162P/2004 TU12の一直線の尾

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Updated on November 18, 2004

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2004年10月10日に発見された小惑星2004 TU12は、11月12日にJuan Lacruzによっ て尾が検出され、新彗星 162P/2004 TU12 ( Siding Spring ) となりました。

Juan Lacruzが撮影した画像

コマの無いのに、尾だけが長く、一直線に伸びています。

一直線の尾は、p.a.= 69°の方向に伸びています。

この一直線の尾は、一見すると彗星軌道に沿って伸びたダストトレイルのような 気もしたのですが、この時、P/2004 TU12 に関しては、

イオンテールの方向p.a. = 69°
ダストテールの方向p.a. = 69°
ダストトレイルの方向p.a. = 30°

となっていますので、ダストトレイルではないことになります。

11月12日の P/2004 TU12 の尾とダストトレイルの位置角
StellaNavigatorで作成(上が北)
直線は彗星軌道(ダストトレイルの位置角)を表す。

なお、この時、地球から彗星への視線方向と、彗星軌道面との為す角は、 18°もあります。よって、もし尾が彗星軌道面内に広がっていれば、幅を持っ て見えるはずです。実際には一直線に見えていますので、空間的にも本当に一 直線の可能性が高いと思います。

なお、コマの無い核から、一直線の尾が伸びて見え、小惑星から彗星に転じた 天体として、C/2002 CE10 がありました。C/2002 CE10 については、IAUC 8193 によれば、2003年8月21日と22日の観測で、尾の方向は p.a. = 212°と なっていました。

調べてみると、ちょうどこの頃は、

  • 彗星の尾と、ダストトレイルの方向が、ほぼ一致するため、両者の区別が付かない。
  • 地球が彗星の軌道面を通過しており、尾が彗星の軌道面内に広がっていても、見た目上は一直線に見えてしまう。

という時期でした。

ですが、今回の P/2004 TU12 ではタイミングが良く、そのような曖昧さが生 じない位置関係でした。

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