log r という急激なものでしたが、バーストの後は、急減光するどころか、以前よりも減光が緩やかになっています。
近日点を通過してから、240日も後に最大光度になりました。 日心距離が 2.8 A.U. の時より、3.7 A.U. まで遠ざかった時の方が明るかった、ということになります。
近日点の130日前には、18等の(おそらく)小惑星状でしたが、130日後には、14等の明るい彗星になりました。
近日点後の減光は 15 log r で、異常な値ではありません。 一時的なバーストではなく、C/2001 OG108 ( LONEOS ) のような、近日点の直前まで活動せず、ほとんど小惑星状のままで、近日点の前後で急激に増光・減光するタイプのようです。
近日点の前は、予報より3等以上も暗かったのですが、近日点の後は、予報どおりの明るさになりました。
1997年と2004年の、過去2回の出現でも、やはり、近日点を通過してから、かなり後の時期だけ、観測されています。
発見時も、今回も、近日点の半年後に最大光度になりました。
但し、発見時と今回とでは、増光のペースが大きく違いました。
(2002年) 50 log r
(2010年) 21 log r
近日点と、その1年後に、同じ明るさで観測されました。
1980年と2000年の出現の記録も見つかっていますが、それらもやはり、近日点と、その1年後の観測ですので、近日点を通過した後に増光する傾向があるようです。
2013年の春に-1等の大彗星になると期待されている彗星です。
3月半ばまで、予想より速いペースで増光していました。
m1 = -1.8 + 5 logΔ + 18.0 log r
※現在の絶対光度は、H10 = 4.0等 です。